ユウリside×人魚
ササメ「そういえば、あの唄、どうしてユウリは大丈夫だったの?」
うん。それは、異性を惹き付けるためのものだから、だよね?
ユウリ「うん。基本、同性には唄の魅了が使えないって書いてあったよ。他にも色々できるみたいだけど。」
ササメ「そうなんだ。」
ユウリ「それより、俺さ、結構怒ってるんだけどな?」
ニッコリが怖いですよ?ユウリさん。
ササメ「?」
ユウリ「わからない?前回はさ、俺が風邪だったし、仕方なかったと思うよ?だけど、今回はさ。黙って置いていったのは、ど・う・し・て・かなぁ?」
ニッコリでいいのかな?この顔。笑ってるのに、笑ってないっていうか、目が、ヤバイっていうか…。
ササメ「だっ、だっ、だって、唄が気になっただけで、こんな事になるなんて思ってなかったんだもぉぉぉん。エッグ、ヒック。」
あ、脚が震えて動けなかったんだ。うん。今のユウリから逃れるのは無理かなぁ?
ユウリ「大丈夫、次から気をつけてくれたらいいから、ね?」
ササメ「ご、ご、ごべんなざい。エッエッグ。ッヒク。」
あ、ユウリがササメを慰めようと手を伸ばしたら、ササメにびくつかれた。
あッ、ユウリが落ち込んだ。
ユウリ「…ササメに、怖がられた…ブツブツ…。」
おーい!戻ってこーい!
夜、胸騒ぎがして飛び起きる。テントの中にはササメがいない。感知を発動すると、弱々しいササメちゃんの反応と魔物。慌てて飛び出し、海岸に向かう。
そこで、目に入った光景に、カッとなった。一気に加速し至近距離から、炎弾を飛ばし、蹴り込む。
相手は、響く不思議な声で炎弾を消し、俺の蹴り込む足を掴むと、岩に投げつけた。
ユウリ「あがっ!…」
さっきの変な声で頭が揺らされたせいで、動きが止まり、防御が遅れた。自分の勢いを利用されたのもあったが、細腕の癖にやたら力が強かった。
「これから、いいところなんだよねぇ~?邪魔しないでくれる?…フフフッ…こんなに魔力があって、しかも処女、好きな相手もいる。こんなに美味しい獲物って少ないんだよねぇ。」
ササメにベタベタ触んじゃねえ!!
悔しさで歯をギリッと鳴らし、頭がグラグラしながらも、立ち上がる。
ユウリ「そいつは、アンタには渡せない。俺の獲物だからな。」
「ハハッ、おかしい事を言う人だ。アンタは、雪女にとっての獲物だろう?だって雪女と人魚は同じような生態の魔物なんだから。」
さっきの攻撃は、怒りで単調過ぎた。ササメは、完全に気を失っている。外套が脱がされ、服も少しはだけて、肌が見えていた。周りに、涙晶石が散らばっていて、月の明かりと、魔力で微かに光っている。この光景を見て、冷静でいられなかった。
ユウリ「うるせぇよ!!ササメはアンタと全然違う!ササメを泣かせ、なおかつ、手を出そうとして、無事で済むと思うなよ!」
「クフフッ、アハハハッ、さっき、不意打ちしといてやられた相手のセリフじゃないなぁ?それに、海のフィールドで僕に叶うとでも?…ああ、でも、君も結構、魔力持ってるなぁ?」
相手はニタァと笑う。俺の背筋にサブいものが走る。
「後で、君も気持ち良く逝かせてあげようか?クスッ」
ユウリ「遠慮したいね!人魚って女のイメージだったんだけどなぁ?」
相手はその発言を聴いて笑う。
「そりゃ、そうでしょ。だって寄ってくるのは船乗りのムサイオッサンばかり。まだ若い子ならともかく。僕も含めて、男の人魚は、遠慮したいに決まってるだろ?」
相手は、首を横に振りながら両手をあげる。そして、続けて
「まぁ、この辺、船着き場ないし、魔魚を漁ってたんだけど、まさか、こんなに可愛いのが引っ掛かるなんて、今日はついてたよ。」
そう言って、ササメの首すじに手を添え、下に滑べらしていく。
ユウリ「ササメに何をした?ササメが、そんなにアッサリやられるはず無いんだが…?」
剣を構え人魚の後ろから 下から上に払い切る。が、人魚はあっさりかわす。とりあえず、人魚をササメから離れさせれた。
「よっと、クフフ…ああ、可笑しい。僕が何もしなくても、海に入った時点でかなり、弱ってたからねぇ。雪女が海に弱いのは、人間は知らなかったっけ?」
相手は笑い転げた後で、首を傾げる。
とりあえず、弱ってたのは海のせいなのか。
そんなの、魔物の書物には載ってなかったのに…。
ユウリ「じゃあ、まだ、手を出してないんだな?」
人魚は意味深な笑顔で答える。
「うん?まぁ、まだ味見の途中だったからね。」
イラッとするが、相手の思う壺だ。
ササメに熱遮断の結界を何重にも、丁寧に重ねがけする。
「さぁ、何をするの?」
ユウリ「ハハッ、さて、どうすると思う?」
ササメの声に聴こえてくる。相手が、話を長引かせて、何かしてきているのは明らかだった。余計に苛立った。だけど、準備をしているのはこちらも同じだ。俺は魔力を思いっきり練り上げていく。ササメの姿に見せてくる人魚。
「フフッ、アナタはこの姿の僕に攻撃できる?」
違和感だらけなのに、ササメだと認識させられている。この腹だたしさ。
ユウリ「お前の変装如きで、惑わさせられる程、俺の怒りは優しくねぇよ。」
表面上はかなり冷静になっていくのに、内面は感情が荒れ狂い、それが魔力を膨れ上がらせながらも緻密に魔力が配置されていく。相手が油断しているうちに、一気にいくつもりだ。骨さえ残さず、殺してやる。
「そんなに、魔力を練って、後、魔力残らないんじゃない?」
相手の笑顔に余裕がなくなる。だがもう、遅い。
ユウリ「それは、お前が心配するような事でもないだろう?」
ニッコリと相手に向けて笑う。相手が逃げようとする。逃がさねぇよ。
ユウリ「煉獄の檻その罪人を捉え永遠に焼き尽くせ!ダウンバースト」
一気に詠唱しきる。
最上級火炎系魔法をかなりの魔力を注ぎ込み、なおかつ、詠唱付きで放ったのは、自分ができる最大限の威力をだすためだった。
太い火柱が何本も空と地を繋ぎ留め、そのあたりの海が干上がり、火柱同士が近づき捩れ、空から縮み地上に吸い込まれ、あたりを爆風で包み込む。自分でさえ、あまりの威力に吹き飛ばされた。もちろん、人魚など、跡形も残らなかったどころか、地形も抉れ、ジュォォォォオオ。と音をさせながら海がゆっくり戻ってきた。かなりの気泡と湯気をあげながら。魔魚も海にボコボコ煮込まれている。
ユウリは頭を抑えながら、慌ててササメを拾いにいき、海が戻ってくる前に回収し、洞窟があったらへんを、必死で荷物を引っ張り出した。洞窟は壊れていたが、張っていた結界のおかげで、テントと馬は、かろうじて無事だった。結界は壊れ、荷物は埃まみれ、馬は半狂乱だったが。
ユウリ「やべぇ…、流石に、この威力はやばい。下手したら、船沈んでるぞ。近くに航行してなきゃいいけど。後で、近くの町の衛兵か、冒険者が調べに来る。」
冷や汗を流し、焦りながらも、ササメを抱えて、この場所を、馬を宥めながら移動した。
うーん、環境破壊?これ、大丈夫?
ユウリ「…大丈夫じゃねぇよ…だから逃げんじゃねぇか。」
………。
クルス「やっちまったなあ!!」
古いし。ネタが。それこそ、やっちまったなあ、だよ。
クルス「な、ネタに古いも、新しいもねぇし!おもしろけりゃいいんだよ!しかも、解説ものってんじゃねーか。まあ、シャリに乗せるネタは新鮮に限るがな!」
ユウリ「…もう、クルスさんはシャリだけ食ってれば?」
クルス「なあ、解説。ユウリが冷たい件について。」
まぁ、あんな事したあとじゃ、しかたなくねぇ?
クルス「…まぁ、そうか?まあ、俺様なら気にしねぇがな!」
ジョエル「アンタは、ちょとは、気にしなあ!!」
クルス「フンゲッ…姐さ、ん、」ガクッ
あ、クルスさんが壁にめり込んだ。…た、た、退散ー!!!