ササメside
えっと、ユウリとササメが、海につく前の話?時間的に戻ってんじゃん。
ユウリ「なんか、どうして疲れてたのかとか書いた方がいいかなぁ?なんて思ったらしいよ。」
ふーん?そうなんだ。…解説、ユウリがする?
ユウリ「ん?なんかめんどくさそう。」
ひどい!断る理由が酷すぎるぅぅぅう!!
馬が死んだ。半年以上一緒に旅してきた。原因は…私が貰ってきた食べ物だった。
私が、細い路地で怪我人の治療をしていた時、幼い少女が、お願いをしてきた。
「お願い!お母さんを助けて!」
必死で病気の母親を治すように頼み込む少女。でも、私は病気は治せない。そう伝えたけれど、それでも来て欲しいって。私は少女について行って、その母親を看た。とりあえず、病気による、身体に溜まった毒素を外に出し、魔力を補充する事しか出来なかった。それでも、その少女は、すごく感謝してくれていて、申し訳なかった。
去る時は、後ろ髪が引かれる思いで、その場を立ち去ろうとした。
「待って!これ、貰ったの。お姉ちゃん食べて。」
少女がかけてきて、嬉しそうに笑顔で手渡された。さっき手に入れたのだろう。その日暮らしで、食べ物に困っているだろうに。それでも、感謝の印に貰って欲しいって。
断ろうとした。だって、私は必要ないし、少女に必要なものだから。でも、そうしようとすると、少女は悲しそうな顔になったので、「ありがとう。」って貰う事にした。パアっと笑顔が咲いて「じゃあね!お姉ちゃん。」そう言って去って行った。
その時は、気づかなかった。
その幅の広い草の葉にくるまれた団子に、かなり強い毒が入っていたことに。
私は、襲ってきた相手を軽くかわせるようになったし、不意打ちも、もらいにくくなった。クルスさんのお陰だなって実感していた。そんな矢先のことだった。
なんで、団子を置いてきてしまったのだろう。持っていっていれば良かった。もしくは、自分が食べてしまっていれば、治療も出来た。
ユウリが冒険者ギルドで土地や魔物の勉強をしている間、私は、治癒・解毒の魔法や、薬草について学んでいたから、即死級の毒でも取り込んですぐなら、なんとかなっただろう。
でも、ユウリの方が帰って来てなくて心配で、荷物を馬の所に置いたまま、出てきてしまった。
ユウリの方も、襲ってきた相手を速くいなしたりして、ジョエルさんとの訓練の成果が現れていた。でも、殺さずに倒すようになってから、弱い人達と強い人達が入り交じって襲うようになった。弱いと殺さずに気絶させるのが、難しそうだった。何故なら強い人達と闘う最中に、弱い人達の対処をしなくてはいけないから。その加減が難しそうだった。弱い人達を気絶させようとすると、強い人達が邪魔してくる。そのせいで、時間がかかってしまっていた。
殺さないようにしてるのは、親切からではないことは確かだけど、それでも腹が立った。
こちらが殺さないのをいい事に、それを利用して相手は殺しに来ているのだから。私は、ユウリの姿に見えるようにして、相手を攪乱し、ユウリに加勢した。
そして、決着をつけて戻ってきたら、馬が死んでいた。あの草の葉っぱでくるまれた団子を食べていた。
ササメ「…ごめんなさい。…」
馬に言ったのか、ユウリに言ったのか、自分でも分からなかった。
顔の見えない、悪意ある者が許せなかった。
もし、あの幼い少女や、病気の母親が食べていたら、と思うとゾッとした。相手は、あの子達が死んでも構わない、と思っていることは明らかだった。私やユウリが少しでも食べる可能性があれば、それを実行してしまえる。あんな幼い少女でさえ、利用した。その事実がやるせなかった。
自分も許せなかった。私は、持って帰ってどうするつもりだった?ユウリが食べてたら?もちろん、すぐに治療しただろうけど、苦しむ事には変わりない。自分の迂闊さ加減に嫌になる。
ユウリは、気にするなって言ってくれていた。でも、ユウリだって、あの馬に愛着も湧いていただろう。でも、明るくふるまって、また馬は買えばいい事だからって。そうして、新しい馬を買って、そろそろ、街もいいだろうって海を目指したのだった。
ユウリが海を目指したのは、以前、私が見たことないし、見てみたいなぁ、なんて話してたからかもしれない。ユウリは何時だって私に甘いから。
ササメ「そう!ユウリがすごく、私に甘すぎる件について!!」
甘やかしてくれるんならいいじゃん。
ササメ「だ、だって、すごい魔力入ってて美味しそうだなぁ、なんて魔晶石見てたの。そしたら、高いのに買おうか?なんて言ってくるの!」
ん?何が問題?
ササメ「え!き、金銭感覚麻痺してない?」
そんだけ、好きだつーことじゃねぇ?
ササメ「食べ物も、どんなのかわからないから、見てたの。だって、黒いスイーツって何?って感じだったの。食べても、食べなくても問題ないのよ?」
買ってくれたんでしょ?良かったじゃん。美味しかった?
ササメ「うん。ツルンってして美味しかったけど、…なんか、散財してて大丈夫なのかな?昔は、カキ氷でさえ、セールの時だけだったのに。」
えっと、ササメちゃんさぁ、今のユウリの稼ぎ、知ってる?
ササメ「む、昔より高額の依頼受けれるようになったから、ホテル泊まりしても問題ないくらいって言ってた。ただ、何かあって壊すと大変だから、基本安宿にしてるって。そこなら、弁償できるからって。」
つまりは、知らない、と。
ササメ「冒険者ギルドに出入りするわけにはいかないでしょ。前に、ディアスさんに注意されたし…」
ああ…ちなみに、開拓村でSランク用の依頼がでてたりは…しなかったね。うん。
薬とか必要最低限のものは強請って買ってもらった方がいいと思うよ。…うん。
ササメ「必要最低限のものは、買いたいけど、薬とか、本当に高いんだよ?破産するよ?」
あ〜、昔の貧乏なときの、金銭感覚が抜けきらないあたり…。お!い!ユウリ!!
ユウリ「え?ササメちゃんには、好きなもの何でも買ってあげるよ?遠慮しないで言って?ってちゃんと言ってるよ?稼ぎも昔と違うからって。」
あ〜、言い方なのかな?それとも、ササメちゃんとやらが貧乏性?
ユウリ「まぁ、その、ドギマギしてるとこが可愛いから、そのまま放っておいてるけどね。」
あ、ユウリが確信犯っぽい。甘甘に言ってわざと勘違い誘発してるだろ。
ユウリ「ん?俺は嘘は言ってないよ?」
このエセ紳士め!!