ジョエルside
濃厚な2日間でした。また、サラッといきたいな〜。
ユウリ「なんか、色々、起こったし、ササメちゃんともっとゆっくり寛ぎたいな~。」
けっ、もう寛いでんじゃねぇか。
ユウリ「えー、なんかももっと、デートとか、デートとか。」
クルス「常に2人で旅してんだから、してるようなもんじゃねぇの?」
ユウリ「もっと、こう、幸せいっぱいな感じのがいいな~。危機とか、なくて。」
クルス「マンネリ化して、飽きられんじゃねーの?ササメに。」
ユウリ「それはない!」
クルス「えらい自信だな…。」
ユウリ「愛されてるからね。」
クルス「……。」
どうどう、クルスさん、今、イラッと来たの判るけど、ストップ。
クルス「…なあ、解説。俺が、今、コイツ、殺っても、本編、関係ねぇからさ、良くね?」
ヒィ!クルスさん、笑顔がヤバイ。マジ切れしてる~。(泣)
ユウリ達がアジトに来て、3日目。
ユウリは風邪を治して、ササメと一緒に、鍛えて欲しい、とアタシに申し出た。ユウリの剣技については、アタシにゃ使えないから、教えられない。ササメの魔力制御についても、アタシより上手かもしれないし、教えられるところはほとんどない。なので、ササメにはクルスを使って、実践訓練を、ユウリにゃアタシが直接動き方のコツを叩きこんだ。ユウリにゃ、ササメの寿命は訊けたのか尋ねてみると、笑って「よく考えたら、知る必要はないです。だって、ずっと傍にいて守りますから。」そう言った。何かが吹っ切れたような、決意の篭った言葉だった。アタシはニッと笑って「そうかい。」って、返しておいた。
ユウリの風飛びは、元々、脚に、かなりの負担がか
かるものだった。なので足元の小さな爆発の間に、更に小さな爆発を挟むようにさせた。これは、隊長が速く地面を動く時に良くしていた工夫だった。それにより、ユウリは、より速く、より鋭く動けるようになり、脚の負担も減った。アタシの雷渡りのように、ドンドン加速していくのではなく、いきなりトップスピードから来るので、慣れないと危ないが。
最初は、壁に激突し、ササメに治療されていた。
いやいや、普通初めて試すとき、広いとこでするだろ。何で壁の方むいて試した…。
クルスは、ササメと手合わせするように命令した直後、「いやいや、教えんなら、ユウリの方がいい。」なんてバカな事抜かしやがるから、「攻撃できないあんたに、今のユウリの相手がつとまるかい!」って怒って、文字通り雷を落とした。んで、ササメと散々、組手をさせ、ササメがフェイントに慣れるように、経験を積ませた。元々の素質が高く、動きの予測を正確にし始め、避ける事に余裕が出始めると、魔法も高度に併用しながら、逆にクルスを驚かせていた。
たった3日の訓練で、だ。
アタシは気になっていたことを、この際尋ねた。
ジョエル「そういや、最初に闘った時、ササメがユウリに渡した涙晶石にゃあ、いったい、なんの魔法が入ってたんだい?」
ササメ「ああ、あれは生命力吸収を入れてたんです。」
ジョエル「はあ?…いや、冗談じゃなく?」
ササメは、頷いてから、
もし、自分とクルスとの決着がつき、有利になったところで、アタシがユウリに近づいていたら、アタシに向かって、この魔法をユウリにかけさせるつもりだったのだという。そうすれば、クルスがアタシを抱えて、マナドレインの効果範囲から離れ、その間にユウリが逃げれる時間が稼げるはずだ、とにらんでいたそうだ。
まあ、その時はアタシが雷属性なのを知らなかったみたいだし、実際そうされていれば、ユウリに鳴雷かけて、一気に意識を焼切っただろう。ユウリの自爆や、ササメのタガの外れた魔法が放たれる可能性を抱えたまま。
しかし、ササメの涙晶石は、本当に規格外だ。上級、それも、属性外の種族特性魔法まで、加工もせずに入るなんて。これが加工されたら、かなり恐ろしい兵器になるだろね。魔力を持たない、一般人でさえ、これを持ってれば、使い捨てで中級魔法が15発は使え、上級魔法であれば、2発放てるだろう。普通の上級魔法一発なら、使い捨てせずに繰り返し使えるんじゃなかろうか。上級なら思念通達の魔法を入れれば、遠くても連絡がつくし、使い捨てじゃなければ、遠慮なく使える。信頼のおける部下達数人に、持たせよう。涙晶石の利用法が思い付いたのでニヤつく。なんだ、使えるじゃないか。
加工はトールに頼まざるおえないのだが…。
ユウリには、ディアスの事を尋ねた。何しろ、闇商人に聴くと、揶揄ってくるから、ヤなんだよね。
ユウリなら、揶揄ったりせずに、坦々と答えてくれる。そして、ディアスの事を聴き終えると、お礼を言った。
アイツ成長したね。見ず知らずの、窮地に立っている冒険者の世話を焼くなんて。前は助けられる側だったってのに。んで、結果を見ずに立ち去る、か。まるで、結果が出るのを怯えているよう。
ジョエル「アイツにとって、アタシ等の事がトラウマになってなきゃいいんだけどね。」
少なくとも、貴族を嫌ってるのは、アタシ等の事が影響してそうだね。
そんなこんなで、あっと言う間に一週間が過ぎ、あいつ等は出ていった。「お世話になりました。ありがとうございます。」そう言って。
ディアス「俺、あなた達に鍛えられてから、強さは、そこまで変わらんように思うが。」
ジョエル「そっちの成長じゃないよ!精神的に、さ。昔なら、言葉はかけても、そこまで肩入れしなかったろうからね。」
ディアス「ああ、自分らがそこまで、手伝えるような立場でもねぇのに、でしゃばんのもね…。」
ジョエル「ふーん、偉くなったってかい?」ニヤ
ディアス「いや、そ、そういうわけじゃ…って、もう、勘弁してくださいよ。揶揄うのは。」
ディアスさんはジョエルさんには頭上がんないんすね…。