ササメside
クルス「え、なんかもっと怒鳴り散らすんじゃねぇの?」
ん?怒鳴りあいのケンカ?想像してた?
クルス「なんか、普通そうじゃねえ?納得いかねぇことあったらさ。」
だから、避難してたんだよね〜。なのに何で覗きに来てんの?
クルス「うっ…、べ別に気になってねぇし!」
気になったんですね(笑)
部屋で、少し休んでいた。
ユウリが寝転んでた寝床にぽすっと寝転ぶ。微妙にまだ暖かさが残っていた。そこにじっとしてると身体の芯の熱が治まってくる。
ササメ「あ〜あ、負けちゃったな。……」
ほんとに、ジョエルさんがいい人で良かったと思う。
あの手合わせの会場にライトつけてた。ジョエルさんが雷属性なら、あの時、魔力を練る暇さえ与えずに、私とユウリを気絶させることも出来ただろう。
私には、もう、奴隷印を刻むことは出来ない。例えユウリが、使い魔契約を解除しても。もう、魔核が耐えられない。なら、使い魔契約をさせたまま、ユウリを縛る事で、私を縛るだろう。あそこに、ユウリが入れられるのは嫌だった。私が死ねば、ユウリが釈放されるのか、といえば、人をそういう風に扱うことは法で禁じられているので、証拠隠滅の為に恐らくは……。
ササメ「ああ〜、もう暗い!そもそも、ジョエルさんは捕まえなかったし、そうならなかったんだから。切り替えないと。」
とりあえず、強くならなきゃ。
ユウリと一緒にできるだけ永く、楽しく過ごしたいのだ。
ササメ「その為には、この現象とも、上手く付き合ってかないとね。あれぐらいで、乱れるなんてまだまだ。」
ゴロンと仰向けになり、手を上にあげ、グッパグッパしてると、笑い声。
ササメ「あっ、ユウリ、独り言聴かれ…って言うか、ドアの前で留まって、盗み聞きとか、趣味悪いよ。もぅ。」
ベッドから身体を起こして、脚を降ろす。
ユウリ「ごめん、ごめん。」
ユウリが部屋に入って、私の横のベッドに腰掛ける。
ユウリ「ところで、ササメ?俺に隠し事ない?」
私の頬を片手で触りながら訊く。笑っているのに、全然目が笑っていない。……ユウリ、怒ってる。でも、ユウリに隠し事なんてしてない筈だけど……?
ササメ「どうしたの?ユウリに隠し事なんて、一緒に過ごしてるのに出来ないよ?」
本気で首を傾げた。
ユウリ「じゃあ、クルスさんやジョエルさんが知ってて、俺が知らないササメの情報は?本当にない?」
あっ、寿命の事と、時々、身体の芯が熱くなることだろうか?不安になる。確かに、どちらも知られたくなくて隠してた。でも、ジョエルさんもとなると、何だろう?
ササメ「ユウリは、一体何を聞いたの?何を怒ってるの?」
ユウリは私の肩に手を置く。力が入っている。
ユウリ「何だと思う?他の人は、知ってて俺が知らないってどんな気持ちだと思う?」
グイとベッドに押さえつけられる。起き上がれない。まだ、顔は笑っているけど、ユウリの目には苛立ちや怒りの感情が渦巻いていた。
ササメ「く、クルスさんだけだったら、思い当たる事はある。けど、ジョエルさんもとなると、本気でわからない。」
そう言った時、ユウリの顔から笑顔が崩れて歪んでいく。
怖かった。ユウリが本気で怒ってる。真上から覗きこんでくるその目を見たとき、背筋がヒヤリとした。
ユウリ「へぇ。…クルスさんには教えたってこと?」
そう言い切った時の、ユウリは無表情だった。
ユウリの肩を握りこんでいる手に力が入って痛い。
こんなユウリ、はじめて見た。すごく、怖くて、震えてしまう。ユウリから目を逸らせなかった。
ササメ「お、教えたんじゃなくて、教えてもらったの。龍には魂の情報を読み取る力があるから。」
少し、ユウリの手の力が弱まった。ユウリの顔に表情が戻ってくる。
ユウリ「……ごめん。怯えさせて。…ちょっと頭冷やしてくる。」
いつの間にか、泣いていた私の頬を手で優しくなぞり、すっと立ち去ろうとした。ユウリの方が泣きそうな顔してた。
ササメ「待って!」
その手を慌てて、掴んで、引き止める。
ササメ「私が出てくから、ユウリはここで寝てて。熱あるのに、むちゃしないで!お願い。」
そう言って、ユウリをベッドに戻すと、部屋を後にした。
ササメ「ふえぇぇぇ……ユウリ、めっちゃ怖かったよぉ。えっぐ……えっぐ。」
よしよし。ってかユウリ、結局、尋ねたかった事、尋ねてないってゆうか、聞けてないっていうか。
ササメ「ってか、何でバレたの?クルスさんがミスった?」
クルス「俺のせいじゃねーよ!つーか、ゲロったとかならわかるけど、ミスったって何だよ!」
ササメ「不本意に口滑らした?」
ああ、クルスさんが告げ口はしないよねって話しね!
ササメ「うん!だから、ミスかなぁって!」
クルス「俺じゃねぇって!」
ササメ「ええっ、そうなの?!じゃあ、誰ぇぇぇ?もぅ!」
クルス「まあ、わかっても、どうしようもねぇだろ。」
ササメ「……。」
ササメさんが撃沈いたしました。チーン。