ユウリside
ジョエルさんから、一言あるそうで、
ジョエル「一応、女性だからとは言ったが、一言も可愛いからとは言ってない。」
そこはユウリ補正?
ササメ「それより、一応女性って、どういう事です?ジョエルさん……」
ジョエル「だって子供だろ。体型的に。」
ササメ「……。」
あ、撃沈した。泣くな、泣くな。よしよし。
ササメちゃんとクルスさんが戦う。心配だけど、ササメちゃん可愛いから、こんな男所帯で、襲われない為に必要なことだと言われれば、仕方なかった。ササメちゃんは俺に、ジョエルさんにちょっかいかけちゃダメだからね!って。俺、流石にこんな年増には興味無いけど……。そう思ってたら、どこからか、殺気がとんでくる。ジョエルさんも微妙に怖い。顔が。
ユウリ「ハァ…、まぁ、新人いじめもあるみたいですし、力を見せつけるのは必要なんでしょうが、ササメをなるべく傷つけないでくださいよ。」
ジョエル「まあ、大丈夫さ。互い実力あるし、いざとなりゃ、コイツが治療するさ。」
ジョエルさんは結界を張ってから、地面をトントンと叩き、そこに何者かが居る事に気づく。風邪引いてるとはいえ、ここまで、気づけなかったのはマズイな。
ユウリ「……俺も、まだまだ、だな……。」
ジョエル「確かに、そうだ。熱が下がったら、後で少しだけ揉んでやるよ。」
そうこう話しているあいだに、静かに手合わせは始まっている。
最初は軽く、近接戦闘で風飛びを使いゆっくり、そして徐々に速くなっていく。拳を掌で受け止め、そこからし上段蹴りを、その蹴りを掴まれていた拳を引っ込めながら頭を下げて避けその勢いのまま、変則かかと落としに。徐々に掴むのではなく払い除ける形に、受け流し、相手の力を利用し、二人が距離をとっている時間も少なくなっていく。魔法も徐々に入ってくる。
何人ぐらいが目で追えているだろうか。少なくとも、まだ数人のおっちゃんはしっかり見えているようだ。ササメちゃんは魔法の不意打ちなどは、魔力の流れを意識しているため、かかりにくい。だけど、魔法と物理、両方をを使った不意打ちには、弱いようだった。クルスさんは至近距離からの炎撃を前と後ろから、放ち、その前の炎から風刃が飛び出してくる。そこまでは魔法で対処していた。水と氷の魔法で相殺し、水蒸気が立ち込めたが風で払うと、風の刃が飛んできた方からクルスさんが出てくると思っていたササメちゃんは後ろからの回し蹴りで、反応が遅れる。後ろの炎から飛び出してきたのだ。ハラリとフードが外れ、金髪の緩やかなウェーブの髪が顕になる。
その瞬間、見えていた何人かのおっさん共、いや、一部、小人族が、うおおお!っていうすごい盛り上がりと、初期エルちゃんだ!エルちゃんが帰ってきた!なんだ、親戚だったか?などの声が上がる。
いつの間にか、地面にいた奴がエルちゃん親衛隊?を纏めていた。小麦色の肌で引き締まった身体、傷痕のある腕、切れ長の目で眼帯をしたオジサン。
普通にしてたら、ちょと将来的にはこんなおじさんになれたらと、憧れないでもないのに。
何だか非常に残念なものを見た気分になった。ジョエルさんは、頭を抱えている。「初期からの盗賊連中、覚えてろよ。つっても、お仕置きがご褒美になる連中だからな……。」ってブツブツ言っていた。
あ〜、ササメちゃん、ジョエルさんを参考に幻覚見せてるわけね。まぁ、今の姿も可愛いけど、本当の姿には及ばない。あっ!魔法制御が乱れた。珍しい、っていうかクルスさん来てる、あ〜!負けたな。ササメちゃんの方がいつの間にか、息が上がっていて、クルスさんの方は、まだ余裕があった。
まあ、檻に入ってたから、体力がないのは仕方ない。半年でだいぶ回復したんだけど。全力で動くと、ほんの三十分弱かぁ。
ササメちゃんはフードをかぶり直すと、先に部屋に戻っとくね。手加減された。弱いなぁ、私。って笑いながら言って、早足で去っていった。
ジョエルさんは、とりあえずの目標は達成してるし、問題ないだろって。
クルスさんは、魔力の精密操作の質も量も申し分ねぇのに、魔法の使い方がなっちゃいねえし、実力と噛み合わねぇな。ほとんど戦闘訓練してなかっただろ。フェイント交ぜられると対応出来ねえわ、動きはイメージについてってねぇわ。ったく。萎えるわ。期待はずれ。と終わったときササメちゃんに正直に告げて、さぁ、見せもんは終わったって、酒を飲みに男達に混ざリに行っていた。
クルスさんの言葉は、ササメちゃんの為にわざとキツく言っているのがわかったので、俺としたら、複雑だった。慰めに行ったら、ササメちゃんは怒るだろう。頑張ったな。凄かったよって言うのは簡単だけど出来ない。今回は、ただの手合わせだったけど。
それは、俺も同じだから。俺とササメにとって敗北は、お互いの生死に繋がる事だから。強くなければ、常に勝ち続けなければ、一緒に生きることができないのだから。
クルスさんは、かなり戦い慣れしている。俺が万全の状態で、戦っても、負ける。悔しいなあ。自然と拳に力がはいる。俺に危害を加えることが出来ないのに、いとも容易く拘束したのだから。そのクルスさんと契約しているジョエルさんが弱いはずがない。ササメの竜巻をジョエルさんは、一瞬にも満たないあの瞬間だけ雷蹴りを使って避けた。あれだけの芸当が出来るのだ。
ジョエルさんは、俺達を容易く気絶させて拘束する事も出来たはず。そうして売り渡されていたら、俺やササメは回復と拷問を繰り返し受けていただろう。ササメが捉えられていた闇商人の所には、エリクサーが何セットか置いてあったのだから。
だけど、ジョエルさんは、あんな説明をして煙に巻いて、そうしなかった。だからこそ、その親切心につけ込んだのだけど。今回はジョエルさんの情けで生きていられた。それだけ。
ジョエルさんはササメの去っていた方を見ながら、
ジョエル「……核が自然崩壊していってるのか……もう長くないねぇ。……ユウリ、あんた、生きてる間くらい、しっかり守ってやんなよ。先に死んじまうのはなしだからね。」
俺は考え事をしていたので、ジョエルさんの言った言葉の意味がよくわかってなかった。
ユウリ「ん?そうですね、俺も死にたくないですし、生きてる間ぐらいは…でも、先に死なないってのは自信無いですね……」
雪女は長寿命だから、奴隷してて、寿命は縮んだとしても自分より、長生きするんじゃないかな?
ジョエル「あんた、何言ってんだい?残り少ない余生くらい守って、生き抜いてやんな!」
ジョエルさんは俺の両肩を掴み、そう言った。
ユウリ「残り少ない余生?何を言って?」
訳がわからなかった。
ジョエル「クルス、ちょっとおいで!」
クルスさんは、へいへい、と言いながらこっちに来る。
ジョエル「ササメの寿命、あとどれくらいか、あんたなら正確にわかってんじゃないのかい?あと2、、3年ってとこフンゴンゴ」
慌ててジョエルさんの口を押さえるクルスさん。
クルス「!それ、ユウリが訊いたのか?」
ユウリ「どういう事です?ササメの寿命って?」
クルスさんは、慌てたようにジョエルさんを引っ張って防音結界を張った。俺は、知らないこと?ササメも?
トールゥド「L・O・V・E!エルちゃん!」
盗賊連中「ラブリー、ラブリー、エルちゃん!今ちょと搭経ちすぎて、残念だけど!」
盗賊連中1「いや~、昔は可愛かった。それでいて強くて、優しい。文句なしだったのによぉ~」
盗賊連中2「いやあ、昔のエルちゃん思い出しましたわ。もっと強かったけど。おじさん応援しちゃう。」
盗賊連中3「蹴られて痺れるのも快感!くぅ~!」
トールゥド「エルさんは今でも最高!!!」
盗賊連中「……いや、そらないわー……。」
トールゥド「なぬ!!この裏切り者どもめ!」