ジョエルside
ササメ「ええっ、何?こっち、結構真面目な話?」
クルス「っぽいな。お前のような無駄話してる暇はねぇんじゃねえ?お前、任せっぱなしで文句とか、よくいうよな!ハハッ」
クルスさんが、皮肉ってます。からかってますよあの顔!!
ササメ「うっ!ごめんなさーい!!ユウリー!!」
あっ、走っていっちゃた。クルスさん、つつき過ぎじゃねぇ?
クルス「良いんだよ。あれくらいで。俺疲れたもん。」
いや、ドヤ顔で言われても…。
ったく、クルスは!ちょっとは慮りが出来てもいいだろに。
クルスとササメが向こうで、結界を発動させて、こちらと遮断されたのを確認する。
ジョエル「さてと、アンタはどうするつもりだい?これから。」
このままだと、共倒れは見えている。
ユウリは結界の方から視線を外して、
ユウリ「ふぇ、…ああ、とりあえず、あの町に行くつもりです。転移陣のある街は、もう、どこも見張られてるので…。辺境あたりを…。」
いやいやいや、そう言う事訊いてんじゃないよ!!
本気でそれ言ってんの?
ユウリは、ぼーとしている。頭が回ってないかもね。
ジョエル「ほれ。それ、やるよ。解熱剤だ。今はどこも手に入りづらいからね。」
そう言ってユウリに投げ渡してやる。
ユウリ「ありがとうございます。」
ユウリは手を伸ばして、受け取り損ねた。…おいおい、本気で大丈夫?!しかも、拾ったあと、疑いもせずに飲んだ。普通、警戒しないかい?あんたら、絶対に長生きできないよ?
ユウリ「ぷふっ。言ってることが、嘘か、本当かぐらい、見分ける勘は、あるつもりですよ?これでもね。」
アタシの呆れた表情を見て、何を思ったか、わかったらしい。んで、少し噴出し笑いやがった。ったく。
ジョエル「…敵だった者からの物は、気をつけた方がいいけどね。…本人も知らずに利用される場合もあるんだから。」
ったく、敵だった者の前で、まだ狙われるかもしれないのに疑わずに、しかも、かなり状態が良くないところを、繕いもせずに見せてたら駄目だろうよ。ちょっと、呆れと不貞腐れ半々で言ってやる。
ユウリ「そういう風に言ってくれる時点で、もう、心配はしてないですよ。根はイイ人だって判りますから。言ったことは守るタイプなんでしょう?くくっ」
ユウリは、まだ笑いながら、そう言いきった後で、咳き込み、横を向く。
ジョエル「ったく。はぁ…。隠れ棲むとかさ、しないと休む間もなくて、殺られるよ。ましてや、ササメの涙晶石が凄い価値があるからね。依頼や、懸賞金目当ての奴だけじゃなく、寄ってくるよ。」
ユウリはきょとんとして、首を傾げながら、
ユウリ「でも、雪女はササメちゃんだけじゃないし?闇商人が躍起になってるから、少し狙われてる頻度が高い程度なんじゃ…?」
それに、Sランクにまであがれば、早々手を出す奴も少ないし、やってけるだろうって師匠も言ってたし…と小声でユウリは言った。
…師匠、ねぇ。…て、あの太刀筋でしょ。あいつ、やっぱ考え方浅いねぇ。マシになったかと思ってたんだけど。多分、高品質の涙晶石、ぐらいにしか考えてなかったね。おそらく。
ジョエル「何も、わかってないんだねぇ。」
アタシは語ってやる。
問題は、ササメの涙晶石の質が良すぎたことさ。ただの脱走奴隷にそこまで金はかけないよ。王族の装飾品の材料として求められてる事、そのこと自体が問題なんだ。本来、こんな地味目の物、実用品以上の価値がないよ。他にも、魔法付与出来る品で見た目がいいの有るしね。だから、王族の装飾品に使われることは、ほぼ無かったんだ。それが、こんだけ金だしても欲しいって思われる事自体が、異常事態なんだよ。恐らく、かなり高威力の魔法付与が可能なんだろうことが予想される。普通の雪女ならそこまで問題じゃなく、アンタでも十分守れたろうよ。だが、そうじゃなかった。その事をわかった上で、今後どうするのか訊いているのさ。高ランクの刺客に、かなりの回数狙われる。アンタのランクでも牽制出来ない程の価値があるんだから。ってキッチリ説明してやった。
ユウリは、苦笑しながら、
教えてくれて、ありがとうございます。ただ…隠れ住むのに、ツテがないですよ。人間との関係を全て断って、山奥に?しばらくは、出来ても、塩や野菜など要る物もあるし、無理でしょう。…レベル上げ…厳しいですけど、そっちの方が現実的かな?
どっちにしても、今の俺には現状維持しか出来ないかな…。ササメを手放す事も、俺には出来ないですから。でも、教えてくれて助かります。知らなかったですから。
ーそう言った。それからニッコリ笑って、
ユウリ「ツテといえば、親切ついでに、しばらく、匿って貰えるなら助かるんですけど?もちろん、タダとはいいませんから。」
だってさ。冗談半分本気半分の問いかけかい?ったく。敵だった奴をツテにするなんて聞いた事ないね!だけど…仕方ないねぇ。一肌脱ぐとするか。
ジョエル「ハッ、厄介事はゴメンだねって言いたいとこだけど、アンタらディアスの知り合いだろ?太刀筋そっくりだったからね。…少しなら、孫弟子の面倒くらい見てやるさ。タダとはいかないけどね。」
ユウリ「??ディアス師匠の知り合い?孫弟子?え?」
慌てているユウリを見て、優越感に浸る。さっき笑われたしね。
結界が消え、クルスが戻ってきているのを視界の端に捉え、
ジョエル「熱が下がったら出ていきなよ。こっちだって、危ない橋渡ってんだからさあ!クルス、行くよ!アンタらは、しばらく、此処に居な。後で、アジトに一緒に行くよ!」
そう言って、クルスを連れ、地中魔蜘蛛のいる方へ向かった。
ユウリ「ええ!どういう事?!」
孫弟子ですって!ジョエルさんが何歳なのか、気になってきましたよ、これ!!
ジョエル「ね、年齢はそんないっとらんわ!ただ、ディアス坊と、もう一人が、あんたよりちょい小さかった頃に少し、騎士団に入りたいって言ってた冒険者だったんだよ。それで、ちょいとね。」
やっぱり、歳いってますよね~?これ、か・く・じ・つ・ですよね~?
ジョエル「ん?なんだい?この前のしおき、また受けたいって?」
あっ、いえ!何も言ってませんよ!なんのことでしょう?ハッ、ハッハ、ハ、…逃げろーーーー!!!