ユウリside
冬、外のフィールドを回るより、断然ダンジョンに潜る人が増える。なぜなら、ダンジョンにもよるが、基本的に温度が一定で過ごしやすいから。しかもダンジョンに行くまでの道は雪が退けられていて、行きやすくなっている。周りも、お店が建っていて、暖かいスープ、煮物など、すぐに食べられる。
外のフィールドの依頼は移動中にもこなしている。しかし、せっかく、ダンジョンのある街に来たなら絶対にダンジョンの依頼の方がいい。なぜ、こんなに力説しているかというと…。
ササメ「ダンジョン以外も依頼あるよ。コレは?」
ササメちゃんは、やたらダンジョンの依頼ではなく、フィールドの依頼を勧めてくる。
ユウリ「いやいや、せっかく、この街に来たんだからこの街名物のダンジョンだよ!あったかい食べ物もあるし。何より、報酬もいいよ。」
フィールドは、正直寒い。雪が積もっているし。魔物も、巣に籠ってしまったりするから見つけにくい。
ササメ「あったかい食べ物が欲しいなら、ユウリが温めたら良いじゃん。ユウリ、何処でも火がつけられるんだから。」
頬をプクって膨らませているササメちゃん。可愛いけど。絆されないからね。
ササメちゃんは、やたら反対している。いや、最初にダンジョン潜った時は、むしろ、二つ返事で一緒に潜ったんだ。楽しそうって言って。でも、一緒に潜ってから意見が180度変わった。理由は食事が取れないから。ササメちゃんいわく、魔力の吸収速度がダンジョンの方が早くて、取り込めない。しかも、ダンジョン自体を吸収するのは、ユウリが駄目って言うし(いやいや、観光資源だからね?ダメに決まってるでしょ!)出てくるのは雑魚ばかり。階層主は、強いかもだけど、やっぱり、食事できない。罠に嵌りまくって、めんどくさい。あと、たまに、即死毒とかあるから、怖い。それに、この間、巨大な鉄球に追いかけられて、前から雑魚のゴブリンが来て、吸収を思わず使ったら、ゴブリンはもちろん、鉄球まで、それに留まらず壁も床も消えた。ダンジョンの一部分が死滅して、地面が崩落。加減を間違えたのもあるけど、まさかダンジョン自体が吸収できるなんて知らなかったし。冒険者の死人こそ出なかったが、生き埋めになった人もいた。なんとか、救出したり、自力で出てきたりで事なきをえたけど、犯人だってバレたらヤバいよ!!それに、魔力吸収禁止だと、この間みたいにピンチに陥ったときどーするの?って。それに、ダンジョンって魔植物みたいな感じの生き物だから、わざわざ腹の中に飛び込むのと同じ事だよ。どんなのか理解してなかったから、楽しめたけど、もう、わかったから楽しんで行けないよ!!
ユウリは食べようって気満々の生き物の胃の中に飛び込んで楽しいの?って。
ユウリ「ふ、深く考え過ぎだよ。いや、このあいだのやつは、バレたらヤバいけど、バレなかったし!もう街離れたし…。それに、見た目、生物じゃないから。」
目を泳がせながらも反論するんです!
この時期にフィールド行く方が嫌だ。ダンジョンあるのに。いや、ササメちゃんは雪女の性質で寒いの平気だけど、俺は違うからね?せっかく、寒くないところで出来るならその方がいいから!!美味しい食事も!!
ユウリ「魔物の素材、いいの落ちるから、換金率いいし。いいホテル泊まれるかも?!それに、俺の魔力、少し分けるからさ。」
ササメ「今だって、泊まろうと思えば泊まれるだけの金銭持ってるクセに!!そんなの騙されないし、そ、そんなんで…懐柔…されないもん。それに、3人以上推奨って書いてあるでしょ。人数足りないじゃん。」
その声に誰かが反応する。
「おや、ダンジョンに潜るんだったら、宝箱開けるのに、1人腕利きがいるよ。ここに。」
艶のある女性の声、聞き覚えが…。
ユウリ「あっ、お久しぶりです。以前はお世話になりました。」
相変わらず、際どいカッコをしているなって眺めていたら、何故かササメちゃんに抓られた。
「…ああ!なんだ坊やじゃないか。''閃剣''は元気かい?」
ユウリ「実は、あれから会ってなくて、噂では今、ノライトス地方に居るみたいなんですけど…。」
ササメ「この人は?」
何故か不機嫌なササメちゃんが、表面上にこやかに訊く。
「盗賊ギルド所属の冒険者でレシーラって者よ。よろしく、お嬢ちゃん?」
レシーラさんって名前だったんだ。前は、自己紹介さえしなかったからなぁ。そのカッコで、前に屈んじゃダメでしょ谷間が…ササメちゃんに挨拶してんだけどさって、痛ったー!!足踏んでるからね。ササメちゃん。しかも、何故か、ギロりと睨まれた。でも次の瞬間にはにこやかに笑って、
「ササメと申します。ユウリの恋人です!!よろしくお願いします。おば様。」
って恋人ってとこ強調して挨拶している。しかも、禁句を誤魔化しながら入れているっぽい。
って言うか、何か今日のササメちゃんさっきからヒドイんだけど、どーして!!
さあー、どうしてでしょうね?(笑)
ササメ「そんなの、ユウリが鼻の下伸ばしてるからだよ!!」
ユウリ「いやいや、そこまで見てないよ!だだ、相変わらず、スゴイ格好だなって思っただけで!」
で、実際はどーなの?男としては、さぁ?
ユウリ「そりゃ、興味ないっつったら嘘になるでしょ。いや、そりゃあ、少しは……って解説!!痛いってか冷たい!!」
ササメ「そりゃあ、つるペタより、そっちの方がいいわよね!!どうせ、胸無いのわかってるもん!!でも、そんな私の前で、ガン見しなくてもいいじゃない!!」
あの~さすがに、かわいそうじゃ?氷の彫像になってますよ?っヒッ!
ササメ「なによ!私はかわいそうじゃないの!ユウリは、私をそういう目で見てくれたことなんて一度も!!そう、一度も…うわぁぁん!!」
いや、いやいや、ササメちゃんを、そういう目で見るってロリコンですやん。ユウリはササメちゃんの事、であった頃からベタぼれなんだし、いいんじゃ…?
ササメ「でも、ユウリが他の女をねっとり観てるの嫌だよ!自分だけ見て欲しいのに!!って言うか、好きな人に欲情されないのってどーなの?って言うか、妹みたいな立ち位置になりそうってか、なってたらどーしよう!!」
ユウリ「手ぇ出していいなら、今すぐでもいいよ?ササメちゃん的にキツいかなって思ってただけで、別に、そういうこと、出来ないんじゃなくて、ササメちゃんにとって、早いかなって思ってただけだから」
ササメ「へ、えぇ、ユウリ、凍ってたんじゃ?イヤァ!!」ドケシ!!!
あっユウリ、なむさん。ポクポクポクチーン。
ユウリ「死んでねぇーからね!解説!!」