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雪女と少年  作者: 干からびた芋
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ササメside

ある昼下がりだった。街の一角で、目立たないよううに、怪我人の治療をしていた。ユウリは、この行動に、賛成はしてくれてないけど、黙認してくれていた。こっそり、後をついて来てくれているのも知っていた。

そして、時々、ユウリが誰かと衝突しているのも。時々、私に気付かれないように気をつけて、外に出て、私たちの後をつけていた人達を蹴散らしているのだと言う事も。でも、目の当りにするのは初めてだった。

血しぶきが降り、人が落ちてくる。すっぱり、首が切られ、死んでいる。自分の認識の甘さが、嫌になる。吐き気を堪えながら、ユウリを見る。無表情で、ただ襲い来る者達を屠っていく。私は、ユウリが返り討ちにして、動けなくするだけに留めているのだと思っていた。...でも、私のために、ずっと汚れ仕事をしてくれていたのだ。それを知らずに安穏と過ごしていた私は、なんて馬鹿なのだろう。ユウリが無表情なのに、それが悲しかった。そして、襲い来る者達が殺気を向けていた事も、ユウリの頬に刀傷が一筋出来ていた事も、怖かった。じっと立ち尽くして、こっちを見ているユウリ。脚が震えながらも、ユウリに近づいて、頬に毒消しを念の為にかけてから、治療すると、脚から力が抜けた。ユウリの手が血にまみれていて、それが自分のせいだと思うと、怖くて。必死であやまった。ユウリの手を握りながら。でも、ユウリは、集落に戻ればいいって。雪女の皆の所に。

感情の抜けた声だった。ユウリのそんな声、聞いたことがなかった。上からユウリの感情のない眼が私を見る。

ユウリは、もう、嫌になったのかな…。人殺しを続けることも、逃げ続ける事も。こんな事を、させたのだから、嫌われて、愛想を尽かされたんだ…。ユウリに拒絶されたのだと思うと、もう、その場に居たくなかった。風飛びで、ユウリの側から離れた。何処にも行き場なんかなかった。気がつくと、街の外に飛びだしていた。森の中に入って行って、木の幹の前に座り込むと思いっきり泣いた。

「お姉さん、どーしたの?」

冒険者のカッコをした少年が近くにきて訊いてきた。あまり気配が薄くて気づきにくかったので、少し驚いたけど。まだ、幼い子供だった。

「ううん、ちょっと、落ち込むことがあって...。それより、あなたは、こんなとこで、何してるの?」

幼い子供は近づいてきて、

「依頼を受けて出てきたんだ。お姉さんは、1人?」

幼い子供は、首を傾げて尋ねてくる。

「うん、そーだね。もう、ひとりかも。」

ユウリならもう余裕で捕まえられたはずだし、今だって簡単に見つけ出せるはずなのに来ていない。当たり前よね。愛想尽かされたんだから。

「そう。それは良かった。」

そのあいずちが聞こえたとき、私は、その幼い子供から嫌な感じがして、離れようと思ったのに、身体が動かなかった。

「あははっ、こんな簡単に引っかかるなんてね。」

幼い子の悪意がにじみ出るような声に、頭をガツンと殴られたような気分になった。どうして、警戒していなかったんだろうって後悔した。

「一体、何をしたの?」

キッと睨みつけると、その幼い子供は

「わあぉ、怖い怖い。...フハァ、ああ、可笑しい。紐付きが睨んでもねぇ?フフッ」

こちらを完全に、揶揄(からか)っていた。

「紐付き?」

「君みたいに、契約してる魔物の事をそう言うのさ。何しろ、僕達には攻撃できないからね。逃げる手段さえ奪ってしまえば、後は簡単。」

そう言って手を伸ばし、眠る魔法をかけようとしてきたけど、魔法がかかりにくくする事は攻撃じゃないから出来る。

「うん、まぁ抵抗するならコッチだね。」

幼い子供からは想像もつかない力で首を締め付けられる。「…ヵ…ァ…ァ…。」

指先が食い込み筋がグリュっと音がして、痛みと熱さを感じて、…すぐ放された。

「ヒュッ、 ゲホゴホッ…」


「あ〜あ、見つかっちゃた。残念。だけど、お兄さん、これで攻撃できないでしょ?」

首筋にナイフが添えられる。ユウリが木の影から出てきた。

「それで?どうするつもりだ?」

無表情なユウリが…どうして?愛想尽かされたんだと思っていたのに。

「んー、ついてきたら殺すってのは?」

「話にならんな。影踏みでササメを連れて、どうやって移動する?諦めて殺されろ。」

私は影を踏まれているのに気がついた。ああ、これで動きを縛ってたんだ。闇魔法?

「えー、ヤダよ。それに、こんな子供を殺すの気が引けないの?」

「 ハッ、よく言う。小人族だろ?明らか成人してんじゃねーか。」

ダーマーサーレーた。アレで大人なの?ほんとに?

「ありゃ、お兄さんは知ってたか。残念。」

そう言い切ると、その小人族は、私の首を一気に掻っ切って、逃走したが、ユウリが一気に距離を詰めて、袈裟がけに切り捨てた。私は、その場で、痛いけど、体が動くから喉に手を当てて治療を始めていた。

「…ありゃりゃ、治療しに行くかと思ったんだけどなぁ…いててっ」

小人族は、無表情なユウリに向かって、ケタケタ笑っていた。

私、完全に子供だと思って騙されたよ!腹立つ!

「ササメは自分で治せるんだよ。油断さえしなけりゃ、アンタより強いしな。」

ユウリは容赦なく、倒れている小人族の首を跳ねた。

治せるけど、強いかなぁ…。自信ないよユウリ…。

ユウリ、ごめん、こんな事させて。

私が首の治療を終わらすと、

「ごめん、ササメちゃん。守るって言ったのに…。」

ユウリは、とても悲しそうに私を見る。

「ううん、私が油断してたから…。ユウリはどうして…?」

「俺が恐ろしく感じても、離れるな。安全な場所に送り届けるから。…それまでは、傍に居てくれ。お願いだから。」

ユウリは手で私の首のさっき切られた所をなぞり、泣きそうな顔をしてギュって抱きしめてくる。

「それは、何時まで?ユウリは、もう私の事、好きじゃないのに?どうしてそこまでするの?そんなの、余計つらいよ…。」

「今だって、好きさ!…でも、ササメちゃんは、俺が怖いんだろ?…もう、側に居たくないと思ってるなら、無理に、一緒に居る必要はないだろ。」

怖い?確かに怖かった。でも、

「違う!確かに怖かった。でも、ユウリに殺意を向けている存在がいる事と、ユウリが無理して人を殺している事が…、ユウリが怖いんじゃない!」

私は泣き出してしまった。

「でも、ユウリは、もう私の事嫌いになったんじゃないかって。こんな事をさせて、ずっと逃げなくちゃいけなくて、だから、もう愛想を尽かされて、集落に帰らそうって思ったんじゃないかって。」

ユウリがそっと頬を指で撫でて

「馬鹿だなぁ。俺は、ササメちゃんと居れるなら、どんな事だって耐えられる自信があるよ。でも、ササメちゃんに怯えられるのは堪えるなぁ…。」

笑ってユウリが言った。

「それを言うなら、無表情で、集落に帰れって言われた方が堪えるよ…。もう、私が要らないって言われたみたいで…。怯えたのは、ユウリを失う事だよ。」

ほっとして、私も、笑ってから少し口を尖らせて言った。

「お互い、勘違いしてたんだな。俺は、例え、この先、どんなに大変だろうと、ササメちゃんと居たい。その気持ちは変わらないよ。」

安心させるように、ユウリが言った。でも、これからも、狙われる。ユウリに殺意を持って襲ってくる。

「…死なないよね?お願いだから、ずっと一緒に居てね。」

ユウリが苦笑して

「それは、こっちのセリフだな。怪我してたのはササメちゃんだし。僕も、そう簡単に死ぬつもりはないよ。」

私は、ユウリの口にキスをした。ユウリは、一瞬固まったけど、頭に手を回して、そのまま、離してくれなかった。私の方が恥ずかしくなって、離してくれた時、すぐに俯いてしまった。

顔が熱くて、どうしていいかわからなかった。










っていうか、死体の転がってる横で、イチャイチャってどうなの??

ササメ「イヤー!いわないで。何かその場の勢いっていうか。目を逸らしてるのに。」

ユウリ「…ササメちゃんからキス…」

あ〜はいはい、ユウリはリクエストしてたもんね。

ササメ「ええっ、そうなの?じゃあ、私、ユウリに相応しい年相応の女の人にして欲しい!!」

えっ、おばあちゃんになりたいの?

ササメ「いや、な何で!!実年齢じゃなくて、ほら、こう、お姉さんぽくっていうの?ってか私、そんな年とってないからね。種族的に長生きなだけで!!」

はいはい、ユウリと同い年の女の子って事ね。

「そうなの。だって、つるペタだし、姿が子供のままだし。ユウリは、どんどん大人になってくのに。…」

無理じゃない?話的に。

「えー、そこを、なんとか?」

ってか、シリアスっぽい所にチョコチョコチョッカイかけてるから無理じゃない?精神的に成熟してないから。

「そこって精神面もカンケーするの?!」

するんです。(嘘)


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