ユキハside
また、誰だ!ですよね。すいません。
牢屋の先輩ってとこです。はい。
また、新しい雪女がやってくる。それは、自分が痛めつけられる回数が減ること。雪羽はそう、とらえていた。 もう、悲しいとか悔しいとかそういう感情はとうに擦り切れていた。消えてしまう奴が居ると、自分が痛めつけられる回数が増えるので、嫌だったが、それだけだった。もう、どれくらいココに居るのだろう…。
新しい奴が来ると、まずは、奴隷の所有者移転のために奴隷印を弄る。翌日から、拷問にかけられ、治療を施して食事を与えられる。そして、また、拷問にかけられ、治療を施して、食事を与えられたのちに、こちらに来るから、3日後。食事は時間内に吸収しなければ、引きあげられるし、拷問がきつくて、気絶したままならば、食事は抜きになるので、3日後、此処にたどり着けるかは、わからない。耐えれず消えてしまう奴も居る。
そうして、牢屋にたどり着いたなら、相部屋になる雪女が死なない様にケアしておくように命令される。毎回繰り返される事だった。何人か相部屋の奴が消えていたし、自分がなぜ生きているのかもわからなかった。
新しい奴は、ずいぶん幼かった。このくらいなら本来、集落から出る事はないし、集落ごと捕まっていたら、沢山の雪女が来る筈なので、見た目が子供なだけだろうと思った。
雪女は百冬越えてから、集落を出る。情報を集めたり、他の集落と連絡したり。危ないので、志願する人は少なく、持ち回り制だった。それで外に出て、たまに、人間に興味を持ち、契約する変わり者も居るのだが…。
新しい奴は、気絶したまま、牢屋にたどり着いた。凄く弱って、消えかけだったので仕方なく魔力を分け与える。核に触れた時、奴隷印が二重刻印されている事に気がついた。そしてその理由も。よく持ち堪えたものだ。死ぬ確率の方が高かっただろうに…。魔力を分け与えていると、意識が戻ってきたようだった。
ソイツは、起きて、自己紹介してきた。どうせ、すぐに死ぬだろう?そんな奴と仲良くしてどーなる。そう思った。でも、馬鹿正直に生きたい、って、そう言って、お礼を言われて…。
「…ッハァ、ッタクもぅ…。私は雪羽。あんた、何冬越えた?」
頭をガシガシ掻きながら訊いた。どう見ても、成人してるようには思えなかったから。
ササメ「47冬です。ユキハさんよろしくです。」
壁に寄り掛かって、こちらに少し笑いながら言う。
ユキハ「なんだ、本当にそんなもんだったのか。」
驚きつつ、「よろしくしなくていいぞ、すぐ消えるかもだしな」て言っておく。
相手は、「えっ?」と返してくる。
ユキハ「いや、見た目がガキなだけかと思ったもんでね。食事せずに、よく持ったな。」
人間でいうなら10歳くらいの見た目だしな。
ササメ「ええっと?食事はしましたよ。1回。」
ユキハ「魔力の精密操作、習ってないはずだろう?あれは、80冬越えから習うから。こんなとこで見栄張っても仕方無いさ。」
まぁ、2回目は気絶してたから無理だっただろうね。見栄張ってんのは、食事した方か、年齢か、どっちだろうね。
ササメ「此処に来る途中で、冒険者の方から、手ほどきを受けたので、まだ下手ですけど…。」
年齢詐称の方かな?まぁ、この見た目で成人してるってきついもんな。
ユキハ「…そんな、親切な奴何処に居るよ。ハハッ、年齢詐称する必要はないって、ここ来たらどうせ長生きできないんだしさ。」
捕まえた奴が、それも二重刻印する様な奴がわざわざ、生き延びさすために魔力の精密操作を教える?ナイナイ。そりゃあナイわー。もしくは100冬越えてんでしょよ。大体、使い魔契約もしてるし、集落出てんでしょ?
ササメ「ちょっと、失礼ですよ。初対面で嘘ついてどうするんです。」
プクっと頬を膨らませてるけど、年齢いっててそれは、あざといわー。
ユキハ「大丈夫!見た目が幼くても、ちゃんとした年齢言ってくれたら、信じるよ!その見た目で苦労してンだろ?」
ササメ「…どうして、年齢詐称疑われなきゃナンナインデスカ…」
ガックリしてるけど、フリでしょ?ああ、遠い目しちゃって。
ユキハ「いやあ、ププッ。だって、使い魔契約してたって事は集落でてたんだろさ。プッ。そんな奴が成人してないっつったって、誰が信じるよ?」
いやあ、牢屋入って、初めて笑わせてもらったわー。こんな笑ったのいつぶりだろ。ほんと。