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雪女と少年  作者: 干からびた芋
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ササメside

ああ、結局、外で野宿…かぁ。

フフっ、でも、夜空も見えるし食事も食べた。

これから、どんな扱いされるのかなぁ…。

「ねぇ、奴隷って何すればいい?よく知らないから…。」

「…なれば、わかるさ。…もう、寝ろ。」

答えてくれる気はないみたい。

横になってしばらく寝れなかったけど、寝たフリしていた。

ウトウトと微睡んでいると、

「…魔力が多めにあれば死ににくいからな…。」

男の小さな声が耳に届く。背中に手を当てて魔力補充をしてくれていた。

背中の柔らかな暖かさが、眠気を誘いそのまま寝てしまった。

翌日、街の中に戻り、男は札を役人に渡した。役人は案内をしてくれた。行くと、地中にそこそこの広場があり、その真ん中に円陣が描かれていた。通路を進んで、円陣の上へ。何か馬車ごと、円陣に乗ると、円陣の線から青白い光が立ちのぼって床が一瞬抜けたかのような落下感を一瞬感じて地面にグッて重力がかかったかなって思ったら、さっきと違う場所にいた。

「…すごい。もう、王都についたの?」

「ああ。そうだ。」

賑やかな所を避け、男は馬車を返しているようだった。馬車が無くなり、男は手荷物を持っていたが、一旦置いて、私の手を後ろで縛りあげた。1度、賑やかな所に出たが、そのまま横切り、薄暗い路地へ。

「俺の側から離れるな。」

そう言って、布を被っている私の肩をがっちり掴み早足で歩く。

通路は狭く、朝なのに、何処と無く薄暗い。何処からともなく視線をねっとり感じ、通路の角で小さな子供がボロボロの服を纏い、蹲り、眼は黒く生気が感じられない。横のさらに小さな子供は同じようなかっこで、咳込み子供にもたれ掛かっている。

「ひどい…。」

弱治癒だけでもかけようと、寄ろうとしたが、

「ほっておけ、キリがないからな。」

グッて肩を捕まれ、そのまま連れて行かれる。

チラホラ、大人達も見えるがドンヨリしている。片脚の無い人、柄の悪い酔っ払い。ボソボソ呟く虚ろな人。何も身に付けてない死体。肌を露出した顔色の悪い酔っ払いの女の人。気配の無い不気味な人。顔色の悪いガリガリの男性。フラフラ前から通り過ぎ、後ろで倒れる音がする。そこに、ユラリと群がる人達。助けるのかと思いきゃ、男性の持ち物を容赦なく奪っていく。

ガマン出来なくなって、倒れた男性に向かおうとしたが、身体の芯に痛みが走る。肩をグッと捕まれ歩かされていなければ、蹲っていただろう。

「ほっておけって言っただろ!馬鹿が!」

小声で怒られる。

「…どうして…。助けないの…?倒れた人から持ち物を奪うなんて…」

息を整えながら何とか声を出して訊く。

「ここは、どう仕様もない奴等の吹き溜まりで、生きてくために、弱者が、さらに弱者から物を奪い生きている。何処にでもこういう所はある。」

抑揚の無い声で答えてくれる。

「でも、ここは王都で、お金持ちの人達が沢山いるのでしょう?」

「そういう者達程、こういう場所から目をそむけるものだ。それに、施しはきりが無いからな。あと下手に助けようとするな。群がってきて、集団で襲われる事もある。」

「…そう。あの村では皆で助け合ってたし、王都って、もっと華やかで綺麗な所だと思ってた。」

「ガッカリか?せめて、表通りなら、活気があって綺麗な所だ。見せれなくてすまなかったな。」

男が少し申し訳なさそうにしてるから、調子が狂いそうだ。私は首を振り

「ここまで、親切にしてくれてありがとう。ついでに逃がしてくれるなら、もっといいんだけど?」

とニッコリ笑って茶化した。

「ハッ、調子に乗るなよ。そんな無駄足誰がする。」

男は、そのまま小さな路地に入り、一つのドアをトントンとする。中からくぐもった声が聞こえ、彼も、何かをボソボソ答えている。すっとドアが開き、さらに細い階段が現れる。そこを、私を先頭にして、後ろにピッタリとくっつき、ズンズン降りて行く。また、ドアがいくつかあり、その内の1つをまたトントンと叩いている。小さな覗き穴がパコって空いてそこから、何かを手渡している。覗き穴がパコって閉まって、暫くするとドアが開く。

しっかりした、建物の地下だろうか…。人が何人かいる。さっきと違う小さな部屋に連れてかれドアが閉められる。

「ここで待っていろ。」

男はそう言うと、

1人になった。ドアには、見張りがついている。椅子が1つあったので座って、ぼうっとする。さっきの痛みが引いていくのを待っていると、再びドアが開く。

太った人と、不気味な人と、男が入ってきて、

「引渡すから、奴隷印を書き替える。」

と男が抑揚の無い声で言う。

太った人が私の顎を持ち、顔を上げさせる。相手の顔を真っすぐ見る。何となく、その表情と無感情な黒目に怖気が走り、顎の手を退けさせたくなった。太った人は、薄ら笑いを浮かべてから、

「ああ、よろしく頼むよ。中々の上玉そうだ。楽しみだなぁ。ああ、涙の価値が悪ければ、他に売るにも良さそうだ。」

太った人は顔を不気味な人に向けると、不気味な人は、椅子を蹴って、私が立ち上がろうとすると首の後ろから、グッて押さえつけ、足払いをかけて、床の石畳に押さえつけた。「わわっ」と情けない声を出してしまったし、ゴツンと頬骨を打ち付けて、少し痛かった。不気味な人は、そのまま私を押さえつけている。男が、私の背中に触れ、身体の芯にすっと魔力が入ると同時に、一気に熱い鉄芯を捩じ込まれるような痛みが走り抜けて、そこからさらに激痛が膨れ上がって、何も考えれなくなって、

「書き替えは終わったが………」

声が頭の中に入って来たのはそこまでだった。








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