表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雪女と少年  作者: 干からびた芋
45/163

ディアスside③


「ギイィィィィィィィィィィィン」


剣とナイフが大きな音をたてる。市場の人達の注目が集まる。

ディアス「もう注目されてる。此処では無理だぞ。レン。」

レン「お前が守りについていては、どうやっても無理だな。」

レンはナイフをしまうと、人混みのなかに潜り込み居なくなる。俺はどっちに怒ってるのかわからなかった。たぶん、レンとユウリ、両方にだろう。落ち着かせるために、ゆっくり剣をしまうと、ユウリを詰所まで引っ張っていく。ユウリは戸惑った声で、「あの、ディアスさん??」と話しかけてくるが「黙って歩け。」と、急がせた。

詰所につくと、俺はしゃがんで、ユウリの胸元の服を掴む。

ディアス「お前、契約破棄したハズだな?」

ユウリ「はい、ここの詰所で破棄しました。」

ユウリは戸惑いながら答えている。俺は睨みつけながら質問を続ける。

ディアス「呪文いじったか?」

ユウリ「いえ!いじるなんて、そんな事出来ません!」

ユウリは、びっくりして慌てて否定している。

エトセ「俺らの前でしてんだし、そんな事させねえよ!」

どこで、不備があった?契約破棄したハズがされてないなんて…。考えながら質問をしていく。

ディアス「なら、契約した時はどこで?その時の呪文は?」

ユウリ「それも、ここのはずで、呪文は知らないです。」

ディアス「知らない?」

奥からドランが出てきた。エトセが、「おい、寝なくて大丈夫か?」「ああ、これが終わったら寝るさ。」と会話した後、

ドラン「ユウリ坊は死にかけて意識無かったから、ササメが全て仕切って契約をした。呪文は何の問題もねぇよ。」

ディアス「一方行だと…。なんで、そんな事…雪女にとっちゃリスクしかねぇのに…。ああ、でも納得だな。だから、契約破棄が成立しなかったのか。」

ドラン「ああ、ユウリ坊を助けるためだけに、契約したのが発端だからな。」

ササメにとって、ユウリはそんだけ大事な存在だって事か。双方行の契約と違って、一方行の契約を完全に破棄するには、心の繋がりを断ち切る必要があるらしい。双方向は契約だが、一方行はただの献身だから、実際には契約と違うので、書類と呪文で破棄できるかどうかは、当人同士の気持ちがどれだけ離れているかにかかっているそうだ。魔物にとっちゃ、リスクしかねぇし、ほとんどされないから、かなり珍しい。ただ、契約破棄が完全に成立しない事が多いので、原因究明のために研究がよくされて、本にもされていたりする。

ユウリ「あの、いったい、どうしたんです?」

少年は、何も知らない。ササメが捕まった事も。さっき自分が殺されかけた事さえ多分、気づいてない。

ディアス「…ああ。ササメが捕まったよ。昨日。んで、今日は、お前が、殺されかけた。」

どちらにしろ、告げなけりゃいけないことだ。ユウリが愕然としてきく。

ユウリ「いつ?」

ディアス「さっき、男が襲ってきてただろ。大きな音をたて…」

俺の言葉を遮って、ユウリが詰め寄る。

ユウリ「僕の方じゃなく、ササメちゃんの方!!」

ディアス「お前が昨日湖に行った、その前にだな。魔力暴走で山全体が冷えてたからな。」

ユウリ「どうして!!教えてくれなかったんですか!あの時、ディアスさん、僕とあってましたし、その時に気づいてたんじゃ…。」

ディアス「ふざけんな!!教えたからってどうなるもんでもないだろ!魔物もまともに対処出来ねぇ奴が何するつーんだ!!」

腕でユウリを詰所の壁に叩きつけた。ちょっと、いや、かなりイラついているみたいだな、俺は。

ユウリ「ッげほっ…ササメちゃん…何処です?」

ユウリが、俺に掴みかかろうとしたがドランに襟首の後ろを掴まれる。

ドラン「やめとけ。お前じゃ実力不足も甚だしい。追いかけたところで、殺されて終わりだ。むしろ、自分が生き残るために、ここで訓練積むんだな。」

ディアス「今すぐ追いかけるなら、此処で俺がお前を、殺す。」

死にかけてるササメの前でユウリが殺されるだけ。しかも、レンが殺すのは耐え難かった。

凄むと、ユウリは力なく項垂れる。

ユウリ「ササメちゃんは、どうなるんです?」

ユウリは、下を向き、か細い声できく。拳を握り締め震えている。

ディアス「どうも。捕まって、一生檻の中ってとこか。」

拷問されて、涙を搾り取られるか、貴族の見世物、慰み物ってところだろうよ。生き残っていたらな。

ユウリ「…なんとか出来ないんですか?僕は…そんなの嫌です。…このまま、何も出来ないなんて…。」

ディアス「…こーなるのが嫌だから、集落ごと逃げろっつっといたはずなんだが…。法律上、魔物の奴隷は合法だし。取り返すにしても、買い戻すにしても坊主にその力も無し。今の状態で、ササメが戻って来たとしても、お前に守るだけの力も無い。」

ユウリ「…強くなれば、ササメちゃんを助けられますか?」

その頃には、死んでる可能性の方が高いがな。

ディアス「…とりあえず、ユウリが殺されないために、最低Aランカーになってもらわんとな。契約破棄が完全に出来てないから、殺し屋が来るかもしれんし…俺がこの村に居るのが3年先ぐらいまでだから、それまでにだな。」

ドラン「雪女が居なくなっちまったから、強い魔物も増えるしな。これからは、BCランクの魔物がメインだろ。この山。」

エトセ、ノルガ「え!!俺ら、そんなん出てきたら対処出来ねぇぞ。」

ドラン「ああ、お前らも修行だな。どうせ、立ってるだけなんだ。空いてる時間に対戦して鍛えるか。寝る時間削れよ?」

エトセ、ノルガ「!!…これからの事考えれば…仕方ねぇか…。ドラン、よろしく頼む。」

泣く泣く頼むBランクのエトセ、Cランクのノルガ。

ユウリ「僕もお願いします!!一刻も早く強くなってササメちゃんを迎えにいきたいんです。」

ディアス「雪女を迎えに行くなら、Sランカー以上じゃねぇと、死ぬだけだ。情報収集をしといてやるけど、Sランカーになるまでは教えねぇ。とりあえず、3年でA、目指して貰う。それ以外の時間は、俺が鍛えるからな。お前1人じゃ依頼も、こなせねえだろうから、俺が受けた依頼について来いよ。」

じゃねぇと、依頼中に魔物に殺されました、じゃ、シャレになんねえからな。いや、マジで!!やめて!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ