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雪女と少年  作者: 干からびた芋
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ディアスside

雪女と少年に忠告してから、ここ3日、少年は見かけるが、雪女は見かけなくなった。忠告がちゃんと届いたのだな、と思っていた。一応、使い魔契約が破棄されているか、冒険者ギルドでも、確認出来るので、聞いてみると破棄されているとの事だった。だから、少し、ほっとしていた。ちゃんと逃げてくれたのだろうと。


今朝、山の方で魔力の暴走があるまでは。


まだ、ベッドの中にいたが、慌てて服を着て、村を出た。もう、手遅れなのはわかっていた。集落にいた奴が捕まったのか、ササメという少女が捕まったのか。

現場に行っても仕方が無いが、行って現場を見ておきたかった。衛兵に声をかけて、村を出る。歩いてすぐに霜のついた葉が目に入る。山の上の方まで霜が降りていたし、かなりの魔力が暴走したのだとわかる。現場は湖の辺りだとすぐにわかった。湖が凍っていたし、霜の範囲から考えれば、そこが中心だった。一応、その周りを回って見ていると、白い花の髪飾りが落ちていた。それを拾い戻ろうとした時、あの少年を見つけた。少年はしばらく、湖のまわりを歩いて辺りを見渡し、誰かを探しているようだった。少年冒険者は、しばらく、座って、凍った湖を見ていたが、やがて、薬草類を集め始めた。確か、ユウリだったな。心配はしてるが何が起こったのか、わかってないってとこか。できれば、ちゃんと、雪女と別れていて欲しかった。捕まったのはササメって子で間違いないだろな。

まぁ、ユウリの方が殺されなくて済んだんだ。忠告は無意味じゃ無かったと、納得すべきかな。と諦めの境地に達した時、魔物が何匹か湖に近づいて来ていた。魔物も、暫く警戒して、近寄らなかったのだろう。雷魔鳥か。だが、この辺で水場はここぐらいだしな。様子を見に来たのだろう。Eランクじゃ対応出来ないけど、ユウリって奴もじきに、気づいて逃げるだろう。と思っていたが、薬草集めに夢中なのか、中々気づかない。もう、だいぶ距離がなくなったところで、やっと気づき、攻撃をなんとか避けた。が、凍った水溜まりに足を滑らせてあわや、つつかれるところで、風魔法で、相手を押し止めた。が、相手は一匹じゃない。

今まで、どうしていたんだと、呆れたが、このままだと、すぐにやられるのが目に見えている。姿を見せずに帰ろうと思っていたが…。


「…はぁ。…しゃーねぇな。」


雷魔鳥を倒して、振り返って言う。

ディアス「坊主、こんなとこで何してんだ。異変がある時は、近づかない方がいいぞ、坊主のレベルじゃ特にな。」

ユウリ「あっ、この間のディアスさん。えっと、多分、ササメちゃんがした事だと思ったので…。この辺りに、居るんじゃないかと…。逢えなかったですけど…。」

ユウリは後ろめたい事でもあるのか、目をあまりあわさない。ササメが逃げなかった事についてだろうな。おそらく、待ち合わせでもしていたんだろう。突っ込む気にもなれなかった。ササメが捕まっただろう事を伝える気も、なかった。知らせたとこで、どうにもならないから。

ディアス「…そうか。…とりあえず、今日はもう帰れ。薬草集めは終ったか?」

顎で、散らばっている草に意識を向けさせると、ユウリは、慌てて拾い集め、

ユウリ「なんとか、ひとセットは、集められました。あの、助けてくれてありがとうございます。」

ディアス「これからも、薬草集めとかするんであれば、もうちょい、周りを気をつけろ。このままだと、すぐに死ぬぞ。村の中の依頼でもした方がいいかもしれんぞ。」

もう、呆れて怒る気にもなれなかった。

ユウリ「はい、すいません。」

少年はかなり落ち込みながら、村に戻っていく。


もう一度、湖を見渡した。これだけの魔力量があったのであれば、対人戦に慣れていれば、Sランクでも捕まえるのは難しい。少なくとも、捕まえたのは、Aランク以上の冒険者。村からまだ出ていなければ、すぐに捕まえた相手がわかるだろう。知ったところで、何もできないのだが。


村の入り口で、冒険者がちらほら戻ってる。C、Dランクあたりの冒険者だろう。

ドラン「今日は、異変があったから、それを調べてたのか?」

ディアス「ああ、一匹捕まったみたいだな。」

ドラン「すまないが、ユウリ坊、さっき通った、赤髪の少年を気にかけておいてくれないか?」

ディアス「心配だからか…。」

ドラン「後で、事情を説明する。」

ディアス「まぁ、近くにいれば、な。」

ドラン「ああ、すまない。」


この衛兵も、ササメ達を気にかけていたのだろう。会話をして、村に入る。おそらく、ササメが捕まった事をユウリが知ったら、どういう行動を起こすかわからないから、心配なのだろう。だが、その心配は必要ないだろうな、と思いながら、村の中を歩いていた。冒険者ギルドに向かっているユウリが、前の方に見えていた。ふと、ユウリから視線を外した時、懐かしい奴がいるのに気がついた。この村にはCランクあたりまでの冒険者しかいない中で、少なくとも、Aランク以上の冒険者。

ここで会いたくはなかった。お互いにそう思っているのが、わかった。でも、固まりすぎだろうよ。鳥の糞ぐらい目ぇつぶっててもよけれるような奴が、さ。

幼馴染みで、そいつが、どんだけ出来るか知ってるだけに、噴き出しちまったけど。

まあ、事情ぐれェは知っておきてぇよな。こんな事する、さ。ましてや、自分が悪ぃ事してるって自覚があるんだろ、その顔じゃ、さ。









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