ササメside
集落の皆は、夜のうちに移動を始めた。残ることにした私には、その場所は知らされていない。セツナおねぇちゃん以外は皆大人だし、夜のうちに移動する方が、色々利点が多いらしい。それぞれ、風呂敷一個分もなさそうな荷物で、集落の入口に集まって二班に別れ、最後に長達が集落の結界を消して、建物もなくして雪の台地だけの場所にしてから、静かに去っていった。私はその様子を木の枝の上から眺めていた。その夜、初めて一人で眠った。家の中ではなく、木の枝の上で。
朝、起きて魔物を吸収してから、湖に向かった。そこでユウリをじっと待った。ユウリにはいっぱい話たいことがあった。待ってる間、周りを観察しても、集中出来なくて、気持ちが乗らなかった。だから、じっと木の枝の上で待ってて、ユウリがきた時、すごくほっとしたんだ。初めて一人で過ごしたから、寂しかったのかも。
その日も、何事もなく依頼を終わらせて、やっと、そよ風ぽいものを吹かせれるようになってきたユウリが、十回連続で出来るようになって。ユウリとハイタッチした。
ユウリ「大丈夫?」
ササメ「うん?何が?」
ユウリ「今日のササメちゃん、ずっと無理して明るく振舞ってる気がして…。」
ササメ「大丈夫だよ!!それに、早く帰らないと、妹待ってるぞ~。」
ユウリ「…うん。じゃあ、また明日!」
ササメ「また明日!」
…失敗したなぁ。ユウリに、心配かけさせたくないなぁ。だって、ユウリが無理して強くなろうとすると、何か失敗しそうってか、絶対するよ!失敗するもん!!今までの失敗を思い浮かべながら、乾いた笑いがでてきたのだった。うん!!これは気にしたら負けってやつよ。きっと!
ユウリside
ササメちゃんに寂しい思いをさせている。僕が別れたくないって言った。ササメちゃんも同じ気持ちでいてくれた。嬉しかったけど。集落の皆と、別れさせてしまった。寂しい思いをさせているのは、自分だった。はやく、強くなって、契約を結び直して自分と一緒に過ごせるようにしないとなって気合を入れ直した。はやく、強くなろう。
翌日
ササメ「…で、朝から、その顔どうしたの?タンコブとアオタン出来てるけど…。」
湖で、待ち合わせして顔合わせるなり、ササメちゃんに呆れられた。
ユウリ「いや、そよ風起こせるから、そろそろ風飛び行けるんじゃないかと…」
ササメちゃんから目を逸らす。ため息と静かな怒りのオーラを感じて…。
ササメ「この、おバカ。そよ風で体重乗らないのに、なんで行けると?しかも、高いとこからやったでしょ…。あれはねぇ………」
ユウリはずっと、説教受けながら、依頼をこなす事になったのでした。
チャンチャン
ケガ?そんなもん、文句言いながらもササメちゃんが治してくれたよ。