ササメside
ユウリと2人っきりになると、どうすればいいのかわからなかった。ただ、ユウリの顔を見るのが怖くて。私のせいでユウリが危険にさらされている罪悪感と殺されていたかもしれない恐怖感とで、いっぱいで。集落が移動しなくちゃいけなくなったのも、私が軽率な行動をとったから。頭の中にこれらの事がグルグルまわって、動けなかった。怖くて、身体が震えてきて。ユウリが手を握ってきてくれたのに、その温もりが、かえって恐怖心と罪悪感を膨れ上がらせた。ユウリの手の温もりが、優しさが、私には辛かった。私にはそんな資格ない!!
「っ私!…私がユウリを危険にさらしてた…ごめんなさい」
ユウリの手を払い退けないといけないのに、動かすことが出来なかった。浅ましい、その手に触れること自体おこがましい。なのに、許して欲しいの?謝って済むことじゃないのに。その手の温もりに触れていたくて、払いのける事もしない。こんな最低な奴の手なんか、握る価値もないのに。やめて!!私にその優しさを向けないで!!
「私が!っ私が知ってないといけなかった!親から、知られてはいけないって言われてたのに、どうしてかなんて考えもっ…」
集落の事だって私のせいなのに。皆に迷惑をかけるような奴なのにって思って一杯で…だから、ユウリが何をしたのか、理解出来なかった。最後まで言いきれずに、唇を何か柔らかいものが塞いで…。ユウリの顔が近くにあって…。
ふぇぇぇえっ!く、く、口づけ!!
き、キスなんて!
考えてた事が全て吹っ飛んで、驚いて。唇が離れてから、いっきに顔が熱くなってきて下を向く。
ユウリ「ササメちゃん、落ち着いて?僕は、そもそも君に出会わなければ、''あのツノラビット''の腹の中だよ。9歳のあの時に死んでたんだ。ササメちゃんと出逢えたから、今ここに居る。そうでしょ?」
ユウリは、そう言って悪戯っぽく笑っているのだろう。それから、そっと抱きしめられて、余計に顔が熱くなって、嬉しくて、でも恥ずかしくて、私は小さな声で
「…もう、落ち着いたから…」
って言って、ユウリの体を押した。
でも、なんか、少しだけ悔しかった。だってユウリ、今、絶対余裕な顔して、笑ってるだろう。こちらは恥ずかしくて顔見れないのに。
私は、…はじめてだったのに、絶対ユウリはじめてじゃないでしょ…。顎に手をあてて一気に口塞ぐなんて!
だんだん、腹が立ってきて、
この女ったらし!!スケコマシ!
こんな奴の事なんて、心配しないんだから!!
と、心の中で毒づいた。