ユウリside
いつも通り、依頼が終わって報酬を貰おうとギルドに戻って来た。夏だからか、ササメちゃんはかなり調子が悪そうだ。暑くなってから、広場にかき氷屋さんの屋台ができて、値段も手頃だったので、今日の依頼が終わったら、食べようと約束していた。
ササメちゃんが、早く早くって僕の手を引いて、ギルドの扉を開けると、知らない冒険者の男が受付にいて、チラリとこちらを見る。なんとなく、強い人かなって思って、不安になる。その冒険者は依頼の書類を見ている。あの依頼かなって思いつつも、依頼報酬を貰ってさっさと、ギルドを出た。ササメちゃんが限界に近いみたいで、急かしてきたから。
日陰のベンチに素早く座って、イチゴのお願いって言ってグデーっとしている。僕はかき氷の屋台の列にすぐに並んだ。その時、横から、ギルドで見た冒険者さんが話しかけてきたんだ。
「話があるから、ついてきて欲しい。」
ここでは、まずい話なのだろうかと思いつつ、僕は、あの依頼の件だったら、ササメちゃんも聴いた方がいいだろうなって思って、ササメちゃんに声をかける。
「ササメちゃん、今から、話があるからついて来てって。えーと、こちらの…」
「ああ、ディアスだ。」
「ディアスさんが。」
「えー、かき氷は?もう熱いよぅ…。ここじゃダメ?」
ササメちゃんが、ディアスさんを見る。僕も、そんな聞かれて困る話なのかなって思ってディアスさんを見ると、
「悪いが、大事な話だから、違うとこで話した方がいい。」
「…かき氷…。」
未練たらしく、どこか遠い目でササメちゃんが屋台を見ている。
ディアスさんは、ため息をつき、
「ついて来てくれたら、かき氷ぐらい奢ってやるから。」
と言うと、
「…なら行く。」
ササメちゃんは、少し生気を取り戻して、僕の手を握る。相変わらず、全体にはグデーっとしたままなのだが。だけど、ササメちゃんも、知らない強い冒険者さんについて行くのは、緊張しているのだと、握られた手から伝わってくる。
広場から続いている、大通りを通り、その並びにある、村の中でも、キチンと店をかまえる、高めの店に、ディアスさんが入って行った。
僕が店の前で止まったので、ずっとしたを向いていたササメちゃんが顔を上げ、
「ユ、ユ、ユウリ、ここって、かき氷、高いよぅ…。」
「う、うん、い、今まで入ったことないしね。」
僕たちからしたら、高級店で、足を踏み入れるのは戸惑われた。なにせ、ここのかき氷は、屋台のかき氷の値段と比べれば10倍も違うのだ。で、僕らがたたらを踏んでいると、ディアスさんが、早く来るように促すので、僕は意を決して、中に入っていく。従業員に個室に案内されて、席に着くと、ディアスさんは、かき氷を3つ注文している。ササメちゃんは、席に着くと、すぐに部屋を涼しくしていた。机に突っ伏して、どうかと思うが、辛いのだろうと思い、そのままにして、
「で、ご要件は、どのようなことでしょうか?」
と、僕は質問した。