ユウリside
目が覚めると、見知らぬ天井。お腹のほうに重みがあって、そちらに目を向けると、泣き跡のあるササメちゃんの寝顔。ああ、僕は助かったんだ。そっと手を抜き出して、ササメちゃんのほっぺに触る。その時、何かを落としたのか、カツッ、コロコロと、音がした。ササメちゃんが少し目を開け、ぼんやりと視線が合う。ゆっくり頭をあげて、その頃には目がしっかり覚めたようで僕をしっかり見つめている。僕はササメちゃんに「おはよう。心配かけて…」最後まで言わせてはくれなかった。
ササメ「この馬鹿ユウリっ!!…ちゃんと! …気を付けないと!…ダメでしょう!!…凄く、…凄く、…心配したんだから!!」
ササメちゃんは、ものすごい勢いで、怒鳴って僕の体をポカポカ殴って、怒ってたのに、次第に泣き始めるという、器用な事をしてくれた。僕はササメちゃんの頭をそっと抱き寄せて頭を撫でながら「ほんとに、ごめん。助けてくれてありがとう。」と言った。
その時、ドアが空いて、聖職者のおじさんの方が顔を覗かせ、「あのー、すいませんが、聖堂では静かにお願いしますね。気持ちは解りますが。…朝のミサ中ですので。」
ササメ「あっ、すみません。つい。昨日はありがとうございました。」
聖職者は頷きながら、僕の方を見て、
「体調はもう、大丈夫ですか?」
ユウリ「あ、はい。ありがとうございます。」
「では、ミサに戻りますが、元気になったのなら、外にでてやってくださいね。使い魔さんには、この空間、キツいはずですので。」
ユウリ「?使い魔?誰が?」
ササメ「…思い出したら、急に辛くなってきたかも…」
僕は、混乱しながらも、ササメちゃんが地面に座りこむのをみて手を貸しながら
ユウリ「え?と、とりあえず、外に行こう。ほら。」
頭の中には疑問符がいっぱいだったが、聖堂の中をそっと移動して外に出た。
とりあえず、ササメちゃんと一緒にベンチに座ってから、僕は、そっと脇腹の傷のあったところに目を向けると、もう、治っている。しばらくすると、ササメちゃんの顔色も良くなってきた。
ササメ「あっ、詰所に行かないと!!」
ササメちゃんが、ぱっと、立ち上がって、
ササメ「ユウリも、ついてきて。」
ユウリ「あ、うん。でも、その前に、妹に会いに行きたいな。」
ササメ「あ、そうだね。一晩帰ってきてないんだから、妹さん、心配してるよね。」
ユウリ「じゃあ、僕の家に行くよ。」
僕は、そう言って立ち、ササメちゃんに手を差し出す。ササメちゃんが、その手を取ると、二人で家に向かって、走った。
妹「…その人、誰?…朝帰りなんて、お兄ちゃんの不潔!!」
妹は頬をプクっと膨らませて怒っている。
ユウリ「…いや、違うし。…どこで、そんな言葉覚えてきたの?」
僕の妹が…、正直かなりショックだった。誰だこんなセリフ覚えさせたの…はぁ。
ササメ「あの、初めまして、ササメと申します。」
妹「…お兄ちゃんは渡さないんだから。」
ササメ「…えっ?えーと、」
僕は、妹にひと通り説明すると、「お兄ちゃんのバカ!!ジュリを天涯孤独にするつもり!!」と怒り、ササメちゃんの手をガバッと取って「こんなダメな兄ですけど、どうか見捨てないでやってください。」とさっきまでと180度違う言葉を吐いて「ああ、もぅ、こんな時間!ジュリは、お掃除のバイトの面接があるのです。では。」と慌てて出ていった。