ディアスside3
ユウリ「師匠、これってある意味ストーカーでは?」
あれ、それユウリが言っちゃう?
ディアス「ほお?心配させるような事しといて、言う事はそれだけか?」
だよね。そうなるよねぇ。うんうん。ディアスさん、怒って正解ですよ(笑)
ユウリ「あ、いえいえ、感謝してますよ?これでも」
こんな態度でも感謝してますよって、慌てて付け足してもねぇ?ってか今更慌ててどーすんのさユウリ。
ディアス「ほお。そうか、まぁ、今からちょいと稽古でもするか。」
うんうん。ディアスさんも頷いちゃって、まあ。
ユウリ「いやぁ、それって拒否権は?」
ディアス「あると思うか?ん?」
ユウリ「デスヨネ…。」
行ってらっしゃ~い。
なんでこっち来ちまったかな…。俺は後悔した。だって弟子と子供がイチャついてるのを目にしたから。
ササメがユウリと一緒に居ることに安心したのはしたんだけどな…。
よく見ると、ユウリは震えていて、かなり追い詰められた表情をしていた。その状態のユウリを落ち着かすように、後ろから抱きつくササメの図。
視界に入らぬように離れようとしたわ!!
すぐに立ち去らなかったのは、ユウリがあそこまで追い詰められているのを初めて目にしたから。それでも、彼女が居るんだし、実際、ユウリの震えが治まってきてたし、大丈夫だろうと思ったけど!思ったんだけど!!
あんの馬鹿弟子、また、ササメを1人残して行きやがった。
まあ、普段から、そんなに過保護にしてねぇのかもしれん。普段なら、俺もほっといたかもしれん。
だが、馬鹿弟子は、今のササメがブレスレット嵌ったままなの忘れてねえ?
逃げるにしろ、抵抗するにしろ大した事出来んだろうが!!
あんの馬鹿弟子は、冒険者ギルドの方に行きやがった。んで、街の外に出て行った。
今は冒険者ギルドの魔物討伐依頼なんてほとんどねぇだろ。有っても、せいぜい、魔精狼、苔魔粘液、魔樹等の益魔物を狙う害魔獣討伐ぐらいのはずだ。
それも、別に放って置いても問題のない。何しろ、益魔獣はある程度土地が回復するとどっかに消える。それに伴って、害魔獣もほとんど何処かに移動するからそこまで問題にならない。
だから、手持ちがなくて仕方なくって奴ぐらいしか受けねえ。
俺は受けねえ。恐らく、害魔獣は魔蛭なのだ。
地中深く潜っていて難を逃れた魔蛭。外皮が柔らかいクセに、やたら丈夫なので、近くから思いっきり切りつけないと倒せない。しかも、やたら血肉が飛び散り、血まみれになる上にすごく臭いのだ。
まあ、八つ当たりするなら良いのかもしんねぇけどな…。いや、どうだろな…。
ササメもどうやら、街の外に向うらしい。道筋を先読みして通り、子供攫いっぽいチンピラがいたので、絞めておく。
今のササメにとっては、この程度の奴等にも脅威だろうからな。
ってか、こういうのはユウリの仕事だろうが…。
ったく。
チンピラをさっさと衛兵に突き出すと、街壁の上に居座らせてもらう。
ササメは街の外に出て食事にするようだ。
街壁に近づきすぎた個体の苔魔粘液をササメが持つと、すぐに色が薄くなり丸くなって、小さくなって消えていく。まるで熱々の鉄板に水滴を落としたかのように。実際は凍らされて、だし、鉄板に落とした水滴のように踊りはせず、手の平に大人しく収まっていたが。ササメが座り込み、ユウリが居るであろう方向を気にしている。
魔樹の群れの茂みの向こうから、わざと大きな音を出している。魔蛭が寄って来やすいようにだろう。
ササメは、魔精狼の群れに寄って集って舐められている。その光景に思わず、頬が緩みかけた。が、俺は顔を顰めてササメから目を逸らす。
魔精狼が懐いたような行動を起こす者には、何処か悪いところがあるためだ。ターナもそうだった。
魔精狼は群れが襲われたり、群れの郡頭が土地を癒す害になると判断しない限りは、攻撃をしてこない大人しい魔物だ。
だが、元気な者には寄ってこない。何処か怪我をしてれば舐めて癒してくれることはあっても。
忘れかけていた事実を突きつけられただけだ。元気に振舞っているから、忘れかけていた事実。
レンに捕えられた時点で、いや、観賞用の魔物に成れなかった時点で既にわかっていたことだ。
なぜ、ササメが座り込んで居たのか、そして、なぜ、すぐに魔精狼が寄ってきたのか。
恐らく、相当具合が悪いのだろう。ターナが蒼白い顔して、無理に笑う姿が思い起こされる。
助けに向うか迷うが、倒れたらだ。それまではほっとけばいい。どうせ、無理に平気な振りをされる。なら、平気な振りも出来ない状態になった時に出ていけばいい。
あーいう手合いは、心配するだけ無駄なんだ。それに、魔精狼が癒してくれるだろ、ある程度は。
さて、どーすっかねえ…。空を見上げると青空が広がっている。のんびり雲が流れていく。
ここ離れたら、ターナの見舞いでも、しに行くか…。
レンは今頃どんな依頼を受けているやら…。それを考えると顔を顰めてしまう。大体、エリクサーだって高いくせに中途半端なんだよな。片腕を無くして、飲んで治る期間も人によって違う。無くしてから半年経ってても治るやつもいりゃ、一週間ぐらいしか経ってねえのに治らねぇ奴もいる。流石に欠損してすぐなら、どんな状態でも、死んでなけりゃ治しちまうけど。
ターナは…現状維持しか出来なかったんだろな。
なんだよ!!服用した人間の覚えている限りの最良の状態に戻すって効能はよ!!全快させろよ!!
ササメも魔物じゃなく人だったなら、ユウリが真っ先に飲ませてたんだろな。どこまで効果があるかは別として。
やっと、ユウリとササメが合流した。ったく、手間かけさせやがってからに…勝手にしてることだが…。
さてと、この場を後にするかと立ち上がると、ユウリの魔力が吹き抜ける。
ユウリが怒りで魔力を噴出させたようで、振り返り視力強化すると、ササメを押さえ込んでキスをしている。
魔力は、もう収まっていた。今度こそ、視線を切り街の中に戻る。肩をすくめ、
「アホらし。勝手にしやがれってんだ。」
そう、呟いた。
ディアス「なぁ、俺は一体何をしてるんだろな…。ハァ」…
ディアスさん、何か一気に老け込んでますよ。
ディアス「何だろなぁ…もう、妬むには勢いも若さもねぇっていうか…。」
やっとおじさんの自覚が…あ、いえ、何でもないデスヨ?、イエ、ホントに…そんな、睨まないでください☆マックさん助けてぇなぁ。
マック「おい、怯えて俺の後ろに隠れるくらいなら、初めから余計な事言わなきゃいいだろ…。」
そうは言うけど、ついってあるじゃん?
ディアス「ほお?そうか、反省しとらん、と 」
ガシッ
あれ、いつの間にこっちに、襟首が…いやぁ、それ引っ張ると首締まると思うなあ?
マック「諦めて、連行されてこい。」
いやぁぁああ…ぐぇぇぇええ。ズリズリ…