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雪女と少年  作者: 干からびた芋
159/163

ディアスside2

ジャン「うん、ものの見事に話の場面進んでないねぇ。」

言うな、なんか、うまく進められんのだよ…。

ところでさ、ディアスさんは王様が変わったとか、討伐隊が組まれるとか、結構大事だからすぐ耳に入りそうなのに、なんで知らなかったんだ?

レン「基本、ギルドの依頼は俺が取ってきてたし、その間、妹の面倒を見てもらってたりしたからなぁ。あと、わざと隠してたとこもある。」

あ、そう…それで誤魔化せるんだ…。

レン「ディアスが、世の中の動きに全く興味なかったのもあるがな。祭りやってても、なんの祭りかなんてどうでもいい奴だからな。」

ディアス「今は違う。ソロで活動し出してからは、ちゃんと情報収集ぐらいしてるからな?」

レン「好き嫌いしてるせいでツテ少ないがな。」

ディアス「がァ!うるせえよ!お前みたいに腹に一物溜めたまま、なんて器用な事できるかあ!!」

まあ、二人は今でも親友って事でイイデスヨネ。



「うん、そうだね。だから、これはこうした方がいいんだよ。まぁ、その辺はあいつの方が詳しいから聞いてみな。」

そう言って、他の隊員を呼び寄せ指導をお願いしてくれる。

自分たちに必要な課題がポンポンでてきて、その解決法のヒントをその時々で小出しに出してくれた。

そうやって、色んな人に教わりながら、必要な事をひと通り効率よく鍛えられていった。

たぶん、隊長は俺達を効率よく鍛えてくれていたのだろう。自分たちに必要な事を思いつき、その解決に至るまでの考え方を、いろんな角度から導き出すよう癖がついた。今思えば、そういう風に訓練させていたのだろうとわかる。

姿が見かけないなぁと思えば、ジョエルさんに連れ戻され、怒られて、他の隊員たちがジョエルさんを宥めて。

他の隊員たちの名前もひと通り覚えて、皆が俺達の事を弟分扱いして可愛がってくれて…。

だから、一緒について行きたかった。だけど、ターナのことがあったから、一旦は戻らなければならなかった。でも、冒険者をやめて隊員になりたいと思ったし、無事任務が終わったら、俺達に試験を受けさせてくれって頼み込んだ。

「君ら、年齢足りないから、ね。悪いことは言わないから、はよ帰りなよ。」

って頭撫でられて、笑いながら、やんわり断られ

「それと、期限過ぎても、こういう依頼は依頼人がOKしたら減点ないし罰金(ジムテスウリョウブンくらい)も少ないはずだよ。まぁ、依頼失敗だから、点数つかないし、失敗の事実は残るけどね。」

って、いつ狩ってきたのか、依頼の魔獣の素材を渡してくれた。

「元気でな!死ぬなよ。」

「まぁ、今のお前らなら街まで無事戻れんだろ。」

「何しろ俺達がみっちり鍛えたんだしな。」

隊員たちが、そう言って送り出してくれた。

彼らの多くと、もう2度と会えなくなってしまうなど、その時は思いもしなかった。危険な任務だからって言ったって、あれほど強いのだから、ほぼ無事だろうって、レンだって思ってたに違いないのだ。特に隊長なんて、何があったって平気だろうって。

街に戻ると、依頼はどれも難しくなくなっていた。

ランクも、すぐ上がりターナの治療費をレンのみで捻出できるようになった。

貴族の依頼は、依頼料がよくて、ランク制限も問題なく受けれる様になっていた。

そんな時だった。彼らの話を聞いたのは。

―なぁ、面汚しの寄せ集め隊を討伐するんだってよ。

―ああ、あの第一王子の、治安維持とか親身になってやってくれてたのに、まさか、戦争起こそうって企んでたんだってなぁ。すっかり騙されてたよ。

―何が、帰ってきたら騎士団として、またお世話になるだあ?もう2度と来るなってんだ。

―まぁ、もう討伐隊が出発して何日かたってんだ。もう、討ち取って帰ってくるんじゃねぇか?

―隊長のノラスキーって野郎はどうにも胡散臭かったんだ。何考えてんだか薄気味悪くてさぁ…。

俺は気がついたら、ソイツを殴ってしまっていた。騒ぎになって、牢に入れられて…。

3日の拘留。その間、レンが来て、何やってんだって。

「な、なぁ、レン。あの俺らを助けてくれた隊長達が、討伐されるって!」

レンは、動揺もしていない。それを見て、俺はレンが知っていたのだと、気づいた。

「ディアス、彼らは王国の敵なんだ。俺達はこの国の国民で、この国で暮らしてるんだ。俺は国を敵に回すつもりはない。もう、あの人らにも関わらない。」

冷たい声だった。

「レン!!あの人達は、指令を受けて動いてるって言ってたじゃないか!!何かの間違いに決まって…」「だとして!!それをどう証明する?俺たちは、ただの冒険者だぞ?一般市民より、なお立場の悪い俺達が、どうやって、王様に嘆願するんだ?例え証拠が集まったって、会う事すら不可能なのに?」

「なら、助けに…

「死ににいく気はない。それに、もう手遅れだ。それとな」

格子越しに胸ぐらを捕まれ、耳の側で小声で

「…恐らくだが、今の王様か、その側近の貴族が嵌めた可能性が高い。なにしろ、この間、第一王子が廃嫡され隣国に罪人として送られて、第二王子が王様になったばかり。王族が隣国に戦争を仕掛けたなんて言ったら外聞が悪いから指令下してたとしても、無かった事にするだろう。」

俺は、目を見開いてレンを見て、

「そこまで、わかっててなんで…もっと前から(しらべてってたんだろ…。」

「知ってたって何も出来ないし、お前を死なせるつもりもない。知ったら、お前、俺達はもう大丈夫だろって放って(たすけ)にに行きそうだったからな。」

「…だから、黙ってたのか?」

「ああ」

「…なぁ、それ知ってて、それでも貴族の依頼とか受けてんの?」

「…ターナの治療費が要るからな。それとな、力持ってる奴と懇意になれば、1人2人なら見逃してもらえるよう交渉できるかもしれねぇだろ…」

依頼料がいいからよく受けるようになったのかと思ってた。

「…なぁ、俺さぁ、無理だわ。」

要は、隊長達を嵌めて殺そうとしてる奴らに、媚売ってそのうちの何人かを見逃してくれって頼むって?

「嫌われても仕方ないと思ってる。…3日後、もし、この街出てくんなら、ターナにはちゃんと声かけてってくれ。」

俺の頭ん中はぐちゃぐちゃだった。面会だけで、保釈保証人にならなかったのは、俺を此処に留めるためだろう。隊長達は、まだ、討伐されてない。

レンは、たぶん、どうにかしようと思ってたんだろう。じゃなきゃ、証拠とか王様に合う方法とか、彼らの置かれてる状況だとか、あんなセリフがスラスラ出てこないだろう。でも、結局は、悩み苦しみながらも、レンは彼らを見捨てる選択をした。だけど、俺は(ボケーっとして)らずにいて、気づいた時には手遅れで…何もしていないのだから、俺の方が最低だ。それでも、隊長達の足手まといになろうと、彼らの手助けに向かおうという意思で意識がいっぱいになっていた。

3日後、レンの妹に別れをつげ、転移師(当時は転移陣がなかったのでテレポーターと交渉して、許可された特定の場所に飛んでいた。3箇所ぐらいしかなく、人一人と荷物のみで、料金も高かった…)に跳んでもらい、そこから風飛びで急いだ。

だけど、国境にも達してない小さな町で、討伐隊の壊滅と、隊長達の生存が絶望的な事を聞いた。間に合わなかったかと、悔しくて、でも、まだ諦めきれなくて、その場所に向かう。

大きな焦げ溶け固まったのであろう底に水の少し溜まったクレーター、たぶん、ここなんだろう。敵味方関係なく消滅したのだろうか…こんな…。見た途端に聞いた話が本当に起こったのだと、誰一人助からなかったのだろうかと…。色んな思いが頭に過る。膝が折れて嗚咽が漏れた。まだだ、まだ、確定してない、そう、否定するも、中々そこから動けなかった。

さらに、そこから捜索して、なんとかジョエルさん達、隊員の生き残りと接触でき、おもっくそ怒られた。それでも、会えたことが嬉しくて、いなくなった奴らの事が悔しくて泣いた。回復ポーションと食料は渡せたが、お礼を言ってすぐ追い出された。

もう、関わるなって。また討伐隊が来る前に、私たちも隠れるつもりだったからと。

でも彼女だけは無理だと知っていた。指名手配書が出回ってしまっていた。此処に今残ってるのは、彼女を見捨てることができない者たちばかりで、彼女自身も抜け殻のような状態から脱して間もなくて、気丈に振舞ってるだけなのだとわかった。それでも、彼女が怒るから、隊長の遺言だからと泣くから、離れていくしかなかった。


ポンポンと頭に手を置かれるのはガキ扱いで面白くなかったのに!肩叩いてほっぺに指がプスってされるのも、後ろから気配を消して近づかれて驚かされるのも、嫌だったのに。無性にそれをして欲しくて、「嘘だよ~」って振り向いたら、緩く笑って立って現れて欲しくて、隙ありって足払いかけて欲しくて、また、レンと一緒にボコボコにけちょんけちょんにされたくて、でも、ジョエルさんが泣き止んで立ち上がってるのに泣くわけにもいかなくって…。色々呑み込んで、笑って別れた。


あの、独特の笑い方が、ああ!そうさ!思い出しちまうから、寂しくなるから、悔しくなるから、だから(にがて)いなんだよ!!畜生!

ってか俺はなんでそんな感傷的(センチ)になってんだよ!!ジャンのせいだ!!クソったれ!!

バンッ!!っと音がして思考が途切れる。

勢い良くユウリがドアを開けた音だった。扉を開けて早足で通り過ぎて出ていく。オイオイ、声かけてんのに、ありゃ周りも見えてねぇ

ぞ。ササメもまだ出てきてない。オイオイ。

ササメがドアを開けて

「あ、あの、ジョエルさん達が、報酬はちゃんと頂くからねと伝えてくれって言ってました。すいません、失礼します。」

ジャンに向かってそう言い切ると、慌ててユウリを追いかけようとするので呼び止めた。

「おい、どうした。」

「あっ、王都に行かないと不都合な事があって、でも、私が気にしなければ行かなくても良くて、でも、ユウリ切れちゃってて、とりあえず、ユウリを追いかけたいので、すいません。」

アワアワしながら早口で、そう、まくし立てるとユウリを追いかけていった。

で、ゆっくり出てきたジャンを睨む。

「ヤだなあ、そんなに気になるなら、一緒に来てくれたらいいんだよ?どうせ、パレードして経済活性化か、お話広めて英雄作って冒険者を増やすかしたいんだろうから、悪いようにはしないハズだよ。」

そう言って肩を竦める。

「ああ、自販機。最近出回り始めたよね~。」

と緩く、話しかけてくる。

胡散臭すぎて、他に何かあるだろって突っ込みたいところだが、答えてくれるはずもなし。

「悪いが、お前とはなるべく顔を合わせたくないんでな。」

そう言って、物珍しさの興味本位で自販機で買ってチミチミと飲んでたコップを一気に傾け飲み干して、ゴミ箱に放り込むとその場を後にした。

ディアス「ああ!もう、ユウリのアホがァ!!」

なんか荒れてる?

ディアス「ササメ、放っとくとかあり得んだろ!!なんかあったらどーすんだ?」

ああ、人に狙われたらってやつですね。ポン。

ディアス「イラついてても、周りぐらいちゃんと見れるぐらいじゃねぇとどうすんだよ…鍛えてる意味ねぇだろがぁぁぁああ!!!」

えと、ジャンさんのせいでイラついてます?

ジャン「ええ?そんなに嫌われてたらショックかも?」

全然傷ついてるように見えないですよ?その笑顔…。まぁ、いいや、次回は、ディアスさんが出歯亀するよ。ディアスさん影で助けるよ。ディアスさん到堪れなくなってそっと立ち去るよ。の3本です。

ジャン「え…それ本当に?」

知らん。どうだろ…。


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