ササメside
えっ!!これ、宴会終わってマック、ディアスメキル、ユウリ、ササメが喫茶店でくつろぐまでの間の話?話戻ってない?
ササメ「だって、ユウリは、午前中の話は飛ばしちゃってたし、色々あったんだもん。なのに、午後からも、ジャンさんのせいで…もぅ、散々だよ!!」
ジャン「えー、僕のせい?でも、僕は、王様に頼まれてだから、王様のせいっと。」
怖い夢を見た。 今だに、魔力が少し乱れていた。身体が硬直して、目がバッチリ開かれるくらいですんだ。横の存在が心の安定剤だった。
ユウリが、起きなくて良かった。
横にいる熱を感じて、しばらく動かずにいたけど、じきに落ち着く。
バッグを漁って水筒を出す。魔法で中に冷えた水を満たすと、それを飲む。
日常で使う分の魔力については、魔力を使っても痛まなくなっていた。ジョエルさんのおかげだ。良かった、続きが出来そう。
まだ、薄暗いがじきに、小鳥たちが鳴きだすだろう。
水筒を戻すと、魔力糸で布を作る続きを始めた。白色の布だから、何にでも使えるだろう。
ユウリや自分用の下着や服をある程度、作りつつ、その合間に、少しずつ作っていた網目調整の為の練習用にしていた物。もう、一反分位は出来ていた。少し、目が飛んだり、寄ったりしてはいるが、温度調整に優れていて、ある程度の耐久性と魔力も通りやすいので、使い道はあるはず。マックさんに、渡そう。お礼に、お金は受け取ってくれないだろうし。
そう考えて夢中で編んで、端処理して広げて見ていると、後ろから手が伸びてきて、耳元でおはようってユウリが軽く、ハグしてくる。
いつの間にか、鳥が鳴いているし、外も明るくなってきていた。
ササメ「おはよう。ユウ…」
肩に掛かる腕にそっと手を触れて振り返ると、ユウリが口で口を塞ぐ。
いつもは、ほっぺかおでこなのに、それでも、嬉し恥ずかしだったのに、一気に顔が火照ってしまう。
口が離れて、ユウリがその口で、おはようって。
見られてるのが恥ずかしくて、下向いて、どうしたらっていっぱいぐるぐるなって、チラッとユウリを見ると、ユウリの目とあって、余計に恥ずかしくなって、
ササメ「あ、あの、ちょっと顔洗ってくる。」
部屋を出てしまった。
後ろで、ドアを締める時にクックッと笑っているユウリの声。もぅ、ユウリのバカ!!
そっと、酒場の裏口から裏庭っぽい所に出ると、声をかけられた。
クルス「お、ちょうどよかった。俺ら、これから帰るから。あ〜、なんだっけ…ジャンって奴?に報酬はしっかり払っとくれよって伝えといてくれだと。」
クルスさんは、途中から地面に生えたカンペを見ながら、伝言を伝える。ジョエルさんからだと、すぐにわかる言葉だ。
クルス「つーか、お前が喋ればいいだろ…。」
って小声でツッコミを入れると、頼まれたのはお前だってカンペのツッコミが…。地面にトールゥドさんがいるのだと、すぐに、わかってしまう。
わたしは、ちょっと笑ってから、
ササメ「うん、ジャンさんに会ったら伝えとくね。あ、ユウリ呼んで来る。」
クルス「いや、呼ばなくていい。あいつの方はまた、会う機会もあるだろうしな。たぶん。」
そのセリフの言外にある意味を読み取り、ちょっと不貞腐れた。
ササメ「そんなすぐに殺さないでよ…。死にませんよ、そんなすぐには…。」
ブスっとして呟く。
クルス「ああ、まあ、しぶとそうだしな。」
そう言って、クルスさんは頭に手を伸ばしかけて、やめる。
子供扱いで、頭を撫でられるのかと思ってたから、首を傾げる。なんだかんだと、ユウリも彼らに気がついて降りてきていた。
ユウリ「お別れの挨拶ですか?今回も色々お世話になりました。チョビルさんや、ジョエルさんにもよろしくお伝えください。」
ニッコリ笑ってユウリが、そばに立つ。ユウリがポンポン頭に手を載せてくる。
クルス「あ〜、まあ、来たんならこれ、渡しとく。」
手紙?興味を持って覗き込もうとするとペシって前髪を叩かれる。
クルス「こら、お前は見んな。ユウリに渡したんだ。お前じゃない。会わなけりゃ、ギルド経由で届けようかと思ってたんだがな。」
ユウリはそっと開いて頷くと、しっかり頭を下げて
ユウリ「ありがとうございます。しっかり習得しておきます。」
と答えていたから、何かの魔法のようだった。
クルス「ああ、じゃあな。」
ユウリは、頷いてから、
ユウリ「クルスさん、トールゥドさんも、達者で。」
地面にスポッと落ちるように入ってくクルスさんに向かって声をかけていた。それに被せるように、わたしも、慌てて、さよなら~って声をかけていた。
酒場に戻って、軽食を頼んで、椅子に座って食べていると、マックさんが起きて唸っていた。曰く、頭痛てぇって。完全に二日酔いの症状だよね。
ササメ「あらら、解毒、効くかなぁ?」
ユウリ「毒じゃねぇからどうだろな。」
って言いあいながら、軽く解毒魔法をかけてみる。
すると、マックさんはムクっと頭を起こして水を飲んで
マック「あ、ありがとな。頭痛てぇのマッシになったわ。」
ササメ「どういたしまして。こちらこそ、色々お世話になったもの。あの、貰って欲しい物があるんです。いま、取ってきますね。」
私は部屋に戻って、今朝、端折りして終わらせた白い布を持って来る。
マック「ん?雪女の作った魔織布、か。これ、アンタが?」
ササメ「はい、まだ未熟なので下手ですけど、魔力の通りやすさは、そこらの品にも負けませんよ?」
マック「おう、ありがとな。ついでに、後ろの奴の視線をなんとかしてくれん?」
後ろに居るユウリを見ても、別に普通なのだけど??
振り返った時、ちょうど、ディアスさんが入ってくる。
ディアス「ああ、起きてたな。おう、ちょっとユウリ借りてくぞ。」
ユウリ「…師匠、その前に、朝食は?」
ディアス「ああ、なんだ、まだ食べてねぇのか。マスター、サンドある?…ああ、包んでくれ。後の方がいいだろからな。」
そうして、ユウリは引っ張って行かれ、ほかの人達は、屯ってたり、外に出ていったり。私は仕方なく椅子に座って、ユウリを待つ。
ササメ「ねぇ、昨日のお姉さん達は?」
マック「ああ、お店の準備とかで、帰るって。俺も、報酬の契約書貰ったらおサラバかな。」
私は、そう、と頷くと、しばらく沈黙が降りる。
ササメ「…魔核の雪女のこと、覚えてる限りでいいから、教えて欲しいの。」
マック「ああ、いいけど、大したことは話せねぇぞ。」
マックは、精神的に病んだ屋敷で囲われた雪女が、当主の留守中に、跡継ぎを誑し込み、弱らせているので、討伐を、との事で受けたらしい。
マック「ただ、印象に残ってんのは、狂ってるって聴いてたのに、会ってみりゃ、ただの自殺志願者だったって事だな。」
会った途端に、「あなたが、私を殺してくれる人?」
ってとても期待に満ちた真剣な目で見つめられ、「ああ、そうだ」と返事を返すと、とても穏やかに笑ってたと言う。
人の話も聞かず、返事もせず、クスクス常に笑うって聞いてたからな。そんなもんだな。俺が話せるのは。彼はそう締めくくった。
マック「精神的に、キツかったらメキルちゃんに相談してみたらどうだ?よく知ってそうだったしな。」
そう言って、ドアの方に目を向ける。
振り向くと、メキルさんが、こっちに来るところだった。
メキル「良かった、顔色も良さそう。悪い夢見なかった?」
ササメ「ううん、ちょっと、キツかったけど、ユウリがいたから。大丈夫。」
メキル「自分をしっかり持って。目的を見失わないで。確かに、自分の一部になる。けど、それは生きて、自分がした約束や、想いを守るため。振り回されたらダメ。」
メキルさんは、私の手をとり目をしっかり見て、そう言ってくれた。
ササメ「うん。ありがとう。」
メキルさんはニッコリ笑うと、食事を注文した。
私も、魔力の高い食事を注文して一緒に食べることにした。マックさんも、メキルさんの横に移動して、食事を注文して、色々メキルさんに話しかけていた。
食べ終わって、ちょっと朝早かったから、ウトウトしていた。そんな時、後ろから
カトリーヌ「無能な使い魔が、こんな所でのうのうと。使い魔が、主に守ってもらうなんて、本末転倒もいいところだわ。貴女が命を賭して守るべきだった。」
そんな声が投げかけられた。
エリナ「やめて…カトリーヌ。」
冷たい視線が突き刺さる。
カトリーヌ「あら、私は辞めないわよ。エリナ、だって、貴方はユウリさんに死んで欲しくないのでしょう。大体、魔物と人は違うのだから、人のふりしても仕方ないでしょう?恋人ごっこなんて。」
エリナ「やめて!!わたしは、この子と話をしたくて来たの。」
カトリーヌ「オーク化しかけたなら、迷惑をかける前に自死すべきだった。主人を巻き込む前にね!」
私は、あの時、何も出来なかった…ただ、ユウリが傷つき弱っていくのを見るだけしか…何も言い返せる訳がなかった。
マック「おいおい、ちょっと言い過ぎでねぇの?ユウリの野郎が守った命を粗末にしろってのか?あ?」
カトリーヌ「結果的に両方助かっただけでしょ!魔物と人、どちらが大切かなんて貴方だってわかんでしょ?今、どうこうしろって言ってないわ。」
マック「ああ?だったら、突っかかってくんじゃねぇよ。女だってな、あんまりひでぇ言い掛かりは容赦しねぇぞ?あ?」
カトリーヌとマックが喧嘩を始めてしまった。
俯く私の、その横で、わたしにそっと話しかけてくる。
エリナ「カトリーヌが、ごめんなさい。でも、わたし、あなたと話したくて…」
ササメ「…ユウリに…キスしてた…」
顔を合わせたくなかった。
エリナ「わたし、ユウリさんが好きになりました。でも、ユウリさん大事な人がいるからって断られて…。」
でも、諦められないんです。だって、あなた子供でしょう?それに種族も違うから寿命だって違う。同じ時を生きれないわ。それに、家族も望めないでしょう?子ども作れないのだから。
それに、雪女なら契約してるだけで、ユウリさん、常に命を狙われるわ。相手は貴女が手出しできない''人''だし。私なら、一緒に撃退できるし、子供だって望めるわ。だから、ユウリさんを大事に思うなら、身を引いて欲しい。契約魔獣としての関係に徹するなら側に居てもいい。エリナさんは、そういう内容の言葉をもって、私がユウリと別れるように薦めてきた。
ササメ「そんなの、私も、ユウリもお互い何度も悩んだわ。私がユウリの前から居なくなることだって考えた!でも…ユウリは、契約解除しないって。なら、危険なのが一緒ならせめて、目の届くところで…その為に、治癒魔法だって…。」
エリナ「だったら、私が、ユウリさんの恋人になっても良い?だって、貴女だってユウリさんの幸せを願っている。だから、私に協力して欲しいの。必要なら、契約解除の手助けもするから。」
ユウリが、他の女の人と一緒に居るのは嫌だ。でも、いつか、ユウリは…わたしと一緒にいれば、私のせいで命を落とすかもしれない。それに、私以上にユウリにとって大切な存在が居れば、私が消滅した時、ユウリは苦しまなくてすむ。でも、ただの契約魔獣としてずっとユウリの側に居るのは耐えられない。それを思うと何も言えなかった。
ササメ「…」
メキル「卑怯。…ユウリさんしだいだけど、無駄。行こう。」
グルグル思考が何度も同じところをまわり、他の事が考えられなくて、メキルさんに手を引かれる。
エリナ「確かに、ユウリさんのことを大事に思うなら身を引いて欲しいなんて、卑怯かもしれない。けど、ユウリさんに死んで欲しくないのも本当なの。ササメさんでは、悪いけど、ユウリさんを幸せにできるとは思えない。」
メキル「命を賭してまで守る存在を手放すハズない。大体、ササメがこれを受けるのはユウリに対する裏切り。」
メキルさんが顔を上げ、ドアが空いた方を見ている。そう言えば、出入り口でさっきからとどまって、気配を消してる人がいた。
ユウリとディアスさん、帰ってきてたんだ。
ユウリ「そうだね。俺が不甲斐ないせいで、ササメを悩ませる。でも、俺はササメが笑ってくれて、一緒なら幸せなんだよ。だから、エリナさん悪いけど、そこの魔物奴隷主義者と一緒に俺の前から消えてくれ。ササメを泣かせるやつは嫌いなんだ。」
ユウリが怒気を込めて言う。
エリナさんが酒場から泣いて出ていく。カトリーヌが「このロリコンめ!」って悪態をついてエリナさんを追いかけ出ていった。
ディアス「戻って早々、修羅場とか、辞めてくれよな。」
ディアスさんは、そう呟いている。
私は俯いたまま、
ササメ「わたし、泣いてない。ユウリは、エリナさんを追いかけて。泣いてたよ。」
ズキズキ苦しくてユウリの顔を見れそうになかった。
ユウリ「馬鹿な事考えてるだろ。ササメ、いい加減にしないと怒るよ。俺がササメじゃないと駄目なんだ。」
ユウリが、私の顎に手を伸ばし、顔を上げさせる。ユウリが私の顔を、じっと見る。私は目をそらし続ける。
ユウリ「俺の為を思って離れるって言うなら、俺はササメを…殺すよ。俺の手で。ササメが俺の為に苦しむのは耐えられない。」
その言葉を聞き、ユウリの歪んだ顔と暗い目に覗き込まれた時、ゾクゾクっとした。嬉しく思ってしまう私はきっと、どこかおかしいのかもしれない。
私は、微笑みユウリの名を呼んで自分からユウリに口づけをした。
ササメ「ユウリになら、いいよ。殺されても。」
ユウリは、呆気に取られたように固まり、しばらくしたら、顔を赤くして横をむく。
マック「俺、女の気持ちって一生わからねぇかも…。」
ディアス「いや、アレを基準とすんのが間違いだろ…。まぁ、あれだ、場所変えよう。マック、メキル、お昼、食べに行かんか?」
メキル「奢りなら。」
マック「メキルちゃんが行くなら行くぜ。」
ユウリ「あ!師匠、食べに行くなら、俺も行きます。ササメと一緒に奢ってくれるって、さっきの手合わせの時、言ってましたよね。」
ディアス、マック「「いや、お前らついてくるなよ!!」確かに言ったけども!」
そんなこんなで、皆と喫茶店に行くのでした。
マック「ってか、ユウリの歪んだセリフ聞いたら、エリナって娘も、恋が冷めんじゃねぇ?」
ディアス「ドン引きゼリフだったからな。」
メキル「」(コクコク)
いや、メキルさん喋ろうよ。本編でも、結構喋ってたじゃん。
えっ?もう、一生分くらい喋ったからあとよろしく?んな馬鹿な!!