ユウリside
王様「王様に会いたいってやつは、沢山いるのになぁ…。まぁ、大抵は欲塗れの人達だけど。クスクス。」
ジャン「人望がないんじゃないですか?僕も嫌いですしねぇ、アナタが。フフフッ」
王様「失礼だなぁ、もう。うーん、むしろ、欲のない強い冒険者程、謁見とかして貰って、地方を統治してもらいたいんだけどなぁ。開発とかしてもらって。」
それ、魔獣退治して、町作れって事だよね…。
ジャン「そう、だから、中途半端なやつじゃダメらしいよ。開発不可能だからねぇ。」
王様「ん?貴族に名を連ねれるし、領主だよ?上手くすれば、働かなくて済むようになるし、一石三鳥だよ?」
いやいや、それ、王様にとってだよね?要は難しい土地の開発と、強い冒険者の囲い込みと、貴族という地位で報酬が済むようにしてるだけですよね??ちなみに、税収増えればラッキー的な?!
王様「もう、解説はなんでも解説すればいいってもんでもないでしょ。ブーブー。」
えー、王様が頬ふくらませても、可愛くないですよ………。
ユウリ「え?どうして…?すぐに外せないって…王都まで来いって、どういうことです?」
それは、宴会の終わったあとの事だった。
翌日の昼頃まで宴会は続き、お開きになって、師匠や、クルスさん、それに、お世話になった、メキルさんや、マックさんにお礼を言ったり、と喫茶店の一角で寛いでいた。
何しろ、今は冒険者ギルドがごった返しているのがわかってるし、どうせ、報酬の控えの書類を貰うのも、後になるから。
その時に、ジャンさんがやってきて話があるって。
ジャン「あ、メキルさんは、門の方でそれ、もう外せるから。」
ジャンさんは、トントンと手首を指して言う。
メキル「じゃあ、わたし、これで。報酬も、もらったし。」
メキルさんはそう言って、別れた。
ササメ「あっ、私も…」
そう言って、俺を見るササメに頷く。
俺は、それに続いて、ササメを連れて行こうとしたけど、止められた。
ジャン「この街出る時にだし、君はまだ、この街を離れられないだろ?それに、その事についても、話があるしね。君達全員に、ね。」
そう言って、ついて来るように手招きされた。
そして、呼び出され、ある一室に入っての話だった。
ジャン「今回の活躍は王様が労うから、王都まで来て欲しいって事なんだ。街への損害が全く出なかったからね。」
ニッコリ笑っている。
俺は、こいつが嫌いだ。なるべく顔を見ないようにして、話を聞いていた。本当は呼び出しもついて行きたくなかった。蟠りが大きすぎた。彼が悪くないのは理解していても、感情はついていかない。
ジャン「来てくれたら、上乗せの褒賞が出るよ。それに、受取りもここより早く済むしね。」
マック「フン、俺はあそこには絶対戻んねぇよ!俺はパス。」
そう言って、マックは部屋からすぐに出る。
ディアス「俺は、王様になど会いたくない。理由はアンタも知ってるだろう。それに、面倒だからな。」
身も蓋もなく、師匠が断ってドアの前で待っている。
ユウリ「俺も、王都に行く気はない。それに、悪いけど、アンタと顔を合わせんのもゴメンだ。」
そう言って、断って師匠と部屋を出ようとしたんだ。けど、
ジャン「んー、でも悪いけど、どっちにしろ、君は、来てもらわないと、いけないんだよねぇ。その雪女のブレスレット、すぐに外せないよ?」
師匠は、肩をすくめ、部屋を出てドアを閉めて行ってしまった。
部屋には、俺と、ササメと、ジャンの3人が残ったのだった。
俺は、少し怒り気味に尋ねた。だって、おかしいだろ。冒険者としての義務は果たした。
他の魔物達だって、聖印のブレスレットを外されてる。なのに、ササメだけ外せないって。そんな馬鹿な話ってないだろ!!
ジャン「聖印のブレスレット、発動させてしまったからね。外すのに、特殊な手順がいるんだよね。」
常に笑ってるこの顔も腹が立つ。
ササメ「ユウリ、仕方ないよ。
わたしは、これついてても大丈夫だから。それに、報酬も上乗せしてくれるって…。」
ササメはまだ、回復しきってない。その一因は、このブレスレットのせいでもある。魔物達にとって弱点となる聖属性のものを身に着けているために身体に負担がかかって、治りが遅いのだ。
ユウリ「許容できない。だって、コイツに命綱を握られたままなんだ!!それに、魔力制限もかかったままだし。」
正直な所、王様に謁見とか、報酬の上乗せなんていらない。面倒なだけだし、実際、Sランクの活躍した人達は誰も行かない。師匠も断ってた。
ジャン「本当にすまない。だけどねぇ、今の僕じゃ外せないのも事実なんだ。発動させてしまったから。早く外すためには、王都まで来てもらわないと。」
大体、この件が終われば、外してもらえるって思ってたから、ブレスレットがついたままなのも我慢してた。もうすぐだって、頑張った。
ササメ「ユウリ、落ち着いて…お願い。」
ササメにこんな顔をさせたいわけじゃないけど…。
ジャン「王都まで来てくれるなら、その間の護衛と路銀はもちろん、こちらで用意させてもらうよ?」
その顔がむかつくんだよ!殴りたいのを堪えて机を叩く。
ユウリ「話にならない!!!」
頭の中を冷やすために外に出ていく。
今は、ちゃんとした決断ができそうにない。
ササメに着けられたブレスレットを外すのは絶対だ。だから、行かなきゃならないのは、わかってる。そうしないと、外せないって事なんだから。
でも、悔しくて仕方なかった。
俺は、Sランクになりさえすれば、ササメを守れる強さがあるんだって思ってた。でも、一緒に居るための最低ラインでしかなかった。
強い奴はゴロゴロ居るし、現に、ジャンって奴にはササメを逃がすことすら出来ずに殺されかけた。
ササメ「ユウリ…。」
ササメが追いついて後ろから、キュッと抱きついてくる。
その時になって、自分が震えてる事に気がつき情けなくなる。
ユウリ「ごめん。ちょっと、頭冷やしてくる。」
ササメの手を外して、俺の顔が見えないよう、深くササメの外套のフードを抑えつけてポンポンとすると、冒険者ギルドへ向かう。
笑っていても、きっと情けない顔してるだろう。そんな顔をササメに見られたくなかった。
適当に、すぐにこなせる討伐依頼を2.3枚毟って受付してもらったら、適当に屠って暴れた。
川で、返り血を落としていると、ササメも食事してきたのだろう。近くの土手に座る。
ササメ「ユウリ、王都まで行くの嫌だったら、私、このままでも…ユウリと一緒がいいし、離れたくないもの。」
このまま、ブレスレットをつけたままでいいわけ無いだろ!
頭の中が、カッとする。なのに、オレは笑っていた。
ユウリ「ハハッ。ああ!俺が守るより、あいつらの方がササメは安全だろうさ。だけど、ずっと監視されるのはゴメンだ。」
ココロがザラザラする。口の中で砂を噛んで吐き出すように、口からセリフを吐き出してしまった。すぐに後悔すんのに。
ササメ「そういう意味じゃなくて…。」
シュンと落ち込むササメ。こんな顔をさせてる自分はバカ過ぎて救いようもない。
ユウリ「ゴメン。わかってる。俺は…ハァ…。」
弱い事を拗ねて、ササメに当たったって仕方ないだろ…。何してんだか…。
ユウリ「ブレスレット…早く外しに行ってサッサと終わらそう。」
王都は、ササメが捕まってた、闇商人のいるところ。強い奴もゴロゴロ居るし、正直気は進まない。けど、俺が嫌なんだよ!!
ササメを弱らせるようなものつけられっぱなしなことも、俺からやった装飾品以外をササメが着けているのも。他の奴にササメの居場所がわかりっぱなしなのも、な。
ユウリ「師匠ー!!!置いてかないでくださいよ。」
うわぁ…微妙に涙目ですけど、ユウリさん。
ディアス「いやいや、そう言われてもなぁ…。」
うん、これは目ぇ逸らすわ。うん。
マック「ヤローに言われても嬉しくないセリフだな。ディアスさんよォ」
ディアス「まぁ、これが、女の弟子ならなぁって、違う!」
おお、ノリツッコミ入った。
ディアス「ユウリ、お前なぁ。もう一人前だろ?!いつまで頼ってんだ。」
まぁ、そんな風に師匠ぶりつつ、実はディアスさんも苦手なんですよねぇ、ジャンさんが。
ディアス「ん?解説?向こうでちょっとお話しようか?」ニッコリ
え、遠慮しまぁぁぁすぅぅうう!!ずざぁぁあ!
マック「後ろずさって逃げんなら、全然足りてねぇよ。解説。もっと、ちゃんと逃げねぇとなぁ。」
ふへぇ?ガシッ!ズルズル…
た、助けてぇぇえぇぇぇ。
ディアス「なぁに、すぐ済むさ。」ニッコリ
絶対!ウソだぁぁァあああ!!笑がくろすぎるもんんんん!!!
ユウリ「…ああなると、助からないなぁ…。助けて欲しかったのこっちなんだけど…………。」(遠い目)