表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雪女と少年  作者: 干からびた芋
152/163

ササメside

ササメ「えーん。夢なのに暗いよぉ。」

夢ぐらい、明るいの見ろよ~。

ササメ「ほんと、見させてよ。作者のバカ。」

そこ、作者にいくんだ。

ササメ「え?だって、私はこんな根暗じゃないもん。」

え?そう?なんか、嫉妬とかしてなかったけ?

ササメ「ぅぅ、だって、アレはキスされてたよね…ユウリ…。」

あ~、信じてないんだ?ユウリのこと?

ササメ「そうじゃないもん!!だけど、やっぱり、嫌なんだもん!!」

ふ~ん?

ササメ「解説のイジワルー!!」

おー、走ってった。走ってった。

ああ、そうだ。これは、きっかけだった。

そこそこ強いゴロツキどもに絡まれた。

その日は、食堂のお仕事から家に帰るところだった。

夫は、片手片足を失って、痛み止めの禁断症状とたたかいながら、薬草を採取したり、魔物との戦い方を教えたりして、前向きに頑張ろうとしている。

私は、夫が家に居る事が嬉しかった。何ヶ月も家をあけて、その間、夫は無事だろうか?どうしているのだろう?と心配しながら結界の張った部屋の中で、ただ待っている。そういう事をしなくて済むようになったから。夫が、怪我をして生死を彷徨い、それでも、生きて戻ってきてくれた。

以前のような、贅沢は出来なくなったけれど、頼りにされる事が、一緒に生活費を稼いで暮らしていく事が嬉しかった。そんな風に、思った罰だろうか?

ゴロツキどもから逃げようとするも、向こうは準備をしてきていたよようで、あっさり捕らえられた。

抵抗した。けれど、その度に蹴られ、殴られた。ボロボロになって剥かれて行く時に、夫が見えた。助けを求めたくて、でも、夫が怪我するのは嫌で泣きながら顔を横に振る。夫が必死になって助けようとしてくれた。

でも、2人とも精神的にも、肉体的にもボロボロになって路地裏に転がされた。

片手、片腕では、いくら元凄腕の冒険者でも、どうしようもなかった。夫は、最後まで、顔を逸らすこともさせて貰えず、私は彼らのなすがままだったのだから。

その日から、夫は酒と薬に溺れていった。どうせただでやられるなら、と立ち代わり男を連れ込み金をとり、家に寄り付かなくなった。口汚く罵り私を見ようともしない。

夫を何度も探した。連れ戻そうとした。お互い限界だったのだろう。私を見て!!私を独りにしないで!!いっそ…私を殺して!!私はそう、叫んだ。彼は激昂していて、私の首を絞めた。やっと、彼の目に私が映って、この地獄から開放される。そう、思って微笑んだ。だけど、彼はハッとしたように、途中で辞めて去っていった。俺を…独りにするのか?そう、呟いて…。

翌日、彼は貴族を連れてきた。彼は、自殺を禁止して、お金をもらい去っていった。可笑しくて仕方が無かった。

次に、気がついた時は、ポッカリと何かが無くなっているのが判るのに、何もかも可笑しくて。

その後は、意識が途切れ途切れだ。相手(貴族の男)が何を言っているのかわからない。いつ間にか居て、いつの間にか居なくなっている。ただ可笑しくて笑う。何が可笑しいのか、それさえわからず。時々、身なりのいい男の子が来ていたようだ。牢(正確に言えば、ちゃんと整えられた、私が外には出られないガラスの小部屋だろうけど、なぜか牢屋のように感じている。)にいる私の手を握り魔力を生命力を削ってまで渡してくる。私は抵抗せずになされるがまま、受け取る。可笑しくて、クスクス笑いながら。

男の子の冒険者がやって来る。そこそこ強いのがわかった。それさえ可笑しくてクスクス笑いながら、でも、凄く嬉しいのか、感情が昂ぶる。私は何かを言った。

マック「わかった。」

知らない筈なのに、知ってる。なぜか、その人の名前がわかる。その人の返答が頭にすっと入り、安堵の感情がかすかに広がる。

なんで、そんなふうに感じているのかわからなくて笑う。ああ、おかしなの。景色がひっくり返って、私の身体が見えるんだもの…。景色が白く消えていった。


ぼや~っと茶色が見える。可笑しくて笑う。身体の感覚が分からない。ただぼやっと見えるこれは天井だろうか?男の人がボンヤリ見える。魂がギュと掴まれて奥に引きずり込まれる。

クルス「…メ、しっかりしろ!!呑まれてんじゃねぇよ!!」

声が聴こえてくると共に、身体の痛みや、感覚が戻って来る。

ササメ「…ク、ルス…さん?」

腕を掴まれていて、その力強さに、感情が戻ってくると共に、恐怖と不快感、絶望とパニックが一気に襲いかかる。口から悲鳴が溢れ感情が理解できない。頭に手を当てられ、感情や悲鳴が溢れてきてたのが、水鏡のようにピタっと止まる。

クルス「ッタク、こういうのは得意じゃねぇから、させんじゃねーよ。」

ああ、混乱防止の魔法かな?

ササメ「ごめんなさい。あのクルスさんは、どうして此処に?」

感情が落ち着くと、疑問が湧く。

クルス「あ?オーク討伐の支援の依頼で、姐さんが来てるから、だな。ちなみに、此処は、宿じゃねぇぞ。」

そう言えば、そうだな…宿じゃない。

ササメ「あれ?私は、どうして此処に?えっと…ぁ、そうだ、わたし、宿の窓から、飛び出して、…あれ?その後??」

頭は、スッキリしても、混乱はするみたい…。

クルス「倒れたんだよ!アンタの魔力を近くで見っけたから、よって声掛けたらな…。」

ササメ「ああ、そう言えばクルスさんの声を聴いた気がする…。ありがとう。また、助けてくれたのね。」

クルスさんは、やっぱり優しい。顔は端整で怖いのだけど。ふっと笑う。

彼は眉根を寄せて難しそうな顔をして言う。

クルス「…お前、何した?魂が違うのがくっついて来てやがる。魔核でも飲んだか?」

私は、良く分からなくて首を傾げる。

ササメ「わたし、オーク化しかけて、討伐されそうになって…それをユウリが庇って死にかけて、」

泣きそうになりながら、思い返す。

ササメ「…だから、ブレスレットに魔力を流し込むことで、聖属性の魔力に変換してユウリに完全回復の呪文を一か八かでかけたの…その後、気がついたら、宿のベッドの上だったから」

急いで宿からでて、でも、ユウリが無事だった事も、自分が無事だった事もわかってホッとした。

ササメ「ユウリが無事か、確かめたかったの…変な夢見て、怖かったし…。」

夢見て怖がるとか、子供みたいで恥ずかしかった。でも、それ以上に、夢の感覚が抜けなかった事が怖くて、ブルりと震える。

クルス「なら、たぶん治療か…。それをしななきゃ生き残れなかったってとこだろう。人型ともなると、精神が壊れる可能性が高いから、普通はやらねーんだけどな…。」

クルスさんは、納得したようで、呟いている。

ジョエル「やっと、起きたみたいだね。」

外から帰って来たみたいで、いきなり気配がして、階段から、現れる。

ササメ「あの、ありがとうございます。また、助けていただいて。」

ジョエル「礼なら、クルスにいいな?拾ってきたのはクルスだからね。」

クルス「礼なら、もう、言われたよ。」

そうかいってジョエルさんは言いながら、袋をドスンと置く。

ジョエルさんは、わたしのオデコにオデコを当てて、魔力を流して廻す。身体の痛みが和らぐ。

ジョエル「まぁ、これで少しはマッシになっただろうさ。その状態で、何かあったら逃げれもしないだろうしね。」

クルス「で、これ何?」

クルスさんは、荷物を覗き込む。

ジョエル「ああ、ちょうど、剥ぎ取り始まってるから、珍しい部位だけ拝借(パクッて)してきた。」

あれ?それって、確か、功労順にわけられるやつじゃ…?あっ!!オーク討伐終わった!!

急いで立ち上がろうとして、頭を押さえつけられる。

クルス「どうせまだ、浄化してねえから、寝とけ。」

ジョエル「ユウリが気になるなら、大丈夫さね。チョビルの奴が治療してたから、無事さね。剥ぎ取り参加してたよ。」

って事はユウリ、怪我したんだ。

はやく、会いたい…。

クルス「なぁ、今スゲェ、チャンスなんじゃネェの?」

ん?何が?

クルス「え?賞金首。とっ捕まえて引渡し。」

え?まだ諦めてなかった?

ジョエル「やめとくれ。少なくとも、ディアスが敵に回っちまうのは、いただけないだろよ。」

クルス「誰だよ、そのディアスって奴。」

ユウリ「俺の師匠。ちなみに、ジョエルさんの弟子らしいよ?」

クルス「ふーん?まぁ、バレなきゃいいんじゃねぇ?」

ユウリ「俺の前でそれを言うか?」

クルス「ああ?だってお前、ヘロヘロじゃん。むしろお前も、熨斗つけて渡せるな。」

ジョエル「クルス…お前、情緒ってもんがないのかい!!私が許さないよ!!」

ジャン「えっと、それされると、僕も困るんでやめて欲しいかなぁ、なんてねぇ。」

うわぁ、出たよ。薄っぺらい笑顔。

クルス「…ダレ?オマエ?」

ジョエル「私の義弟みたいなもんさ。ちなみに、コイツからはだれも隠れられないよ。すぐ見つかる。」

クルス「え、それは、トールゥドの奴も?」

トールゥド「無理だな。本気出されりゃ、地上地中全て広く薄く調べられて、誤魔化しても、そこの誤魔化し方が不自然になってバレる。」

えっと、この間バレてなかったのでは?

トールゥド「魔力ほとんど使い切ってたからだろ。半径かなり広く、地形から、戦力から、地中の魔物の動きやらを調べて、ずっと長いこと発動しっぱなしだったみたいだしな。」

クルス「え?それ、無理じゃねぇ?」

ジャン「え?だって、出来ないと、兵士の方ワーム系とか、どうやって対処するのさ?トールゥドさん居ないんだしぃ?結界を地下にも張って誘導しないとねぇ?」

クルス「うわぁ、俺より魔力あるかも。ほんとに人間?」

ジャン「ひどいなぁ?王さんの無茶ぶりこなしてたから、きっと王さんのせいだね。」

いやいやいや、ニッコリ笑って人のせいとか、

…いや、その前に、ジャンさん、騎士団だし王さんに忠誠誓ってるんじゃ…?

ジャン「ん?やだなぁ。僕が、あの王さんに忠誠?そんなの誓うわけないじゃん。」

ハハッ、まぁ、そうかな…。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ