ササメside
ササメ「う~、ミンナ忙しいんだよね。わかってるけど、目覚めたら誰もいないの…。ユウリが手を握ってくれてるとか…誰か付いててくれるとか、期待してもいいと思う…。」
あはは。目覚める時間帯が悪かったねぇ。ユウリは来てたよ。部屋に。
ササメ「ほんと!?じゃあ、そ、そ、その…キスとかしてくれてた?お手々握ったりとか…。」
…期待してるところ、悪いけど、何も無かったよ。そういうのは。
ササメ「ふぇ…そ、そうなんだ。」ガーン
ユウリ「したかったんだけど、出来なかったんだよ。ごめんな。」
あ〜、スライムの中で寝てて、触るなって言われたもんね。うおっ。
ササメ「ユウリ!ううん、全然。…大好き。」
走って行ってユウリに抱き着きですか…あの…ワタクシ居るんで…
ユウリ「俺もだから…。」
ムシですか…泣くぞ…。ええい!2人の世界へ行ってらっしゃーーーい!!
ゆめ?…なんだか幸せで穏やかだった。
まるで、ユウリと一緒に静かに暮らしているようなフワフワした暖かい気持ち。
誰か知らない男の人と笑っている。町だろうか。
どうやら、この男と一緒に暮らしている。
場面が変わる。
男の人の片腕と脚がなくなっている。暗い雰囲気。さっきと同じ町なのに。
男の人はお酒?薬?に酔っていて、私に…って私じゃないけれど、暴力を振るう。それでも、まだ、元に戻ってくれるのではないかと、希望を抱いている。
なのに、場面が切り替わった途端に、心が凍りつく様な恐怖と絶望が支配する。
男の人は、違う男性を連れてくる。な…に?いや!!
ユウリが目の前で死にかけ、痙攣する姿がフラッシュバックする。
ササメ「い…やぁ…。」
ビクッとして身体を起こす。胸がバクバクしている。
手が震える。すごく胸が苦しい。目の前が真っ暗になるような、何か恐ろしい事。呼吸が、運動もしてないの早くなっている。真っ暗な部屋の中。夢だとわかり、しばらくして、呼吸と手の震えが収まってくる。周りを見ると、誰もいない部屋。
ササメ「あれ…私…?」
部屋の中は暗い。酒場の方から、明かりと人の気配がする。
不安にかられ、感知を発動してユウリを探す。宿に何かかけられていて、宿の中しかわからない。
ーああ。結界が張ってあるから…。
慌てて木窓を開けて、飛び出し、空中に身を投げ出す。明け方に近いのか暗さが薄らいでいる。地面に足が着くと、しゃがみこんで地面に片手をつき、再び感知を発動する。ユウリは戦線に戻って戦っている。
ユウリの存在を感じる事で、少し落ち着いた。側にいけないから…。立ち上がり、向いそうになる脚をとめる。
まだ、心のざわつきはあるけど、ユウリが生きてる。それを感じると涙が溢れてきた。ホッとすると、身体のあちこちの筋が熱を持ち、針を刺すような痛みが襲ってくる。宿に戻ろう。ボーッとする頭に、右手がオデコに自然と向かう。
ーああ。そういえば、私、生きてる。
腕の色も元に戻っていた。オーク化せずに済んだのだ。良かった。そう思ったら、脚から力が抜け、地面が迫ってくる。誰かの手に支えられる。
クルス「ッタク。何やってんだ。魔力回路ボロボロじゃねーか…。そんな状態で魔法使うんじゃねぇよ。あ、おい、寝んなよ…」
その声を、耳に捉えながら、意識は沈んでいった。
おいおい、ササメさんや?感知してて、周りに誰いるとか、わかんじゃネェの?
ササメ「だって、ユウリ以外どうでも良かったんだもの…。」
クルス「いや…そこは、感知した時点でわかっとけよ…。」
ササメ「クルスさん!お久しぶりですっ。」
クルス「おう。久しぶりだな。ほんと。」
クルスさん、騙されちゃいけませんぜ?コイツ、ユウリ以外どうでもいいって言ってやしたよ?
クルス「いや、そこはどうでもいいけど、感知してて、周りの状況確かめてねぇのはダメだな。」
あ〜、ダメなの、そっちかぁ…。
クルス「俺だって、姉ちゃんと姐さん以外どうでもいいからな。」ドーン
あ〜、使い魔ってそんな感じなのかな…ワタクシだったら、知り合いには、少しは気にしてたって言われた方が嬉しいけれども…。