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雪女と少年  作者: 干からびた芋
139/163

ジャン、全てを知る。5

クルス「なぁ、ここにいる女、ほんと誰?儚く消えそう?はぁ?」

ク、ク、クルスさん!勇気ありますねー。

クルス「いや、だって、解説よ、これ、おかしいって。どうやったらコレがあの姐さんになるんだ?」

年月って恐ろしいよねぇ……。

ジョエル「ほぉ?2人ともお仕置きして欲しいみたいだねえ?」

がし!がし!

ハッ!つい乗せられて、違う!コレは違うんです!!

クルス「違うくないよな?死なば諸共!逃がさねぇ。こうなったら逃げれねぇしな……」

つーか、クルス!お前があんな事言わなきゃ……ァ

「「ガピギャャャャャアア!!」」

次に覚めた時は、ベットの上だった。相変わらず拘束はされていたが。

傷も、すべて治されていた。

女が「済まない。」そう言って、泣き崩れた。

お前は、ノラスキーの弟だったのだな。

よく、私の髪色と同じだと言っていたのに…。

ひとしきり、嗚咽を漏らして、後ろを向く。

「ノラスキーの、何を知りたい?」

「僕は、兄が優しかった事。僕とは容姿が全然違ったことしか覚えていない。兄は、僕を貴族の家に置いてきたとき、必ず迎に行くからって。そう言ってたから、ずっと待ってた。兄は僕との約束を守ろうと、いつもしてくれてたから。」

スラスラと言葉が出てくる。涙で視界が歪む。

「ほんとに…死んだの?僕を置いて?」

「あいつは、バカ野郎だ。あいつだけなら、いつでも逃げれたのに!!」

アイツは、騎士団にだって誘われてた。私らと一緒に、騎士団になるから問題ないってそう言って断ってた。討伐隊の包囲網だって、仲間を見捨ててりゃ、抜けれたんだ。私には逃げろって、お前だけなら抜けれるって。

それは、あいつにだって言えることだった。私は、仲間を置いてなんて逃げれるか!!って怒鳴った。あんたは残るつもりだろうって。

仲間がどんどん死んでくなか、誰も助からないってなった時、アイツは、仲間を一人でも多く助けるために、自分を囮にして、討伐隊を集中させて、自爆しやがった。……クレーター、みにいくか?もう、何も残っちゃいない。でも、その、爆発の大きさぐらいはわかる。無事でいられなかった事もね。討伐隊の方だって中心地には何も残っちゃいなかったんだから。

思いの丈をぶつけるかのようにひとしきり、そう言った後は、抜け殻のように女はポツリポツリと吐き出す。

隊長がさ、よく訓練サボってたから、私が連れ戻す役だった。

よく髪を触って、弟と同じで綺麗な髪色だって褒めてくれた。

魔物討伐で、私が危なかったとき、普段はおちゃらけてんのに、真剣に怒られた。

他の奴の悪いところをよく指摘して直してくれた。

誰よりも強かったんだ、訓練サボってたくせに…。

………。

………。

そして、語ることがなくなったのか、女はじっとしている。

僕は、聴かなきゃよかったと思った。

女の人が儚く消えてしまいそうな気がした。

この女の人を死なせたくなかった。あんだけボロボロにされたのにもかかわらず。

僕は結局、誰かの掌の上で踊っているのだろう。

兄がいいように転がされた様に。

でも、仇討(ふくしゅう)を止める必要は無かった。


アイツは、俺たちと同じような奴が出ないようにして欲しいって。途中で会った、冒険者の少年達は、僕らと同じ道を歩まないだろうかって、心配してた。

復讐なんて、あいつが一番望んじゃいないのも…アンタを巻き込んじまって、済まなかった。

そう言って女はふらりと出ていった。

仇討を考えていたのに、僕のために辞めてくれたのだ。僕の存在が足枷になった。

結局、すべて、あの王に見透かされて、踊らされる。そのことが、悔しかった。


後で開放されて、何も手につかずにぼぉってしてた。家族に、別れを告げるとき、少し心配されたけど。

遠征の日が来て、5年間。

そこで、目の前のクレーターを眺めながら過ごした。見張りの櫓から十分に見えたから。

時々出る地中魔蜘蛛やウェアウルフの魔物を刈りながら。

休憩中の時は、時々、盗賊の御姐さんと隠れて話をしていた。本当は、捕まえる対象だったけど。兄さんの色んな話を聴かせてくれた。お蔭で、念話が上手くなったし、感知もかなりの広範囲を使えるようになってしまった。

何故か、盗賊の御姐さんに訓練まで受けさせられて厳しく指導されたのだが。(兵役の訓練をサボったら何故か現れてっていうか、すぐバレんのはなんでだ?!!一応、隠れてんだぞ?)

ジョエル「あのさぁ、アンタら行動似すぎ。隠れるところとか、隠れて訓練しようとするところとか…。」

ジャン「に、兄ちゃんに、似てる………。」

その、ニコニコ能面顔で、感動するとか、わかりにくいんで辞めてもらえます?

ジャン「だって、兄ちゃんの指導の賜物だからねぇ。」

はぁ。貴族の家族もさぞかし感情が判りにくくて困っただろうねぇ……。

ジャン「僕は、下手くそだからすぐバレてたよ。妹なんて、僕が感情を揺らしてたら、ソッコー気づくし、つくづく、教えを実行できてないなぁって。」

いや、それ、妹さんが特殊では?

ジョエル「いや、隊長より、ぜったい、可愛(からかいがいある)いねぇ。隊長の時は、からかわれてばっかだったから。」

王様「ねぇ。感情ぜんぜん隠せてないよねぇ。わかりやすすぎだよぉ?」

ああ、特殊な人達が集まってるから……。つーか王様、ここ出てきちゃダメでは?

ジョエル「ここであったが百年目!!」

ジャン「ストップ!気持ちはわかりますがダメですよ?コイツは死ぬのがご褒美みたいですから。」

王様「失礼な。そこまで壊れてないやい。たぶん。」

王様……そこ、たぶんデスカ……?

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