ジャン、生い立ち
脇道なので、一気投稿しちゃおうかな?なんて。
まぁ、ジャンくんの薄っぺらい人生が
ジャン「ん?薄っぺら?そうかなあ?へぇ?解説さん、覚悟はあるの?」
ニッコリ、その笑顔が胡散臭い。
えー、ジャンさんの濃ゆい人生が詰まっております。(棒読み)
僕には、歳が少し離れた兄がいた。生まれ堕ちたのは娼館で、父親がいない。産んだ女は僕らのことは、ほぼ放置だったのだろう。何しろ、全く記憶がないのだから。それでも、食住がなんとかなったのは恵まれていたのだろう。
生みの親が病気でなくなると、僕らはすぐにスラムに馴染まなくては生きていけなかった。兄は、俺の事をよく面倒見てくれた。もう、ちゃんとはっきり思い出すことはできないけれど、外見は全然違った。けど、僕は兄の事がとても好きだった。兄はたまに、怪我して帰ってきても、俺の前では隠そうとしていた。実際、飛びついたりしなければ、気づかなかっただろう。俺に、苦労させないように、また、必要だと思うことは、根気よく色んな事を教えてくれた。
貧民窟、その最下層。危険だから、兄は緊張しながらも、笑顔を崩さず俺を連れてって、死にかけの、全てに絶望している男を見せに行った。
そして、もし、危険が迫ったら、抵抗するな。泣くな。一切を諦めて、この顔を浮かべておけって。特に、眼を覚えておけ。ってそう言った。
大抵の奴は、この顔を気味悪く思う。そして、そんな奴に構いたくはない。
それから、いつも、笑っておけ。特に、相手に眼を見せるな。動揺した時は特に眼を見せるな。交渉する時は、相手の眼を視ても、自分の眼は相手に晒すな。そう、教えこまれた。兄は食事や衣服を何とかするために、側に居なかった。
兄も、自分が、生きてくために必死だったのに俺を抱えてしまっていた。冬には、衣服を剥がれ、食を奪われボロボロになり、お互い死にかけたこともあった。
兄だけなら、相手をやっつけて終りだったかもしれない。けれど、僕がいたから、抵抗しなかった。
お互い助けようとはせず、兄に言われたとおり、死んだように成すがままにされていたが、相手は気味悪がり命まではとられなかった。
もっとも、そのあと兄が地下道に連れていき、お互い引っ付いて過ごして、なんとかしてくれたのだが。
感情を制御する事を徹底的に教えこまされた。子供に教え込むのは苦労しただろうに、出来るまで、根気よく。今になって思うと、兄は、かなりヤバイ仕事もこなしていたのだろう。
かなりのお金を溜め込み、情報を買っていたのだから。
ある日、俺と兄は、宿に泊まった。風呂にも入り、服も、かなり上物を着せられた。それまで、お前は綺麗にするな。特に、顔と髪は汚くしておけって言っていたのに。だから、いつも、顔には泥や、黒ずみがついたままだったのに。
ある屋敷の前に行って座り込んでいろって。
いつか、必ず迎えに来るからって。
いいか?屋敷の前から動くな。んで、笑っていろ。何を聴かれても、兄を待っているからって答えろ。
お前は、まだ、幼いし、顔もいい。あの屋敷の人間は、善人が多い。悪いようにはならない筈だ。
養子を欲しがっているらしいからな。
その時は、よくわからなかった。でも、兄が迎に来るなら、待ってればいいのだ。
ただ、笑って。
3日間屋敷の前で動かずにじっとしていた。屋敷の人間が、ここから、離そうとしたり、話しかけてきても、笑顔で、兄を待った。時々、屋敷の人が、食事を持ってきてくれたけど、食べなかった。
兄が迎えに来る、そう信じて。
屋敷の住人は、とても、いい人達で、俺が寝ている時に、屋敷に運び入れてくれて、色々、世話を焼いてくれた。
そして、息子にならないかって聞かれた。
私達には子供がいないから、私達の子供になってくれたら嬉しい、と。どう、答えていいか分からなかった。兄を待っているから。
それを、笑顔でいい続けるしかなくて。
でも、そこの人達は、ずっと、ここで暮らして、待ってくれてていい。ただ、わたし達と、繋がりが出来るだけ。嫌なら、いつでも、破棄してくれてかまわない。
そう言われて、久々に泣いてしまった。
その日から、俺は貴族になった。
兄は、相変わらず、迎えに来なかった。
俺には、大切な人達が出来た。親に恥をかかせたくなかったし、恩がある。
いくら、子供に恵まれなくても、こんな身元のわからない子供を拾わなくても、いくらでももっと、身元のはっきりした養子を持てただろう。
もしかしたら、暗殺ギルドの刺客かもしれない、気味の悪い子供を拾わなくても、だ。
後で、妹もできた。俺に懐いてくれた。どう接していいかわからなかった。
親も、愛情を注いでくれて、養子が原因でイジメられても、平気な顔して貧民窟にいた時のようにやり過ごしていたら、僕のために、怒って、泣いてくれた。
妹も、かなり怒って、どうして、ヤラレっぱなしなの!黙ってたの!って泣きながらポカポカ叩いてきた。
貴族達の通う学園。そうして、手を抜いているように見せて、影で努力をしていた。表立って努力すれば、目をつけられて厄介だし、そこそこの高成績を修めつつ、のらりくらりとしていた。
そんな時、あの王様に会った。
「へぇ~、君が、ねぇ。よく似てるや、雰囲気が。」
どこか、違う学園からの転入か、何か、かなって思った。意味ありげな言葉を言う。
「君が、この学園を卒業したら、ある隊に、早速配属させよう。早く、君を手元に置いておきたいね。」
初対面で意味不明な言葉を並べる、子供。僕の王様に対する第一印象だった。