ササメside
ササメ「ユウリのバカァァァ!!!」
ユウリ「グヘェー!!」
みごとなスクリュードライバー…ユウリ…飛んでったよ…。
ササメ「ちょっと八つ当たり。ここなら怪我してもすぐ治るし。ね?」
あ〜、展開がウツだもんね。
ササメ「あ〜、あ〜。聴こえない!!」
耳抑えて、声出しって、まるっきり子供だな。
ササメ「か、解説のバカァァ!!」
グヘェー!!
ササメ「…自分でも思ったけど、そこは突っ込まないでよ…。」
お、顔赤くして涙目。
ユウリ「可愛いらしくって俺は好きだな。そういうとこ。」
おお、ユウリは耳元で囁き攻撃。
ササメ「ひゃぁあ。」ペタン
これはクリティカルヒットの模様。
ササメ「もぅ、もぅ、ユウリのバカァ…。」
2日目の今日は、患者が多い。疲れも溜まってきているのだろう。治療ついでに、疲労回復もかけておく。
冒険者達や兵士たちの腕がちぎれてたり、骨が折れてたりするのを見る度に、ユウリは大丈夫だろうかと不安がよぎる。
こんだけ多くの患者を治しているのに、魔力切れが起こらない。悪い魔力を中心に、使いづらいけど使っていた。患者を治しているのに、魔力が流れ込んで纏わりついてくる、暗紫色の魔力。魔核にも絡みついて溜まっていく。不安な心が増す度に、奥へと潜り込んでくる
もう夕方にさしかかろうかという時、休憩を言い渡され、メキルさんの悪い魔力をある程度奪って、その場を離れた。魔力を、涙晶石に封じこめようと建物の影に入り込んで、綴じ込めている途中、ユウリの気配を感じて、嬉しくなった。
声をかけようとした時、知らない女の人が、ユウリに話しかける。ユウリも、まんざらではない感じで、笑いながら答えている。まだ、胸が痛むけど、そこまでなら、ユウリだって、冒険者としての付き合いだってあるだろうし、我慢できた。でも、女の人が、ユウリにキスを…。途中で見ていられなくて、逃げ出した。
胸が苦しい、嫌だ、あの女の人が嫌だ…!!痛い、嫌だあの女の人が居なければいいのに!
ユウリが奪われるのなら、そのマエ二、ウバッテシマエ…。違う!!ニクイ…苦しい…目の前が真っ暗になっていく。イノチヲウバワレルマエニ、ウバッテシマエ。ちがう!…ニクイ…ちがう!コロシタイ。ちがう!違う!違う!違う!!
ジャン「あ~あ、残念。オークに成らずに保ってくれたら、こんな事しなくて済んだんだけど、ねぇ。」
後ろから声がして、その場から直ぐに退く。風が背中をすっと抜ける。
ジャン「おお、いい反応。だからこそ、オークに完全になる前に殺っておかないと、ね。」
その、抜けた辺りから、一気に痛みが駆け抜ける。あの場から離れていなければ、今ので、首を落とされていただろう。肩口から深く斬れている。痛い。苦しい。嫌だ。まだ、死にたくない。そう思う気持ちが、さらに暗紫の魔力を絡み付かせる。
…コロセ!コロセ!ヒトヲコロセ…イノチヲウバワレルマエニ、ウバッテシマエ…嫌だ、嫌だ!意識を乗っ取られたくない。身体の自由が意思が奪われていく。
ジャン「残念だけど、オーク化しかけた魔物の結末はもう決まってるんだ。」
そう言って、金髪の男の人は何かを唱えて何かを砕く。
意識が、一瞬にして目の前が白くなる。強烈な痛みで、地面にくるまって倒れ込んでいた。内部から一気に強烈な痛みと痺れでまともに動けない。ブレスレットを着けていた腕から白い魔力で侵されていた。息が詰まる。死にたくない。でも、自分の意思が塗り潰されずに、オーク化せずに済むことに、ほっとする自分もいた。
ジャン「ごめんね。」
そう言って男の人は剣を振り下ろす。
ユウリ…ごめん、今まで振り回して…。諦めて目を閉じた。
なのに…体の自由を奪われている痛み以外、何も感じない。来るはずの痛みも、衝撃も…。
頬に、温かい何かがポタポタと垂れる。
ユウリ「勝手に諦めんじゃねぇよ。最後まで…足掻けよ。つーか、やっぱり俺より先に逝くんじゃねぇ!…っ」
声が、ユウリの声がすぐ近くから聴こえて…目を開く。剣先から、血が垂れている。ユウリの身体を貫いて…。
金髪の男は、ユウリの攻撃から逃れつつ、ユウリに刺さった剣を引き抜く。
ユウリの身体から大量の血が溢れ出す。ユウリが片膝をつき、体勢を崩すも、直ぐに立とうとする。
ジャン「冒険者なら、知ってると思うけどさぁ。オーク化しかけた時点で、即処分なのは知ってるよねえ?むしろ、見逃したり、庇ったりすると罪になるのわかってる?」
見ているものが信じられなくて、頭に何も浮かばない。ユ、ウ、リ?
ユウリ「他の魔物なら、容赦なく処分するけど、コイツだけは別でね。コフッ…殺すんなら、俺を殺してからにしてもらおうか…。」
どうして…こんなの…いや…。
ユウリが咳き込み、口から血を吐き出す。
止めようと、声を出したいのに、息だけが掠れて出ていく。
「へぇ?魔力切れのその状態でまともに動けないでしょ。それに、その傷だと、ほっといても死ぬしね。」
嫌だ!ユウリが死ぬのは…それだけは嫌だ!お願い、体!動いて!動け!!…私はどうなってもいい!だから、今だけは!
ササメ「…ィヤ…だ、め…。ゆう、り…の、いて…お、ね、がい…。ま…だ、いま、なら、た、す…」
ユウリ「俺だけ!!…助かってどうするってんだ…好きな娘見捨てて生きろって?ふざけんな!!」
「まあ、そういう事なんで両方殺らなきゃいけないみたいだけど、ご両人恨まないでねっと」
男が私を狙い、それを庇ってユウリが傷を増やしていく。ユウリが追い払う為に攻撃をするも、相手は余裕で反撃する。そうしてユウリが私の上に倒れ込む。こうなる前に私がユウリに何を言っても、無理だった。ユウリは私の前から、退かなかった。
トドメを刺される前に無理やり動いて身体の上下を入れ替えユウリと剣の間に滑り込ませる。私の身体だけで留まらず、ユウリにも剣が深く刺さる。
ジャン「へぇ?こんだけ締め付けてもまだ動けたんだ。感心するよ。まあ、これで終いだけど。」
そう言って男は剣を、傷口を広げるようにして引き抜こうとする。ユウリの口から血がゴポリと溢れる。ユウリの身体が痙攣している。
イヤ、嫌々!!…私が死ぬのは構わない、でも、ユウリだけは死なせたくないの!お願い、神様!!
ブレスレットから流れ込む魔力を無理やり身体に巡らし、歯を食い絞る。魔核が悲鳴をあげ、さらに罅割れていくのも構わず、ユウリに完全治療をかける。治療が成功するかどうかもわからない。生命力も魔力に変換し使える魔力を全て注ぎ込んで、呪文を唱えた途端、真っ白な光の洪水が津波のように通り抜けて、意識を手放してしまった。
ユウリ「え?俺かなりヤバめ?死ぬの?」
いや、だから展開欝だからって最初に言ってんじゃん。
ユウリ「さ、ササメは?これ、せめてササメは助かるんだよな?」
つーか、お前ら死んだら話シューリョーだから。多分ないから(笑)
ユウリ「たぶん?たぶんって何だ!!助かるんだよな?」
さぁ~(笑)そこは察してくれや?な?
ぶへぇ!!な、何しやがる!!いきなり殴るなんて!!
ユウリ「いや、つい。ドヤ顔が腹たって?」
なんでソコ疑問形!フンヌー!!(怒)