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雪女と少年  作者: 干からびた芋
118/163

メキルside

あれ、時間戻ってない?

ディアス「部屋に戻る前の事だな。…戻ってる。」

ダヨネ…。もういやや…。話進まん。(泣)

隔離された酒場で、チマチマと酒を飲んで時間を潰していた。どうせする事もない。

人の言う事聞かなきゃ処分されるだけだ。

今の状況は不本意だけど、理解出来ているし、一応、このブレスレットで守ってくれてもいるのだ。いきなり問答無用で殺されないだけマッシだろう。

ここを取り仕切ってる奴に呼ばれた。仕方なしに入口まで歩みよる。

治療頼まれるのかと思いきゃ、そっちは、チビな雪女がしている。知り合いなのか、話しながら。

リチル「頼まれてた事だけど、治療薬作るだけじゃダメかな?正直な所傷口とか触りたくない。」

どうせ黒っぽい魔力が傷口から漂っているだろう。前に偵察の人戻って来ての治療、頼まれてした時、そうだったから。

離れておきたい所だ。オーク化したくないのだし。

ディアス「薬草から作るのはもう、事前にしてもらったし、感謝している。その上で、作戦が開始された時の治療も頼みたいんだ。わりぃが協力してくれないか?」

メキル「……。」

この男は、頭を下げてくる。もちろん、薬草の分はお金は貰ってる。協力してくれたから、これ以上は頼みづらいけれども、って言ってるから後ろめたさもあるのだろう。だから、強制ではなくお願いなのだろう。

他の奴なら、多分、上からブレスレットを外して欲しけりゃ言うこと聞けって言われたんだろうな。

少なくとも、昔のご主人様はそうしただろう。

何しろ、こんなセリフを吐く人だったから。

「すぐに死ぬスライムを、養ってやってんだ。役に立ちやがれ」

って、そう言ってた。まあ、確かに拾って貰ってテイムされなきゃ、強く成れなかったし、こうやって思考をし、人型になれるまで成長する事もできなかったろう。生き残れない事も事実だったし。

ご主人様は嫌いじゃなかったけど、少なくとも、頭を下げたことは一度もなかった。歳をとって冒険者を引退した後も、ずっと、冒険者として金を稼ぐようにご主人様が死ぬ時まで命令していた。褒めてくれることはあったけど。

自由になってから、こっちに流れてきた。自然に戻るのも出来そうにないし、かといって、新しいご主人様に仕えるのも、街の外で暮らすのも、嫌だった。人と暮らせる場所が、この地方だったから。

メキル「どうせ、言う事聞かなきゃ、いけないんだから、命令すりゃいいのに…。」

ポツリと小声で言うと、聴こえたのか、

ディアス「強制したくない。嫌なら、嫌で構わない。手伝ってくれるなら、助かるがな。」

と言った。

メキルは、こういうのが苦手だった。与えられた命令に対して考えるのは、得意だ。でも、選択権そのものを委ねられた事がなかった。だから悩む。きっちり断ることもできない。

メキル「…困る。そういうのは。慣れてない。」

下を向いてしまう。

ディアス「あ〜、まあ、気楽に考えてくれ。嫌だから、断るのも一つの手だ。断るなら、それ以上は言わない。」

ディアスさんは、頭をポリポリ描いている。

メキル「必要なのなら、命令してください。その方が気が楽です。」

隣で、知らない若めの冒険者の傷を治し終えたチビの雪女が、ピョコと立ち、こちらに割り込んできた。

ササメ「ディアスさんのバカ!やり過ぎです!こんなにボロボロにするなんて…。」

涙目で詰め寄るチビ雪女。

ディアス「お、おう。えっ、いや、ユウリがよけねぇのが悪いだろ。大体、修行だしな…。」

タジタジのディアスさん。チラッとユウリの方を見て目が少し驚いていた。私もそちらを見ると、綺麗に怪我が治ってるし、服も綺麗に血を落としていた。

けっこうボロボロだった気がするけど…そんなに酷くなかったのだろうか。

ササメ「だったら、私もその場に!せめて、次から連れてってください!」

ディアス「お、おう。」

ササメ「絶対ですよ!」

ディアス「あ〜、ところで、ササメ、今回の魔物の暴走の件で、こっちに流れてきた場合、冒険者の治療、お願いしてもいいか?」

ササメ「いいですよ。どうせ、討伐には参加出来ないでしょうし…。ユウリも怪我したらそこで治療受けるのでしょう?」

不安そうに俯くチビ雪女。

ディアス「あ〜、ユウリが早々怪我したら困るんだが、まあ、そうだな。」

ササメ「だったら、断る理由ないです。」

私は、この短絡的なチビ雪女が心配になった。

メキル「傷口から、悪い物が漂ってくるから、オーク化しやすいかも…。それでも、受ける?」

自分が不安に感じてる事を雪女にぶつけてみた。

メキル「私は、怖い。でも、この地方以外、行くあてもない…。」

ササメ「冒険者が、やっつけてくれて、ちゃんと大丈夫だと思う。それに、何もしなくて、魔物に突破されたら?それでオーク化しちゃう方が嫌だな。」

事も無げに、そう言い切るチビ雪女。

メキルは、すごいなあって思った。自分の意思を押し通す、決めれる強さがそこにあったから。

ディアス「ササメ、メキルが治療薬を出してくれるから、それも使ってくれ。体内で保管してくれている。あ、怖けりゃ、治療場に置いててくれていいぞ。」

メキル「ううん。ち、治療も、手伝う。私も…何もしなくてオーク化するのは嫌だから。」

人から提示された選択肢、それに初めて、自分から答えを出した。

どう転ぶかわからない。それでも、少し、自分が成長できた気がした。

魔物、早うつこっませろよ!

ユウリ「え!来ない方がいいに決まってんじゃん!」

もう、フラグ建ってんだよ。回避不可なら、早う終わらせて…。

ディアス「心配せんでも、もう来てるから。」

ユウリ「え!心の準備が!」

とっくに済ませとけぇぇぇええ!!ボケェ!

ユウリ「ひどっ!!」


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