ユウリside
えっ、で、ディアスさんには会いに行くの?
ユウリ「会えたら、ちゃんとお礼だね。」
ササメ「うん。でも、場所とか情報が入ってこないんだよね?」
ユウリ「情報屋のツテがないからね。そういうの、持ってたら良かったんだけど…。」
ササメ「まぁ、会えたらで、いいんじゃない?」
ユウリ「うん。まあね。向こうも噂ぐらい聴いてるだろし。」
あ~…。ユウリ達は確かに噂立てまくりって感じだからなぁ…。
ユウリ「う''…わざとじゃないんだけどなぁ…。」
会ったら、ユウリは早速説教じゃないか?(笑)
ユウリ「…何か、お腹痛くなってきた。」
そこ、胃じゃない?
ユウリは、ノライトス地方に向かうことをササメに伝えた。もちろん、ディアスに会えるかどうかは運任せな事も。
ユウリ「一度、ササメと元気な姿を見せておきたいんだ。色々、お世話になったからね。」
そう説明すると、ササメは、ふわりと笑って、
ササメ「うん。今まで中々、色々あって、すぐに会いに行ってたら迷惑かかってただろうし、でも、ちゃんとお礼と挨拶はしたいものね。」
そう言って、一旦切ると、少し申し訳なさそうに、
ササメ「…少し遅くなっちゃったけど。」
俺は、ササメの側により、抱きしめながら言った。
ユウリ「事情が、事情だし、わかってくれるさ。それに、ジョエル姐さんの事も伝えられるしね。」
ササメは、背中に手を回し、キュッと力を入れて、俺の胸の音を聴いているかのような体勢で、
ササメ「うん。そうだね。」
目をつむってそう言った。実際閉じていたかはわからないけど、腕に当たる睫毛が動いていたから。
風は、もう、少しも冷たくなく、少し 心地いい。
町の衛兵が、少し呆れた感じで
「おい、そこの兄ちゃん達、兄弟で仲いいのはいいけど、程々にしとかんと、恋人ができんぞ。」
お揃いの外套を被っているからか、そう声をかけられる。
順番が回って来ていたようだ。町に入る為の列に並んで居たのだ。俺は自分のフードをとり、ギルドカードを提示すると、ササメが使い魔だとすぐにわかって、
「なんだ、兄弟じゃないのか。はいよ。」
もう、お互い慣れた手つきでサッと書類を書いて町に入る手続きをする。
とりあえず、久しぶりの宿に泊まれる。一週間と少しぶり。大きな街にはよらずに、点在する小さな町や村を通って、遠回りする事にしている。
大きな街は、目をつけられやすいから。
これから、ディアスさんに会いに行こうっていうならなおさらだ。
中に入ると、早速、朝市が目に入る。適当に物色して、パンを買う。広場の井戸の近くに座り、ササメとパンを食べる。こういう行動をとっておけば、ササメが雪女だって発覚しにくいから。フード被って完璧隠してるし、食事もさせているから。
使い魔っていうのは、人によってはすぐにわかってしまうけど。
馬を預け、ササメと別れて、ギルドに向かう。まだ、宿をとるには早すぎるので、予約だけして。
冒険者ギルドにて、サッと依頼を受けて戻ってくると、ササメは、柵に身体を預け、のんびり動く魔牛を眺めていた。
依頼は、魔牛にストレスを与えないよう注意しながらの搾乳。依頼主に会って、話を聞いて。
まぁ、蹴られたり、角で攻撃されたりしても、対処出来るだけの実力、もしくは、普段から慣れてて蹴られたり角で攻撃されたりしない技術を持ってる人のどちらかしか出来ない上に、この辺は同業者しか居ないので、手伝いして欲しい時は、皆同じなのだとか。
それでこういう依頼が出されるけど、この町の冒険者は、ほとんど、この作業が嫌で冒険者になる人が多いらしく、受ける人が少ないのだとか。
というか、技術は持っていても、小さい頃から手伝わされ、何度か蹴られ痛い思いもしたりしている人も多く、トラウマになっているらしい。もっとも、魔牛も、人間に世話になっているのがわかっているので、本気では蹴らないらしいのだが。
お陰で、確かに死人は出ないのだとか。(骨折迄はあり。)
まぁ、危険で人気がない代わりに、金額が少し多めになっている。
逆に、乳をよく出すための薬草採取等の方が金額が少ない割に人気らしい。
町の中で済ませれる依頼でよかった。こんな町に変な人は入り込みづらいし。目立つので。
裕福な町のようだ。働き口は何らかある。道は舗装されてはいないけど。
そのおかげで、気を張らずに 依頼をこなせた。いつぶりだろうな。
ササメものんびり出来た様だ。何故か牛に好かれ、舐め回されていたが。フードも外れるので、だいぶ前の俺の妹の姿に見せていたけど。
「うわぁ。ベタベタ。」と言いつつ、嬉しそうだった。すぐに魔法で綺麗にしていたけど。
なんとか、慣れない搾乳依頼を終わらせ、宿に戻って、翌日も、同じ依頼をこなして 終わらせ、2度目だからか昼過ぎには終わって、この町を出たのだった。
で、結局会う気ある?
ユウリ「の、のんびり行く予定だから!」
して、その心は?
ササメ「あ、あのね、急いで行くとなると大きな街とか通らないと行けなくなるし、刺客とかで、却って時間かかるかもだし…。その、決して、その説教が怖いとか、そういうのだけじゃ…。」
いや、ササメちゃんが焦る必要ないからね?
ササメ「うぅ。解説、うっさい。」
うお、ここに来て、行動が幼児化か!頬膨らませて、言い返せないから、うっさい!とか。(笑)