ササメside
リチア「もしかして、あの恋愛譚、好き?」
ササメ「うん、何度かねだってお話聴かせてもらったから。」
リチア「…そう。人と龍。お互いを守るために、お互いに一番大切な情報を交換し、たがいを助け、その信頼の末に、龍玉を渡して、人と龍共に、命を落としかけた時に、龍玉鱗が再生し、人は龍玉のお陰で助かり、なんとか敵を討ち取った。結構、長いお話だったけど。」
ササメ「龍玉鱗は、生まれた時から、失ったら1度しか再生しない貴重な鱗。」
ササメちゃん、うっとりお話想像してるね。
リチア「(…あれ、美化されすぎて、実際はそんな綺麗な話じゃないんだけど…。)」
まぁ、知らぬがホトケ?で、いいんじゃない?
探知したリチアさんの方へ向かう。
リチアさんと、ちゃんと向かいあって話が出来るといい。リリックさんは、どんな人なんだろうか。
ササメ「ねぇ、ユウリ。この件ってリチアさんが、元気な人型の姿を見せれば解決する気がする。」
ササメはユウリに呟いた。
ユウリ「確かに。俺ら、することないかもな。」
ササメは考える。一旦、首を縦に振りかけ、止まりまた、考え込む。
その後、どうするんだろう。使い魔契約?でも、リリックさんはSランクじゃない。少なくとも町に住めば、噂がたち、普通に暮らしていけなくなるのではないだろうか。私達みたいに…。今まで通り、リリックさんが通うのであれば、知ってしまった冒険者一部とギルドマスターが黙れば今まで通り暮らしていけそうだけど…。
ササメ「…リチアさんとリリックさん、ちゃんと話し合いしないとダメだよ…やっぱり。」
小さな小屋が見えてくる。
それと、リチアさんの出迎え。ユウリと私がリチアさんの前で止まる。頭を下げて挨拶をしながら、
ユウリ「リチアさん、リリックさんは此処へ来た?」
ササメ「誤解を解く前に、リリックさん飛び出しちゃったらしくって。」
二人で矢継ぎ早に、現状を説明する。
リチア「まだ来てないけど、来てる。」
リチアさんはのんびり答える。リチアさんは視線を一定の方角に向けた。
ユウリ「?」
ユウリの探知圏外なのか、魔力が少なすぎて気づいてないか、ユウリはリチアさんの見ている方へ視線を向ける。
ササメ「ああ、森の中に入って来てるのね。」
魔力が、かなり少なすぎて、わかりづらいけど、方角的にはこれだろう。目を閉じて集中しないと、野生魔物(小物)と区別がつきにくい。
ササメ「えっと、リリックさんってもしかしなくても、GとかFランクだったり…します?…あと、リリックさんに鱗渡してません?僅かに、出ている波形、どう感じても、リチアさんの…。」
私は、やばいんじゃ無かろうかと思った。だって、初期ユウリが、私抜きで開拓村の山に分け入って行ってるようなものだったから。
リチア「そう。魔除け代わり。でも、そこまで効果ない。」
リチアさんはそう言いながら、リリックさんの方に歩いていく。その行動を見て、確信に変える。
ササメ「ユウリ!ちょっと、私、急いで迎えに行ってくる!」
リチア「大丈夫。リリックは、足は速いから。」
リチアさんは、私が何を心配してるかわかった上で止めた。
ユウリ「あの、ここの山一応、Cランクくらいないと、下手すると死にますよ?」
ユウリも、どういう状況かわかったらしい。
リチア「リリック、確かに弱い。でも、逃げる時の瞬間判断力と俊敏さだけなら、信じられる。」
でも、リチアさんも歩いて向かうところを見ると、凌げるだけ。そういう事だろう。
リチアさんに合わせて歩いて、3人で向かう。私はついでに、食事もしていく。
歩いていると騒がしくなってきて、魔物を切りつけて逃げる冒険者が、こちらを見て固まる。
震えて泣き崩れる男。
そのままだと、冒険者が死んでしまうので後ろの魔物を凍らして一気にカタを付ける。
男の硬直が取れると、大きな声で、
「り、リチア!!無事だったんだな!?」
涙を流しながら、ホッとし、駆け寄る男。
でも、私は、リチアさんと男の間に立ち塞がる。
ササメ「待って!その前に、リチアさんに謝って!」
私は、冷たく男を見下ろし、氷で即席の刀を作り、男の首筋に添えた。
ユウリ「さ、ササメちゃん。とりあえず、誤解を解いてから、ね?」
ユウリが慌てる。攻撃は寸止めだから、してはないけど、心配そうに此方をみる。
ササメ「でも、元の姿になったらまた、攻撃してくるかもしれない人を近づけさせたくない。せめて、近づくのは、その男が状況を理解して、反省してから。」
リチアさんと、リリックさんは困惑していた。でも、譲るつもりはない。ましてや、リリックさんは鱗を譲り受けている。しかも、無償で。丸い玉の形。
ササメ「ねぇ、リチアさん。あの鱗。あの形にしたのはなぜ?」
リチア「信頼のおける者には、昔から、その形が決まっているから。」
ササメ「うん、そうだと思った。そういう話、聞いてたから。…だから、なおさら、腹が立った。」
リチア「…?…あっ、あの童話ほど、深い意味はない。から、大丈夫。」
そもそも、守護者にさせようと思ったのではなく、自分の魔力の波形で、魔物よけのお守り替わりにしてただけ。ササメも、そのくらいは、さっきの会話でわかっていた。けれど、信頼度合いは?昔から信頼している者に送る丸い玉に形を整えたウロコ。なぞらえて、作ったくらいなのだ。
紐を通して、リリックさんの首にかけてある。リリックさんの行いは、リチアさんにどれほどの衝撃を与えたのだろう。
ササメ「龍玉貰って、龍だと知らないなんて、いくらなんでも酷い。」
ユウリ、リリック「え?」
ササメ「だって、その形に加工するには、鱗の場所も決まってるし、急所に近い場所のを使うのが決まりなのに。」
ユウリ「さ、ササメちゃんがめっちゃ怒ってる。」
おい、保護者、宥めてこいよ。
リリック「た、頼む。この刀ひかせてくれよ。危ないから。」
ユウリ「まぁ、とりあえず、リリックさん。その状態で、聞いてくれ。ササメちゃんは、人に危害加えれないから。リリックさんが怪我する事はないよ?」
目を泳がしながら、言っても説得力ねぇぞ。ユウリ。