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オーラ・コミュニケーション  作者: 友城にい
第四章 真実(うそ)から出た嘘偽(しんじつ)
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4-14

「な、なに……!? どうしたの、二人とも?」


 おどおどしている俺に、黒いスーツに、昨晩、不躾な格好は見せられないと黒髪に戻している父さんが、涙を浮かべて、俺に報告のようなことを痰の絡んだ声で告げた。


「州くん、これからも、ワタシたちと一緒に暮らそうな」

「え、あ……もちろんだよ。俺の帰る家は、ここしかないから」


 ぶっきら棒に答える俺に、今度は黒の礼服に長髪をひとつに束ねている母さんが、


「これからも州くんは、私たちの子供。これはどんなに壊れても揺るぎないもの。お母さん、ずっと州くんのこと、愛してるからね」


 母さんはそう口にして、俺をさらに強く抱きしめてくれる。

 二人は、俺にたくさんの愛情を注いでくれた。まるで、本当に腹を痛めて産んだ我が子のように。俺はこれまでも数え切れないくらい、抱きしめてもらった。それでどれだけ救われたか、わからない。

 二人の愛は温かくて、全身を包みこまれているような、そんな感覚にさえなった。

 父さんと母さんは、俺にとって、かけがえのない存在だ。

 そんな二人の愛に、今回も助けを求めてみてもいいのかもしれない。


「父さん、母さん、ちょっと、いい?」

「なんだい。父さんに、なんでも言ってみなさい」

「じつは、新樹が……新樹が、俺のせいで……」


 そこまで出ているのに、悔しさで喉に言葉が引っかかる。代わりに、出てきたものは、


「州くんが泣くところ。お母さん久しぶりに見たわ」


 え――。母さんに言われ、目元を拭った。微かに伝わる冷たい感触。それはまぎれもない「涙」だった。


「そうだな。州くんは、強いから」


 たしかに俺は滅多に泣かない。悲しみを忘れてしまっているから。だが、それは。


「それより新樹ちゃんがどうかしたみたいだけど、それを、ワタシたちが助けることはできないんだ。わかるかい?」


 父さんは、俺の目をしっかり見据えて話す。いつも手探りで、俺との距離を一定に保つように話していた父さんが、初めて俺と目と目で話しかけてくれる。


「これは、州くんが決めることだからだよ。いいかい?」


 一見、突き放しているように思える。ただそう思えただけで、近くにいあるから言える言葉たちだった。


「うん。わかってる。けど、やっぱり、不安で仕方ない」

「不安でいっぱいだろうけど、この問題は州くんが決めて、答えを導きだせるんだと思うよ。でももし、答えに迷ってしまったら、胸だけは貸してあげるよ」

「遠慮なんてしないで。こういうときだけでも、私たちを頼っていいんだから」

「父さん……母さん……」


 俺は二人の胸の中で泣いた。二人は優しく抱擁してくれる。


「いくらでも泣いていいんだ。泣けるときに思いっきり泣くといい。泣いているときは、その人を強く想う瞬間だと、私は思うからね」


 父さんは俺の頭を撫でた。母さんも、なにも言わないが優しく背中をさすってくれる。

 ひとしきり泣いたところで俺は、二人に告げた。


「俺、こだわりができたよ。俺、友達を大事にする、こだわりを持ちたい。こんな俺だけど、そんな俺でも友達だと思ってくれる友達を、俺はこだわりで大事にしたい」


 父さん母さんは、微笑みながら一回頷いて、


「州くんも、見つけられたんだね。立派なこだわりだ。さすが、父さんと母さんの息子。誇りに思うよ」

「お母さんも、いいと思う。じつに州くんらしい。州くんにしかできない、こだわり。お母さん、応援してる」


 俺こそ誇りに思うよ、父さん。

 母さん、いつもありがとう。

 そんな二人に「ちょっと用事があるんだ」そう言って、俺は後ろを振り返らず外に出た。

 街灯だけが頼りの外に出ると、リラが透明化を解く。しかし、その顔は浮かない表情をしている。


「どうした? らしくない顔をして」

「やっぱり、お前さんにはもったいない、よい両親だね」


 少しばかりしょげ返るリラ。オーラがないので、しっかりとした感情が読めない。


「俺も、そう思う。俺の、自慢の父さんと母さんだからな」


 すると、リラはけじめでも決めたような面持ちで、


「じつを言うとな。先ほど、お前さんの夢を覗き見してしまった。悪いとは思っている。お詫びと言わないが、罪滅ぼしのつもりでお前さんの手助けをしたのは否めない」

「……じゃあ、俺の過去を知ってしまったということ、か」

「言いわけにしか聞こえんかもしれん。だが、あまりにもお前さんがうなされていたものだから、和らげてあげたかった。後ろめたい気持ちはなかった、これは本当だ」


 涙ながらに訴えかけてくるリラ。

 俺は、それに関心と表すべきか、不思議な情が湧きあがってきた。


「初めて会った日、リラには『心という概念は存在しない』と言っていたよな。けど、俺を心遣ってくれるんだな。驚いた」

「まるで、あたいが血も涙もない悪魔みたいじゃないか。善悪の区別ぐらいはつく。お前さん、怒って、ないのかい?」

「全然。いつかは話そうと思ってたし。やっぱりリラは、なんでも有りなんだな。それじゃ――行こうか。決断の場へ」


 お約束を言って、俺が前を行くと、リラがぽつりと言葉をこぼす。


「なんでもはできないさ、現にあたいは反省している。しっかし、お前さんには負けるよ。こうなれば、あたいも全力でサポートする所存だからね」


 宙に舞い、俺の後ろにリラがついてくる。顔を強張らせ、新樹の家の門に手をかけようとした瞬間。ある人物と出くわす。


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