表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オーラ・コミュニケーション  作者: 友城にい
第四章 真実(うそ)から出た嘘偽(しんじつ)
45/55

4-10

「やっぱりいましたか。いまそこで岡せんぱいをおみかけしましたので、もしやと思いましたが、わたしの勘のとおりでした。だめですよ。おさぼりさんは」


 最初会ったときのような、淡々とした口調と無表情。変わったと言えば、彼女を纏う凶悪な、『嘘』のオーラぐらいか。


「鈴宮さんもなんで、学校内を徘徊してるんだ。みんな体育館のはずだが」

「徘徊とはしつれいですね。わたしは用事があって、いま体育館に向かう途中だっただけです。解森せんぱいといっしょにしないでください」

「それは、ごめん」


 俺は鈴宮さんの言葉を鵜呑みにすることが困難になっていた。なにが嘘で、なにが本当か、判別に欠ける。


「そんなことより、色海せんぱいはあれからどうですか?」


 それを言う鈴宮さんの顔は、不敵に微笑んでいるように見えた。俺の考えすぎなのだろうか。彼女に対しての不信感が募るばかりだ。

 俺は唾を呑んで、意を決し口にした。


「いったい、どこまでが嘘なんだよ」


 直球に核心をつくように問いただす。だが鈴宮さんは、一向に不敵な笑みを崩さない。


「そうですね。解森せんぱいにさいしょ会ったときから、か。中盤までかもしれないですし。解森せんぱいをからかった、あのときだけかも。もしかしたら、ぜんぶほんとうというかのうせいも、なきしにもあらずです、解森せんぱい。なにせおんなは、『嘘つき』な生き物ですから」

「茶化さないでくれ。俺にはわかるんだ。キミが嘘を言っているのが」


 饒舌だというのに、まったく思考が読めない。喋っているのに、情報が含まれていない。ただ『嘘』をつき続けている。これはたしかだ。


「! へぇ~。わたしの口車にのらないひとは、解森せんぱいがはじめてです」


 俺に揺さぶりが利かないことがわかったのか。鈴宮さんは短くこう述べた。


「つまり、解森せんぱいてきに。わたしはすべてにおいて、うそをおっしゃっていると、そう言いたいのですか」

「言い方が悪いが、そういうことだ」

「…………ふーん。そうですね。すでにヘンジンの解森せんぱいになら、わたしのぜんぶを晒してももんだいなさそうですね。では、まず言っておきしょう。わたしは解森せんぱいにみじんもきょうみはないです」


 鈴宮さんが意味有り気な発言をする。俺は、「じゃあ、あれは演技であって、わざと新樹を傷つけるようなことをした。そういうことか。でもなぜ」


「なぜ、ですか。そんなのとうぜん、わたしが色海せんぱいをあいしているからですよ」

「そ、それってつまり……」

「はい。レズです。同性愛者です。ヤロウをすきになったことなど、いちどもありません。わるいですか?」


 鈴宮さんは、ためらうことなくサラッと口にする。


「べつに悪くはないが……。それなら、尚更新樹を傷つける意味がわからん。好きな人を傷つけてどうするん――」


 そこまで言ってやっと理解した。鈴宮さんの意図が。


「そういうことです。わたしは、入学式で色海せんぱいに恋してしまいました。ですが、うわさによると、色海せんぱいにはすでに、想いびとがいるということだったので、ちょうさするために、ソフト部に入部したわけです」


 鈴宮さんは妖艶に浮かぶ魔女のごとく、中央に移動し、長い黒髪を手で梳く。さらに、俺に経緯を明かしてくる。


「想いびとはすぐにわかりました。それが解森せんぱい。あなたです。だから、あなたを蹴落としにきました。あの日、屋上にいたのはぐうぜんなんかじゃありません。ひつぜんであり、けいかくせいのたまもの。よく、うわさでもなんでも尾鰭がつくと言いますけど、あなたはうわさどおりのヘンジンでした。あなたはかわったひとのところには、かならずと言ってもいいほど、すがたをあらわすと聞いていましたので、それを利用させてもらいました」


 俺は、まんまと乗せられたってわけか。鈴宮さんの策略ってやつに。

 俺がなにも言わず、黙っていると急に、鈴宮さんのほうから気色悪い鼻息というべきか。激しい息遣いが聞こえ始めた。俺は心配になり、「どうした。熱にでも当てられたか?」と声をかける。


「なんだか……色海せんぱいのことを想像したら、コウフンしてきました。みてていいんで、ここでシテいいですか? あ、もうします。なんなら解森せんぱいもわたしのをみて、シテもいいですよ? 気にしないのでえんりょなく」


 その顔はかなり高揚していた。口からでてくる声は甘ったるく、色気を帯びている。そして宣言通り、鈴宮さんはスカートの中に手を入れて、身につけているであろう、布地に手をかけた。


「やめろ。俺に見られるのをどうも思わないかもしれないが、そろそろコウが戻ってくる。いいのか?」


 俺は軽く脅すように言った。鈴宮さんはしばらく考える。黙考をした結果、鈴宮さんはとりあえずかけていた手を解除した。


「ムラムラしているこのしゅんかんにシタいですけど、岡せんぱいにみられるのは、少々、リスクがデカいです。なので、やめておきましょう。それにしても、レズっていいですよ。もちろんゲイもステキです。いっそのこと、解森せんぱいが岡せんぱいのことをすきになれば、いいかんじに場に収集がつきますよ。どうですか?」


 俺は呆れ顔で一言。「それこそ、遠慮させてもらう」と却下する。


「ですよね。では、わたしは行きますね。またあいましょう、どこかで」


 小さくお辞儀をし、鈴宮さんは出て行った。そのタイミングで、俺はリラを呼んだ。


「わかっている。戸の前で待機していたからね。あれだろ。でも――あのおなごのオーラは、今までと比べものにならないくらいの厄介者だよ。いいのかい?」


 リラは俺の応答に瞬時に、テレポーテーションで飛んできた。おまけに理解が早い。


「俺も説得できるとは、あまり思っていない。けど、それでも鈴宮さんのオーラと話しておく必要があるんだ、と俺の心がそう言っている気がしてならない」


 鈴宮さんの生きたオーラがずっと俺を睨んでいた。鬼の形相と表現しても、優しいほどの顔で。まるで――鈴宮さんを命がけで守っているように。


「お前さんの心意気には勝てんね。それじゃ、いくよ。お前さん」


 リラは瞳を閉じて、左手で十字架を天に掲げ、右手を突きだす。そして、呪文を唱えた。


公開なんちゃらはやりすぎでした。


友城にい

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ