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オーラ・コミュニケーション  作者: 友城にい
第三章 すれ違い、恐怖、つないで
17/55

3-2

「お疲れさまでしたー」


 グラウンドの奥から大きな声が聞こえてきたのは、俺が観戦しだして五時間以上経ったころだった。

 日没が遅い季節とはいえ、それなりに太陽も待ってくれたほうだろう。もう半分はさよならを言わせてくれない。それでも残り半分に、さよなら、の労りの言葉をかけた。お疲れさん。


「がんばってるな、みんな」と手前のサッカー部と奥のソフト部の片づけを見送って、グラウンドから少し離れる。


 コウは追試が終わると携帯のメールで、『新樹ちゃんとご一緒に』とからかっているのか、わからない本文が送られてきた。返事で『わかった』と至って冷静に送信。すぐに『釣れないね。州は』とやはりからかっていたようだったが、そこでやり取りをやめた。


 時間を気にして、携帯で確認していると「おまたせー」とデート現場のような雰囲気で、新樹がこっちに走ってやってきた。「急いでいこ」と俺の手を掴む。「またか」と抵抗する気はないが、手を繋いでいるのは妙に、人目に晒されて恥ずかしい心境になる。


「ちょっと待て」新樹に力負けせず、一旦止める。「うん? どした?」

「いやなわけじゃないんだが、手を繋ぐのをやめてくれ。新樹のスピードについていくからさ」


「えーなんで。私は気にしないよ」「俺が気にする」「どうして?」新樹は、不思議そうに顔を覗きこんでくる。「こ、恋人っぽいから……。違うのに」


 俺の理由に「あー」と、納得する。ふう、これでやめてくれるかな、と安堵したのも束の間、新樹は再び俺の手を握った。

 え? 俺は驚いて新樹を見る。白い前歯を見せて、子供っぽく笑う新樹。


「そういうのは勘違いさせておけばいいんだよ。逆に私のボディーガードみたいでカッコいいじゃん」走りだした足取りのまま、俺のほうに振り返る。


「ボディーガードって……このままじゃ、彼氏できないぞ」


 少したじろいで、諦めさせる言いわけをした。


「ふーんだ、いーもん」


 新樹が空気の入った風船のように膨れっ面になる。怒らせるつもりはなかったんだが。とにかく、どうであれ効果があったのか、「なら、袖を持たせてよ」とレベルが下がった。のか?

 そのまま数十分歩いて、ファミレスに着いた。

 ここは、二十四時間営業の大手飲食店だ。でも来るのは初めてで、「ほら、入るよ」と新樹の先導で店に入店。

 店内は明々としていて、それでいて落ち着いた雰囲気がある。十八時過ぎとあってか、時間的にピーク時だ。いろんな人たちが食事やら会話を楽しんでいる。


「いらっしゃいませ。あ、ようやく来たね」


 対応に出てきたのは、ディーラーのような格好をしたコウだった。新樹が開口一番に感想を述べる。「コウ、似合ってるよ」ウインクをして、親指を立てグッドする。

 さて、俺は「久三野は来てるのか」と、コウにさっそく本題を持ちかける。「彼はあっこだよ」と指を差さないが、目線の先を辿ると俺と同じ制服を着た男子生徒が、店の角の席に腰かけていた。


「いつもあそこの席なのか」「まあね。あっこからが一番、禁煙席を一望できるから」たしかに店の作りからして、奥行きまでしっかり見通せそうな席だった。


 割って入るように新樹が、「例の女の子はどの子?」と店の中をぐるりと首を回す。


「名前言ってなかったね。上原さんは、久三野くんとの接近を避けるために禁煙席を担当してる。ほら、ツーサイドアップの子。あの子が上原さん」


 コウに言われるように禁煙席を一瞥。すぐに上原さんは見つかった。

 制服は、男女共通の蝶ネクタイのついた上着に、簡素な黒いフレアスカートのようだ。容姿は、身長は平均くらいだろうか。いかにもいいとのお嬢さまのような風貌がする。

 目につくブラウンの混じった黒髪に、目線の高さでカットされた前髪。そこから恐怖心に負けない一生懸命さが伝わる瞳が目についた。

 でも決まり手は、俺にしかわからない青かかった黒のオーラ――『恐怖』。ストーキングされているんだ。怖いのは当然か。それに合わせての男性恐怖症。あれじゃ、気の休まる時間がないはずだ。


 ふと、視線を感じ、隣を見ると新樹が不機嫌そうにしている。「どうした?」


「州、ジッと見てる……」口の中をぷうーと膨らませて、くちびるをはみださせていた。

「え、あ、ちょっと気になることがあってな。決してイヤらしい目的とかでなく……」


 言いわけにも聞こえるが、事実違うわけで……。

 そんな雰囲気を感知したコウが、「休憩に入ったら上原さんを向かわせるよ。それまでご飯でも食べてて」と笑顔で言う。それから、「じゃ、そろそろ戻るよ。禁煙席側に座って、それからオーダーは呼びだしボタンを押したら来るよ」急ぎ口調で注文のやり方を言い終わると、喫煙席側の仕事に戻っていった。


 俺が「ん、じゃ」ここで突っ立っているわけにもいかないので、「どこか座ろうか」と禁煙席に足を運ぼうとする。「私、ソフトでお腹ぺこぺこなんだよねぇ」と新樹がなにか求めているような顔をしている。


「なんだよ……」半分察知できるが、一応。

「おごって?」反則級に可愛らしくおねだりしてくるが、反射的に「なんで」と尋ねる。

「むー、さっき上原さんを凝視してたの、本人に言うから!」


 ぷすー、とよく浮上する気球のように膨らませて、拗ねている新樹。バーナーを焚いたら、本当に空を飛べるんじゃないか?

 俺は、潔く降参し、「あー、あー、わかった、わかったから、ったく」


「きゃは、ありがと、州」


 百八十度打って変わった純真無垢を思わせる笑顔。コウの笑顔とはまた違って、非常に表情が柔らかい。

 その後、空席があるか見渡し、移動した。


キャラ描写もっと練習しないとなぁ…


友城にい

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