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オーラ・コミュニケーション  作者: 友城にい
第三章 すれ違い、恐怖、つないで
16/55

3-1

 追試は二日間に渡って行われる。午前中に俺は下校できるのだが、帰ってもリラしかいないので暇だ。暇つぶしに新樹の部活風景を遠目に、サッカー見物することにした。

 が。そうはいってもサッカーに興味などさらさらなく、ルールもほとんど把握していない。どっちにしても暇になったので仕方なく昨日、コウが話した内容を振り返ってみる。



「――くさの……? 知らん。新樹は?」

「知らないなぁ、何年生なの?」


 視線を落としたまま話に加わった新樹。やっぱり心当たりがまったくない。


「一年生。同じ学校だけど、知らなくて当然だよ。僕も昨日、初めて知った名前だからね」


 両肘をついて手の甲にあごを乗せる。その顔は少々楽しそうだ。


「で、その久三野ってやつがどうしたんだよ」

「うん。じつは昨日、バイト仲間の女の子に相談を受けたんだ」


 コウは学校や俺にかぎらず、誰からも悩みを受けつけやすい。この調子じゃ、現在進行形で何件相談を受け持っているのか、計り知れない。


「その子、近所の私立に通っている子で、行き帰り徒歩らしいんだ。だけどここ最近、ずっと誰かにあとをつけられている気がするって言うんだけど」

「要約するとストーカー被害ってことか?」


 頷くように、「そうみたいだね」とコウが眉をひそめる。そこに新樹が、採点途中にも関わらず、突然立ち上がって、


「許せない! ストーカーは人類をおびやかす『悪魔』だよ!」


 同意を求めるように「そうだよね!」と、俺とコウに強く言う。なので、「あ、ああ……」コウも少したじろぎつつ、「さすが新樹ちゃんだね」と賛同した。


「相談したってことは捕まえるんでしょ! 私もいいよね!」


 新樹がコウに強く志願する。


「もちろんだよ。そのためにここで話したんだから」


 コウの承諾に「やった!」と喜びを表す新樹。遊びじゃないけどな、と思っているとコウが続ける。


「今回、新樹ちゃんに協力してもらうのには、ちゃんとした理由があってね。その女の子、ちょっとワケありで……」


 どうにも歯切れを悪くするコウ。俺が、「ワケあり?」と問い返す。


「僕に相談するのも一週間考え抜いて、決意を固めて話してくれたらしいんだ」

それって……と思った。そこに、新樹が「男性恐怖症なの? その子」と、俺の代わりに口にする。


 コウは一回小さく顔を縦に振り、「ある事情でね。だから今回は、新樹ちゃんにぜひとも協力してほしいんだ」


「なら尚更、私がいないわけにはいかないね!」


 拳を作り、新樹は熱く燃える炎のように気合いが入っていた。

 話を戻すようにコウに訊く。


「そこでなんで久三野臨って名前を出したんだ。まさかそいつが犯人ってわけじゃ……」

「決めつけているわけじゃないよ。ただの容疑者ってだけ。それだけの動機があるんだ」

「たとえば?」

「久三野くんは、その子が出勤していると毎回のようにファミレスに来て、その子が仕事を上がるタイミングで帰っていくんだ」

「なるほど。そうなると尾行は極めて可能なのか」

「でも久三野くんがやってるって証拠はないんでしょ?」


 新樹がテーブルを赤ペンで軽く叩いて、俺とコウを交互に見やる。


「だから、それを今回調べるんだ。犯人特定のために」コウは落ち着いて、遂行する。「方法は?」と、俺が促す。

「州と新樹ちゃんには、その子の後ろをついて行ってもらう。そこで怪しいと思う人物をさがすんだ」

「それじゃコウが、久三野を尾行するってことか?」

「そう。これで万事OKじゃないかな」

「そんなにうまくいくかぁ……?」


 不安になる俺を他所に新樹は、「そんじゃ、明日さっそくファミレスにレッツゴー」と、赤ペンと一緒に拳を天に突きだし、張り切っていた。


 それを横目に俺は思う。


 この先、どう転がるにしろ。個人的に久三野臨に伺う必要がありそうだ、と――。



     ☆


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