冒険者登録と初依頼
一夜明けた俺達は、今後の方針を話し合った。
「まずは二人の服だな、今後は冒険者をやる上で目立たない服装にしなければ、後はギルドに二人の冒険者登録をして装備の購入だな」
俺がそう言うと二人は頷いた。
後は家さえ決まればとりあえず生活面では、何とかなりそうだな。まぁその家が問題なんだがなぁ。
「家の購入は今の俺の貯蓄では厳しいと思う」
俺の現在の貯蓄は金貨五枚に銀板貨が三枚ってところだ。
この世界の通貨は、銅貨、銅板貨、銀貨、銀板貨、金貨、金板貨になっている。十枚ずつで上の貨幣に変わる。つまり銀貨十枚で銀板貨一枚に、銀板貨十枚で金貨一枚になる。
「三人で住める家を探すとなると金板貨数枚が必要だと思う。暫くは家を購入するための金を稼ぐしかないな、宿暮らしだと二人の首輪を外す金を貯めることが出来ない」
「そうですね、まずは家がないと生活が成り立ちません。首輪の事は焦る必要はないでしょう。奴隷だと精神的、肉体的に酷い目にあうと思っていたから早く外したかっただけです。ラスティーさんの奴隷ならその心配はありませんから」
嬉しい事を言ってくれるマリーに恥ずかしさからちょっと意地悪を言ってみる。
「分からないぞ二人の魅力に我慢出来なくて、イヤらしい事をするかもしれない」
そんな事を言うとフランが顔を少し赤くして睨んできた。
「ふふっ大丈夫ですよ、ラスティーさんの事は出会って一日ですが信頼しています」
どうやらマリーは俺の事を信頼していてくれたらしい。
「それにもし、そんな事になっても責任をとってくれますよね?」
マリーが上目遣いで、聞いて来るもんだから俺は照れて視線をずらす事にした。
とりあえず話題を変えなくてはと質問をする。
「えーと、一緒にパーティーを組んで依頼受けるにあたって、二人の使える魔法や武器、戦闘スタイルを知りたい」
「じゃあ私から、私が使えるのは回復魔法と火属性魔法よ。どちらも初級しか使えないけど、武器は使った事ないわ」
ふむ、フランは初級の回復と火が使えるとなるとやはり、後衛の魔法使いタイプだな。
「私の番ですね、私は初級の氷属性魔法と召喚魔法が使えます。武器はナイフが少し使えます」
マリーは初級の氷と召喚か成る程、ナイフが使えるとなると、召喚した魔物を戦わせつつ隙あらば自分で斬り込む感じかな。
それにしても回復に召喚かぁ、二人とも珍しい魔法を持ってるな強化しか使えない俺からしたら羨ましい。
「召喚魔法っていっても私が召喚出来るのはスライムやラビット位ですけど」
「それは俺の強化魔法で、マリーを強化すれば召喚出来るものがもっと強い魔物を召喚出来ると思う」
「そんな事も出来るのですか?」
「多分な、召喚魔法は召喚する時に魔力の質と量で喚び出す魔物が決まる。マリーの魔力を質と量、共に強化すれば普段は召喚出来ない魔物を喚ぶ事が出来ると思う。それに一度、召喚して登録した魔物は少ない魔力で呼び出す事が出来るだろう?」
「はい出来ます」
「まぁ喚び出した後は、強い魔物に比例して召喚を維持するのに魔力を喰うが、切り札は多い方がいい」
二人の魔法や戦闘スタイルは大体理解した。後は実戦で何処までやれるかだな。
話がまとまった事で俺達はまず服を買いに街に繰り出した。
服屋で二人の服を一週間分ずつ買うと宿に服を置いて、ギルドに冒険者登録をしに、ギルドに向かう。
昼前だが今日もギルドは混んでいた。受け付けに並ぼうと進むと酒飲みオッサンがまた話し掛けて来た。
「おう、ラスティー昨日はお楽しみだったか?」
どうやら誤解は解けていないらしい。溜め息をついて、オッサンに答える。
「だから昨日も説明したろ、二人はそういう目的のためにいる訳じゃないって」
「でもよう、急にそんな可愛い女を二人も連れていると勘違いされるぞ」
確かに二人は可愛いし、独り身の俺が急に可愛い奴隷を連れていると勘違いしてもしょうがないのかもしれないけど。
オッサンを無視して、受け付けに並ぶ。
「本日のご用はなんですか?」
受付嬢に二人の冒険者登録を頼む。
「お二人は奴隷で主はラスティーさんですね?」
「はい」
「奴隷の登録の場合は、主の欄に所有者の名前をお書き下さい。奴隷の依頼達成の報酬は全ては所有者に払われます」
これだ!奴隷になると、抜け出す事が出来ない一番の理由である。奴隷は自身で金を稼ぐことが出来ない。酷い主だと金は所有者である主が全部受け取って奴隷にはビタ一文、手に入らない。
イヤなシステムである。そんな事を考えながら二人の登録を済ます。
さて、まずは簡単な依頼を受けてみようかな。
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ゴブリン10体の討伐
エリア
××の森
期限
××月××日~××月××日まで
報酬
銀貨五枚
依頼条件
特になし
備考
街道近くにゴブリン発生!討伐求む!
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これなんか手頃で良さそうだな。
その依頼を掲示板から引き剥がして、受け付けに持っていく。
「依頼の手続きお願いします」
「はい、依頼の方はこの条件で間違いないですね?」
「はい、お願いします」
「承りました」
依頼の手続きを終わらせ、必要な装備や備品を買いにギルドお抱えの武器防具屋に行く。
「フランはそうだな、ローブと打撃に使える杖、マリーはナイフと軽装備の防具だな。気に入った物を選んでくれ」
二人は色々相談しながら、装備を選んでいく。
フランは無難な茶系のローブとあまり重くない先端に金属が飾られた杖にした。マリーは刃渡り25センチの飾り気のないシンプルなナイフと胸当て、肘当て、膝当て、の最低限の軽装だ。
「よし二人の装備も買ったことだし、依頼の森に行くか」
「普段しない格好で慣れないわね」
「これから実戦だと思うと緊張しますね」
「まぁ俺がいるから万が一なんて事はないから気楽に行こう」
二人は頷いた。さて忘れ物はないよな・・・あっ。
「ネギ買ってなかった!」
急いで八百屋に向かう。
「おばちゃん、いつもの一本頂戴」
「はいよ、ラスティー・・・あら可愛い女の子連れて、しかも奴隷?ラスティー我慢出来ないからって若いのに駄目よ、その歳で奴隷なんて買ってもう、ラスティーはそんな子じゃないと思ってたのに」
酒飲みのオッサンだけじゃなく八百屋のおばちゃんにも誤解されてしまった。
「おばちゃん、そんなんじゃないよ色々事情があるんだよ!訳あって二人は俺と冒険者のパーティーを組むことになったんだ。おばちゃんの考えている様な理由じゃないから」
懸命に説明したらおばちゃんは俺の事を信じてくれた。
これからパーティーで初依頼だっていうのに、幸先悪いなぁ。
俺達は微妙な雰囲気の中、依頼のエリアである××の森に向かった。