べた褒めされる二人
フランが奴隷の聖女と呼ばれる様になってから二日がたった。マリーの作った朝食を食べているとフランが元気がなさそうだった。
「何だ?まだ気にしてるのか?」
「気にするわよ!あんな呼ばれ方したら」
フランは奴隷の聖女という呼ばれ方がどうにも納得していなかった。
理由は分かるがな、聖女という呼ばれ方が既に好ましくないのに奴隷が頭についているからな。
俺がフラン達を奴隷扱いしてないから自分が奴隷という認識は薄い。しかし奴隷の聖女等と呼ばれたら嫌でも自分が奴隷なんだという事を意識してしまう。
しかし俺はあえて言う。
「奴隷の聖女フランちゃん!」
「なっ!・・・何で!ラスティーまでそんな呼び方するのよ!」
フランは顔を紅くして嫌がっていた。
奴隷の聖女フランちゃんとはギルドの皆に呼ばれている呼び方だ。
「止めてよ!ラスティーまでそんな呼び方しないで!」
「この前の仕返しだ、 俺の気持ちが分かっただろ」
「う~、身にしみて分かったわよ、あの時はごめんなさい」
フランはあの時の事を本当に反省している様だった。
「まあ、その内ギルドでの呼ばれ方も落ちつくだろ」
「他人事だと思って、私は今すぐあの呼び方を止めて欲しいのよ」
それは難しいだろうな。最近呼ばれ始めたばっかだし、何せ普段フランに話し掛けない奴までこの呼び方でフランに話し掛けて来るからな。
「治療の依頼を断れば呼ばれなくなるんじゃないか?」
「治療の依頼は続けたいけど、あの呼ばれ方をされると続ける自信がなくなるわ」
朝食を食べ終えて俺達はギルドに向かった。ギルドの前は人が沢山賑わっていた。
珍しくギルドの外にオッサンがいた。酒のボトルを片手に持ってはいたが。
「オッサンおはよう、何なんだ?この人だかりは?」
「おうラスティーおはよう、これはな奴隷商人がたまにやる奴隷の市だ」
「奴隷の市?」
「そうだ、長く売れない奴隷を安くして一般の人でも買いやすくして売ったり、目玉商品の宣伝なんかだな」
「ふ~ん」
良く見れば隷属の首輪を着けた女達が並んでいた。集まった男達は奴隷の女を上から下、下から上と一人一人見ていた。
俺が興味無さげに集まった人達を見ているとリースが口を開いた。
「本当に男って最低ね!女を何だと思ってるのかしら!」
俺も男なだけに耳が痛いな。
「まあ、安く買える機会に奴隷を買おうとする奴はいるだろ」
「そんな事は分かってるわよ!問題は買った後の扱いよ!」
うん、あそこに集まった連中の目的は明らかだな。
「あの鼻の下を伸ばしたイヤらしい顔を見れば分かるわ!買った奴隷がどう扱われるかなんて!」
間違いなく奴隷の女の体が目当てで買いに来てるんだろうな。
「好きで奴隷になる人なんていないのに、主従の立場を利用して好きでもない男に体を弄ばれるなんて絶対にイヤ!本当に男って最低!」
「リースその辺にしてくれ、俺も男だ耳が痛いくてしょうがない」
「ラスティーは別よ!私達にイヤらしい事は勿論、命令すらしたことないじゃない」
「それはそうだが」
「それに私はラスティーが大好きだからそういう事をされても嫌じゃないしね!私はいつでもOKよ」
リースは妖艶な笑みを浮かべた。
そんな話をしていると初老の男に話し掛けられた。
「そこのお方」
「ん?俺か?」
「そう、貴方でございます。素晴らしい奴隷をお持ちですね。どうですか私の所有する奴隷とトレード致しませんか?」
ん?何を言ってるんだこの人は。
「奴隷のトレード?」
「そうで御座います」
「オッサン、奴隷のトレードなんかあるのか?」
俺は近くで酒を飲んでいるオッサンに聞いた。
「ラスティーは知らなかったのか?主同士の同意のもとなら奴隷は簡単な契約でトレード出来るんだぞ」
知らなかった、奴隷にトレードなんかあったのか。
「どうです?そちらのダークエルフのお嬢さんやそちらのお嬢さんなら二人・・・いや、三人。一対三のトレードも可能ですよ。私も長いこと奴隷商人をしていますが、ここまで素晴らしい奴隷は初めてお目にかかります」
初老の男は奴隷商人らしい。リースとフランを見て、べた褒めしていた。確かにこの二人は目を引く程美しいのは分かる。フランは可愛いと美人を両方あわせ持ったような顔に綺麗なブロンドの髪、スタイルは抜群だ(特に胸)。リースは超がつくほどの美人だ。瞳は蒼く綺麗だ。透き通る様に薄いピンクの髪は銀髪に見紛う程美しい。勿論スタイルは抜群だ(特に胸)。こんなに美しい女の子を俺は他に知らない・・・ああ、ラビニアはこの二人に匹敵するほど美しいな。
俺が奴隷商人の言葉にリースとフランの容姿の事を考えていた時、リースがトレードの事を考えていると勘違いして慌てていた。
「ちょっと!ラスティーまさかトレードなんかしないわよね!」
リースの耳が垂れている。本当に心配しているのだろう。だが少しショックだな、俺がリース達をトレードに出す訳が無い事なんか考えなくても分かるだろうに。
「そんな事する訳ないだろ、リースは俺をそんな奴だと思ってたのか?」
「ちっ、違うの!ラスティーの事は信頼してるけど、そういうシステムがあると思ったら不安でつい聞いてしまったの。ごめんなさい」
リースの頭を撫でると耳が元に戻った。
「爺さん、悪いがこいつらは俺の大切な人達なんだ。だから爺さんが何を提示してもトレードには応じないよ」
「左様で御座いましたか、それは失礼をしました。トレードは出来なくても買うことは出来ますでしょう?どうか私の所有する奴隷を見ていってくだされ」
トレードを諦めた爺さんだが、今度は自分の所有する奴隷を勧めてきた。商魂逞しい爺さんだった。




