白銀の輝き
ラスティーは防戦一方になりつつもラウラの鎧を殴り続けた。
(ダメだな、寸分違わず同じ部分を殴り続けても全く壊れる気配がない。魔力で出来てるから普通の金属と違って脆くならないのか)
ラスティーの狙いはハズレた。ラウラの魔装で出来た鎧は常に魔力を循環しているため同じ部分をいくら殴ろうとも耐久性が落ちる事はない。
「いくら同じ部分を殴っても、この鎧は壊れんぞ」
ラウラは笑顔で答えた。
(こっちの考えバレてるし、参ったなぁ)
ラスティーは戦いながら考えていた。あの鎧を今の状態で壊せないとなると、ダメージを与える方法は鎧に覆われていない顔を殴るしかないが、流石に何の恨みもない女の顔をひたすら殴り続けるのも気が引ける。さっき殴り飛ばした時も女の顔はどうたらこうたら言ってたしな、面倒くさい相手だな。恨みや明確な理由があれば老若男女皆殺しなんだがな。
「中々当たらなくなったの、攻撃手段を増やすかの」
そう言うとラウラは剣の間合いの外に居るラスティーに剣を降り下ろした。
「うぉっ!」
咄嗟にラスティーは身をよじりかわした・・・黒い斬撃を。
「あっぶねぇな!そんな攻撃もあるのかよ」
ラスティーのかわした飛ぶ黒い斬撃はラスティーの後方、数十メートル大地を抉っていた。
「ほう、初見でよくかわしたの」
ラウラはラスティーの身のこなしに感心していた。
「では今度はどうかの」
ラウラは飛ぶ斬撃を絶え間なく幾十も繰り出した。
「ちっ!」
ラスティーは必死に動き回りラウラの飛ぶ斬撃をかわす。
(クソ、剣を振るだけでこの威力の攻撃が飛んで来るのかよ。これだったら溜めがある分、閃光魔法の乱れ撃ちの方が楽だぜ)
心の中で悪態を吐きつつもラスティーはラウラの攻撃をかわしていたが、ある位置にくると一瞬の硬直の後、ピタッと止まり斬撃を防御しようとした。
(しまったこの位置はマズイ!)
ラウラもラスティーの行動をおかしく思い攻撃を躊躇した時、ある事に気がつき攻撃を止めた。
「この位置からの攻撃はフェアじゃなかったの」
ラスティーがかわさず防御しようとした理由、それはラスティーの後方にフラン達が居る為である。ラスティーが斬撃をかわせば距離が離れているとはいえ、斜線上いるフラン達はただでは済まない。
「ふー、このままじゃ埒が明かないな、提案があるんだが良いか?」
「なんじゃ?」
「手合わせを終わらせる条件だよ、俺からの参ったじゃ終わらないなら条件をつけるしかないだろ?」
「そうだの参ったを有りにしてしまうと、お主は直ぐにでも参ったと言うじゃろうしな、して条件とは何かの?」
ああ、有りなら俺は直ぐにでも参ったするよ面倒くさい。
「条件は次に俺かラウラのどちらかがダメージを負ったら終わりにしよう」
「・・・ラウラか」
ラウラは呆けていた。
「どうした?」
「いや済まん、人間に名を呼ばれたのは初めてだったのでな、案外悪くないものじゃ」
「そうか、名を呼ばれたくないなら呼ばないぞ」
「いや、そのままラウラと呼んでくれ」
「どっちでも良いがな、どうせもう会う事も無いだろうしな」
「つれないのぉ、私はまた会う気がするがの」
「それでさっき言った条件で良いか?」
「わざと攻撃をくらって終わりにしようという訳じゃないんじゃろうな」
「勿論だ。俺は痛いのは嫌いなんでな、ダメージを負うのはラウラだ」
「防戦一方だった奴が言うではないか、面白い!良いぞその条件でな。この鎧を打ち破り私にダメージを与える事が出来たら手合わせを終わりにしよう」
「決まりだな」
正直これ以上戦いが長引くと周りに被害が出てフラン達が傷付く可能性が出てくるだけだからな。
「やり過ぎないよう、手加減はするが挑んで来たのはそっちだ。文句は言うなよ」
「なんじゃと!手加減じゃと!」
ラウラはラスティーの言葉に不機嫌そうな顔をする。
そんなラウラを無視してラスティーは集中した、自身が使えるたった一つの魔法。
ラスティーが自然体で集中し出して時間にして1秒、ラスティーの身体は白銀の輝きを放った。
音は無く静かな変化だったが、白銀の輝きから現れたラスティーにラウラは冷や汗をかいていた。
「お主・・・本当に・・人間かや?」
恐る恐るラウラはラスティーに聞いた。
「失礼だな、歴とした人間だ!」
「人間がそんな変化・・・いや、変身するなんて聞いたことないがの」
ラウラが疑問に思うのも当然である。今、ラスティーの姿は変化していた。
変化と言っても姿事態は変わっていない、ただラスティーの髪と目が変わっていた。普段のラスティーの髪と目の色は、黒髪黒目だが、白銀の輝きが収束して現れたラスティーの髪と目は共に銀色に染まり変わっていた。それと共に銀色の光の粒子を身に纏って見るもの全てが底冷えするような他を圧倒する魔力を放っていた、今までの銀の魔力を纏った強化とは次元の違う代物だった。
「・・・今まで本気じゃなかったということかや」
ラウラは少し畏縮しながらも言葉を口にした。
「本気なんて俺は一言も言ってないぞ」
「くっ!」
ラスティーは特に素早く動くでもなく、ラウラに歩いて近づいた。
あまりに自然に近づいて来るため戦っているのを忘れそうになる程だ。
「なっ!馬鹿にするな!」
ラウラは目の前まで、近づいて来たラスティーに剣を降り下ろす。
「別に馬鹿にしてないさ」
降り下ろした剣をラスティーは手刀で、粉々にした。
「なんじゃと!」
ラウラは驚きを隠せず声を張り上げた。
マズイと思い一旦距離を取ることにしたラウラは十メートル後方に飛んだ。
「なっ!」
しかし、ラウラが着地した時、ラスティーは最初からそこに居たかの如く目の前にいた。ラウラはラスティーから目を離していないにも関わらずまるで動きが見えなかった。
何が起きているのか分からず、悪夢を見ている気分だった。
「全力で防御しろよ」
ラスティーはこれから攻撃するぞという意思を伝えると右の拳が白銀に輝いた。
動きが見えなかった以上、攻撃はかわせないと思い、鎧に今まで以上の魔力を流して防御に徹した。
ラウラが防御の姿勢をとるとラスティーは右の拳をラウラに放った。
拳が鎧に当たると鎧とは何だったのかと思う程簡単に砕けた・・・いや、爆散した。当然中身のラウラもただでは済まずあまりの威力に大地を削り、砂煙を上げながら百メートル程ぶっ飛んだ。まるで爆撃でもあったかの様な有り様だ。
「ふむ、もう少し手加減するべきだったか・・・まあ死んじゃいないだろうし大丈夫だろ」
そう自分を納得させてラウラのぶっ飛んだ方に歩みだした。
未だに砂煙を上げる中でラスティーはラウラを見つけた。
「おー!何だ意外とピンピンしてるじゃないか」
「くっ!お主の目は節穴かや!身体の節々が痛いわ!」
そう文句を言うラウラは身体のあちこちが擦り傷だらけで、口からは血を流していた。まあそれだけ力強く文句が言えれば問題ないだろ、内心やり過ぎたかと思ったが安心した。
「ダメージは間違いなく入ったようだな」
「ダメージなんてもんじゃないぞ!一歩間違えれば致命傷じゃったぞ!」
「んじゃ、手合わせは終わりだな」
「悔しいが約束は約束だからの」
ラウラは心底悔しそうだった。
「まあなんだ、別に勝ったと思ってないから安心しろよ。ラウラがまだ力を隠しているのは知ってるからさ」
「バレていたのかや」
「まあな、お互いに本気じゃなかったんだ。勝ち負けはどうでも良いだろ」
ラウラはお互いの言葉に固まった。
「ちょっと待つのじゃ!お互いと言ったかや?お主はまだ力を隠しているのかや?」
ヤベッ!墓穴を掘った。
「あー、うん、間違えたよラウラは本気じゃなかった。オレホンキダッタ」
「お主・・・ラスティーは本当に嘘が下手だの」
くっ!嘘と気づかれない演技力が欲しい。




