第73話:好き
短めです
抱き付いたのは俺の方なのに…。マサキに無愛想な態度をとってしまった。
謝りたい。
とりあえず、マサキの部活が終わるまで校門で待ってみよう。
「マサキ…まだかなぁ」
練習中に邪魔するのも悪いと思い、長いこと校門で待っていたが、なかなかマサキはこない。
時間を見ると、時刻は6時半をまわっていた。
「そろそろ来てもいい頃だと思うけど」
やがて、バドミントン部員達が校門を抜けて下校するようになった。
しかし、まだ来ない。
部員達も下校してしまい、辺りは静寂に包まれた。
「もしかして、もう帰ってるのかな…」
マサキとは入れ違いになったのだろうか。それとも、初めから部活を休んでいたのだろうか?
「もう帰ろう。マサキはいなかったし…」
諦めかけたとき、声がした。
「ルナ……か?」
声でわかる。きっとマサキだ!胸がはずむのを抑え、振り返った。
「オレを待っててくれたのか?」
マサキが不思議そうに聞いた。
そりぁそうだろうな。朝昼はほぼ口も聞かなかったことだし。
「マサキ、俺……」
いざ謝ろうとすると恥ずかしくて言えない。勝手に抱きついてごめんなんて言える訳がない。
「ルナ、オレの方こそ悪かった。お前から抱きつかれたとはいえ、オレが抱きしめ返したら流石に引くよな…」
マサキが申し訳なさそうに謝った。
「違うよ!マサキに抱きしめられたのは嬉しかった‼︎」
そうだ…あのとき、とても幸せな気分だった。
「だから……だからマサキに謝ろうと思って待ってたんだ。」
「オレにか?」
「うん。今日はゴメン! 無愛想な態度をとってしまって…。」
あの時、俺は自分が分からなかった。自分は男(だと思いたい)でマサキは親友。なのに、女になってしまってからというもの、マサキに会うとドキドキしてしまうし、嬉しくなってしまう。
「そんなことだったのか…よかった。てっきりルナに何か怒らせることでもしてしまったのかと思っていた」
マサキはホッとしたように胸をなでおろした。
良かった。マサキと仲直り(というか、気まずい関係だっただけで喧嘩をしていた訳ではないが)ができた。
「マサキ、一緒に帰ろ!」
「おう」
もしもマサキと、ずっと気まずい関係だったら俺は耐えられなかったかもしれない。謝ることができてよかった…本当によかった。
「マサキ…待ってよ」
歩き始めるマサキに幸せ満タンでボーッとしていた俺は置いていかれそうになり、マサキのカッターシャツの袖を掴む。
流石に手を繋ぐことは恥ずかしくて出来ないけど、夕焼けに照らされた影は手をつないでいるように見えなくもない。
今までずっとモヤモヤしてた。あの遊園地の時も、プールデートの時も、再び異世界に行ってしまった時のことも、そして今回の事も……。
俺は今日やっと気付いたんだ。俺はマサキのことが好きだと。
マサキには振られて今までの関係が崩れることが怖くて気持ちは伝えられないけど……。
だから告白しなくてもいい。今までのようにいつも一緒に登下校したり遊んだりするだけでいい。高望みはしない。今のままで十分だ。
「ん?オレの顔に何かついてるか?」
いつの間にか、マサキの顔をガン見していた。男の頃は同じ背丈だったマサキも、今では俺より頭一つ分大きい。
頭一つ分大きいマサキを見つめるには見上げなくてはならない。見上げると夕日で顔が照らされ眩しいけど、そのおかげで顔が赤く染まっているのは隠れていることだろう。
「オレ、この街の夕焼け好きなんだ」
「お、俺も!すっごく綺麗だよね‼︎」
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そんな2人を校門の陰から見つめる1人の女子がいた。
「もぉー、ルナ先輩ひどぉーい‼︎私という女がいながら‼︎」
その正体は凛だった。
「あの男、今度ルナ先輩に近づいたら許さない!」
凛は相変わらずルナに夢中だった。最近ではルナとマサキが付き合いだすのではないかといつもヒヤヒヤしている。
そんな凛の肩を誰かが叩いた。
「ビビびっくりした〜。彩香先輩、脅かさないでくださいよー!」
「ゴメンね、脅かすつもりはなくて…。それよりも何やってるの?」
「先輩、ついさっき校門前でイチャイチャしてる男女がいたんですよー」
どこかで聞いたフレーズだ。
「『なぁーにー!やっちまったな‼︎』……とは言わないけど、誰がイチャイチャしてたの?」
「ルナ先輩と野獣マサキ先輩ですよ!」
凛の中でいつの間にかマサキは野獣という認識にされてしまっているようだ。
「どう思います!彩香先輩?」
「…………………。」
凛からの質問に無言だった彩香だったが、誰にも聞こえないような小さな声で一言つぶやいた。
「ふーん……なるほどね」




