第47話:吸血鬼の伝説
ずいぶんと間が空いてしまい、申し訳ありません。
昔々、魔物たちは数も少なく種族ごとに、人間たちに見つからないように山の奥でひっそりと暮らしていた。
しかし、人間たちは彼らを必要に討伐しようと森に幾度となく、大軍を送り込んだ。
魔物たちは温厚な性格だったが、さすがに耐え切れず、人間たちの大軍と戦うことを決めた。
だが、魔物たちは種族ごとに別々に暮らしていたため、1つの種族では到底足りず、次々と魔物たちの種族が滅ぼされていった。
そんな中、1人の救世主が現れる。
その救世主の名は、ルナ。彼女は吸血鬼族の村の出身で、魔物全体が一致団結し、人間たちに立ち向かおうと皆を指導した。
ルナは対人間の戦争の指揮をとり、見事魔物軍は勝利をおさめた。
「……と、伝えられています。」
アロエはそう言い終わると、一口お茶を飲んだ。
「なるほど。名前も同じということですか…」
しかし、この話を聞くとどうも魔物がかわいそうな気がする。
「えぇ、なのであなたの容姿と名前に驚いたんです。」
「なるほど。でも、いままでこの姿でいても何も言われなかったんですけど。」
「ホントですか⁉︎おかしいですね〜…」
アロエは首を傾げている。
ここで、ルナは2つの事に気づいた。まず、誰だって吸血鬼の髪色で思い浮かぶのは?と聞かれると、誰だって銀髪と答えるはずである。それなのに、アロエは珍しいという…
次に、ここ最近は変なキャラが出てきていないということだ。
この2つをまとめると自ずと答えが出てくる。
「もしかしてアロエさんって、吸血鬼見るのは私が初めてですか?」
「えぇ、そうよ。それがどうしたの?」
「あのですね。吸血鬼に銀髪というのは珍しくもなんともなく、逆に吸血鬼は銀髪の方が多いと思うですけど…」
「あら、そうなの⁉︎」
やはり俺の予想通りだ。アロエはあれだ、つまり少し天然なのだろう。そのため、初めて見た吸血鬼の俺の銀髪、そして名前でそう思い込んだのだろう。名前もルナっていうのは吸血鬼っぽくて、あまり珍しくなさそうな気がする。
ということはアレだな。例えれば、山田太郎君が世界を救った英雄‼︎ 的な感じなのだ。
以前、この世界に来た時も周りから注目を浴びなかったので、やはりアロエが変なだけなのだ。
とはいえ、容姿・名前まで一緒となると少し気になる気もするが…
いやいやいや、今はそんなことを考えている暇はない。とにかく、できるだけ早く帝都に行かなければ!
「私の勘違いということですね。すみません、困らせてしまったみたいで。」
「え、いや、全然大丈夫ですよ。」
その後、夕食を済ませ、風呂に入り、宿の部屋向かう。
宿部屋も清潔で、なかなかいい感じだ。
ルナはベットに横になる。明日は早朝から出発しようと考えているため、早めに寝るのだ。
「でもよくよく考えてみると、魔物たちって人と同じように暮らしてるんだな。」
魔物たちがベットに横になって寝ているイメージが頭に浮かぶ。
「なんか、可笑しいな。」
恐ろしい姿の魔物がベットに寝ていると思うと笑えてくる。
「それにしても、なんか…ねむく……なって………きた…………」
だいぶ疲れていたのか、ルナは死んだように眠ってしまった。
宿の中は静まり返り暗闇の中、窓から照らされる月明かりだけが、1人の女を照らしている。
「うふふっ、まさか本当にいたとはね。面白くなってきたわ。」
彼女は紅茶を一口飲むと、不敵な笑みを浮かべた。
□■□
「もう行くのですか?」
「はい。急いでますし。」
夜は明けたが、この国では闇に邪魔され、日は昇ってはこない。ただ、夜のように暗いわけではなく、簡単に言えば曇りの日のような明るさだった。
「それでは、行ってきます。お世話になりました。」
「いえいえ、いつでも遠慮なく来てくださいね。あ、そうだ。これ持って行って。」
アロエがルナに渡したのは中身がパンパンのリュックサックだった。
中を見ると、食料や水、金も入っている。
「さすがにこれは受け取れませんよ。泊めていただけただけでも十分お世話になってしまいましたし…」
「貴女には、いつかまたお会いできそうな気がします。ですからその時、お礼をしていただければ大丈夫ですから。お気にせず、持って行って下さい。」
「そっそうですかね?それなら、ありがたく頂いておきます。」
「それはよかった。じゃあね、またいつか!」
「はい。本当にお世話になりました。さようなら!」
街を出て行くルナを笑顔で手を振って見送るアロエ。しかし、だんだん遠くなっていくにつれて、ルナの背中を見る顔から笑顔は消え、その眼差しはルナを睨む目に変わっていた。
□■□
アロエの眼差しなど、気づくはずもないルナは北へ向けて進んでいた。
アロエからもらった地図によると、最短ルートは、この先3つの町を通って行かなければならない。まずは、最初の目的地である一つ目の町、タツギという町だ。
「あ!あれかな、タツギっていう町は。」
ルナの目線の先には、ずっと遠くの方に建造物が建っている町らしき場所を見つけたのだ。
「よし、1個目の町が見えてきたぞ。急がなきゃな。」
すでに、かなりの道のりを歩いたルナは、目的地が見えてきたことでテンションが上がり、走りだした。
しかし、テンションアゲアゲで走るルナの目の前に突然魔物が現れた。
「ん?あれは…」
ルナにその魔物に心当たりがあったのも当然。
目の前に立ちはだかったのは、以前この世界に来た時に倒した人さらい集団のボス、アブダクトだった。
「おい、姉ちゃん。あるもん全部置いてけよ。」
次回は、一つ目の町タツギへ‼︎




