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第94話:凛、絶体絶命!



◆再び現在へ◆


「さてと、あとはあなたを殺すだけ」


彩香=サキュバスは猟奇的な笑みを浮かべ、桜へ一歩ずつ近づいていく。右手には大鎌が握られており、刃の光沢が鎌の斬れ味を表している。

そしていよいよ、鎌をふりかざそうとしたとき、サキュバスはその手を止めた。


「桜先輩、今、誰かに合図を送ったでしょ?」


本来ならば、今から殺されるのだから怖がっても良いだろうに、桜は扉の方へ向けて、首を縦に振っていた。


「扉の先に誰が!」


「合図なんて送ってないわよ」


サキュバスの問いかけに桜は平然と答える。だが、それではサキュバスは納得しない。

そんなとき、廊下で大きな音が鳴った。サキュバスが桜を見ると、桜は動揺した表情を浮かべている。


「なるほど、さっきは廊下にいる仲間に合図を送っていたのか……。だとしたら!」


サキュバスの表情に焦りが浮かぶ。


「まさか、凛をそのまま外に待機させていたのか⁉︎」

サキュバスは殺し合いをさせた中にいなかった人物である凛を思い出す。


「凛! 早く行って‼︎」

サキュバスに内容がバレてしまったと悟った桜は大声で凛に向けて叫ぶ。

その声を受けてか、廊下からは走っているような足音がはっきりと聞こえるようになった。


「桜先輩、あなたの始末は後に回すからせいぜい最後のときを楽しんでてね」

そう言うと、サキュバスは扉の方へと体を向け、歩いていく。

そして、ドアノブに手をかけ………

「1分も経たずに凛の首を見せてあげられるわね」と言い残し、総司令部を出ていった。


一方、サキュバスから追われている凛はというと、先ほどの桜の声に従い、走って目的地まで向かっていた。後ろからは足音こそないが、殺気が感じられた。


「もしかして、サキュバスが追ってきてる……?」


恐る恐る後ろを振り返ってみると、サキュバスがこちらへ向かってくるのが見てとれた。しかも、サキュバスは空中に浮遊、つまりは飛んで距離を縮めてきている。走っていてはすぐに追いつかれてしまう。


ルナが囚われている牢屋は地下一階にある。そこまで、サキュバスに捕まるわけにはいかない。


「小学生のときによくやってたあれをすれば!」


二階への階段にさしかかったとき、凛はある方法を思いついた。それは、階段の手すりに座って、そのまま滑り降りていくという方法だ。


「これなら一気に下まで降りれる!」


途中でバランスを崩しすのを気にしていたが、小柄なためバランスが取りやすく、スイスイと順調に一階まで滑り降りていくことができた。

あとは地下一階に続く扉の鍵を開け、牢に向かうだけだ。

素早く扉の鍵を開け、薄暗く埃臭い地下へと向かう階段を下りていく。

階段を下りきると、そこには檻が50メートル先まで設置されてあり、ルナはその最奥に囚われている。


「ルナ先輩ーー!」


地下室いっぱいに響くような声で呼ぶと、ルナは鉄格子から顔をのぞかせた。


「凛?」


「先輩の無実が証明されましたよ」


「ホントに⁉︎」


「今、檻の鍵を開けに行きますから!」


凛がルナの檻に向かって走り出したちょうどそのとき、降りてきた階段の向こうから何かを破壊したような衝撃音が聞こえてきた。恐らくサキュバスが扉を壊し、こちらへ向かってきているのだろう。


「急がないと‼︎」


凛は必死で走り出した。



もし、ルナを解放する前に自分がサキュバスに捕まってしまっては桜との約束を果たせない。

約束というのは、桜は自分と同様、ルナは無実かもしれないと思っている凛にルナを牢に連れて行くようにと指示し、耳元で総司令部には戻ってこずに様子をうかがっていて欲しいと頼んだことなのだ。


薄暗い地下室の中をどんどん突き進んでいく凛に、後ろの方から声が掛けられた。振り返ると、サキュバスが後を追ってきている。距離にして30メートルほど離れているだろうか。


「はぁはぁ、怖い! ルナ先輩、助けて〜‼︎」

大鎌を片手に殺気満々で迫ってくるサキュバスに凛は半べそ状態である。


「凛、早く来てくれ! この檻と手枷から抜け出せれば、お前も助けれる‼︎」


「だけど、もう階段降りてクタクタですし、はぁはぁ、何かご褒美とか」


「わかった。じゃあ、凛の言うことを一回だけなんでも聞いてやる。だから、急げ‼︎」


ルナはこんなときにご褒美とはなんて強欲なと思ったが、事態が事態なので凛が喜ぶよう、凛が言うことをなんでも聞くという条件を提示した。すると、どうだろうか。


「な、なんでも言うことを聞いてくれる⁉︎ これはやる気が出まくりです!アクセルの力、見せてあげます‼︎」


凛がそう言うと、突然姿を消した………と思っているといきなりルナの目の前に現れた。あまりの風圧にルナは牢の壁に打ち付けられそうになった。


「どうですか、私の火事場の馬鹿力は」


「ちょっと意味が違うような気がするんだけど……」


「まぁ、どうでもいいじゃないですか」


「どうでもはよくないでしょ。だいたいアクセルってなんだよ?」


「知らないんですか? 10秒間だけ超高速に動けるフォームですよ‼︎」


「あ、うん、分かった。それ以上は何も言わなくていいから」

何かをパクったらしいので、ルナはこれ以上言及しないことにした。


「それより、速く鍵を! 高速で速く来た意味がないじゃん‼︎」

これまでツッコミを入れていたルナだったが、もう間近に迫ってきたサキュバスが視界に入り、本来の目的を思い出した。


「早く、檻を開けて‼︎」


「そ、そんなに急かさないでください‼︎」


凛は慌てて鍵を開けようとしたが、慌てているのでなかなかうまく開けられない。


「落ち着いて確実に!」


「はいっ! ……えっと………こうして………開きました‼︎」


まずは檻の鍵を開けることに成功する。


“サキュバス到達まであと20メートル”


「早く手枷も!」


「はいっ‼︎」


凛は手枷の鍵を取り出し、開けようとしたのだが、檻よりも開けるのが難しいらしく難航している。


“サキュバス到達まであと10メートル”


「ど、どうしましょう! 開きません‼︎」


「どうにか開けてくれ‼︎」


“サキュバス到達まで1メートル”


「もうムリですよ〜‼︎ ルナさんゴメンなさい」


凛は完全に泣き出している。そしてその背後で釜を振り上げるサキュバス。


「2人まとめて終わりね♪」


「凛、最後まで諦めるな!鍵を開ける努力をしてくれ‼︎」


「わかってます! ですがーー」



思わず後ろを振り返った凛の瞳に、振り下ろされる鎌が映る。その刹那、凛は自分の死を悟り、目をぎゅっと固く閉じた。


「ーーわたし、もうダメです」

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