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自衛隊、ダンジョンを制圧せり  作者: ヴァーリ
ロキのダンジョン編
7/7

Stage2 輪廻の草原

平原を走る一台の高機動車があった。助手席でMINIMIを構えながら周囲を警戒する桐生は、このステージに穏やかな草食の野生動物以外が見当たらない事に気付く。


「ここは平穏だな」

「ここはハンターが言うセーフエリア、主にアイテムの採集や休息に使われる」

「じゃあ、この辺りで野営にしよう」

「あれ、隊長。一気に行かないんですか?」


白木の言葉に桐生は唸る。


「白木、RPGやったことあるか?」

「まぁ、ドラックウェストや最後の奇跡シリーズも一通りやってますよ?」


白木の言うドラックウェストや最後の奇跡シリーズとは、RPGの中でも特に人気のシリーズでもある。


「んじゃ分かるだろ?」

「……あっ、なるほど。今のうちにレベル上げですね」

「そうだ、ボス戦の前にレベル上げなんて常識じゃないか。と言うわけでライカさん、シオンさん、この辺りで野営にしようと思うんですが?」

「構わない」

「いいですよ」


適当な場所で車両を止めた自衛隊員達は、簡易の野営地を作って行く。ふと、シオンが何か思い出し、桐生に近づいて行く。


「キリュウニイ」

「キリュウでいいですよ?」

「キリュウさん、私と一緒に食料の調達頼めますか?」

「私でよければ……白木」

「何でしょうか?」

「ちょっくら食料調達に行ってくる。後の指揮はお前に任せた。」

「了解です」


シオンと桐生は装備を整えると、野営地より少し離れた森へと向かう。シオンは、いつもの双剣ではなく、持参していた複合弓コンパウンドボウを構えている。


「そういえばシオンさん?」

「何でしょうかキリュウさん?」

「シオンさんとライカさんって、何でこんな異世界まで来て我々と共にダンジョンに挑戦するのですか?」


質問を聞いたシオンは少しの間目を瞑ると、ゆっくりと話し始めた。


「復讐、と言ってもいいですかね」

「復讐……ですか?」

「私とライカは、同じ村出身の仲のいい友人同士でした」



「シオン〜!」

「どうしたのライカって……えっ!?」

「見てみて!さっきロックボア仕留めたの!」


小さな少女の右手には、まだ成体になりきっていない小ぶりのイノシシが吊るされていた。10歳になったライカ・フランチェスカとシオン・アルケミスは成人の儀式であるボアハンティングを行うために村の近くの森へと来ていた。


ロックボアとはランクDのモンスターで、硬皮で獰猛、しかし力は弱いため、二人が住む村の成人になる儀式としてハンティングのターゲットとして決定されている。しかし、今回の儀式でハンティングを行うのは、怪力のライカ、俊足のシオンである。


「四発殴ったら気を失っちゃった」

「す、すごいね」


残るはシオンのみだった。


「いた」


森の奥の水場で水を飲む一匹のロックボアがいた。


「いくよ」


シオンは双剣を抜き取ると、ロックボアに向けて走り出した。


「お疲れシオン」

「何とか狩れたよ」


シオンとライカはハンティングの証拠であるロックボアの牙を抱えながら村へと帰っていく。


「皆ただい……えっ?」


二人が帰ってきたのは見慣れた故郷ではない。そこら中に血しぶきが飛び散り、原型がわからないほどグチョグチョになった死体が散乱していた。


「なんだよこれ」


シオンが死体を見つめてしまい、広場の真ん中で嘔吐してしまう。ライカはシオンを置き去りにし、自分の家へと駆け込む。そこには、自分の母親をくびり殺した仮面の男が窓際の椅子に座ってた。


「ふむ、生き残りか?」

「あぁあ!!」


ライカは神速とも言えるスピードで床を蹴り上げると、仮面の男に向けて突撃する。彼女の右手は強く握られ、仮面の男に振りかぶられた。


「あぁあ!!」

「いいスピードだな、しかし子どもという条件は変わらぬ」


男は振りかぶられた拳を受け流すと、脚を掛けてライカを宙に浮かす、そして右足の踵を落とし、床に着いた反動で浮かび上がった彼女の胸部を掌底で突き飛ばす。


「ライカ!?」


シオンは突き飛ばされたライカを受け止めると、腰に差していた二本のショートブレードを引き抜くと、斜め下から刃を突き上げる。


「甘いな」


男は漆黒のオーラをまとう剣を掌から出現させると、目にも留まらぬ速さで繰り出されるシオンの連撃を受け止めていく。


「くそっくそっ!」


シオンが二本のショートブレードを上から振り下ろすが、男は横から剣を斬り払い、シオンのショートブレードは宙を舞う。そして、喉仏に剣を添えられる。


「他愛ない」

「魔王様、ハンター共がやってきました」

「ふむ、そろそろ潮時か」


魔王と呼ばれた仮面の男は、部下に急かされてその場を離れる。その際、気絶するライカを抱えたシオンにつぶやく。


「数年後、強くなって私を倒しに来い。私の名は魔王だ」


数分後、近隣の街のハンターが村へ駆けつけてきた。



「その後、私とライカはあるハンターさんに拾われ、孤児院で死に物狂いで訓練しました。そして、二人でハンターになって魔王を追っています」

「そうでしたか、すみません。嫌な思い出を」

「いいですよ、私たちのことを少しでも知ってもらえるなら」


複合弓を引いたシオンは近くで草を食べるシカの様なモンスターに矢を放つ。矢は空気を切り裂きながらモンスターに命中した。


「ただいまぁ」


桐生とシオンは二匹のシカ型モンスター、ソールデアを抱えて野営地へと戻る。


「明日からどうします?」

「明日からはレベルアップ訓練だ、今日はしっかり食っとけよ」


第一小隊とハンターの面々は、仮設のテントで眠りについた。

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