プロローグ1
厄介事の掃除屋、命知らず、ギルドに属するものは全てそう呼ばれていた。ある者は自らの目的のために、またある者はダンジョンに潜む富を得るため。
とある古びた町の、とある酒屋でエールをかっ食らうこの少女も、そのギルドの一員であった。今日のこの日も、あるダンジョンに潜入し、終われば何時ものように一日の疲れを癒していた。
「あんた、ちと飲み過ぎやしないか?」
「そんな事はない、現に私はそこいらの男が飲む量しか飲んでいない」
しかし、彼女の周りには、よほどアルコール度数の高そうな酒が入っていたであろう大瓶が、隙間なく並べられていた。今の言葉に何ら説得力など存在しない。
「まぁ、世界政府がバックに付いているあんたみたいなハンターなら金払いもいいし、俺としちゃ大歓迎だがな」
酒場のマスターはそう言うと、満足したかのようにカウンターへ下がって行く。それを見た彼女、ライカ・フランチェスカは少し不機嫌になるが、気を取り直して酒を再び飲み始める。すると、鈴の音がし、店に誰かが入ってくる。
「いらっしゃい」
「マスター、スコッチの水割りを頼む」
そう言って入ってきたのはグレーの衣服を着込み、腰に剣を差した少年。少年はライカの横に座ると、手で紙を滑らせて来た。ライカはそれを受け取り、じっと読み始める。
「調子はどう、ライカ?」
「ぼちぼち、で、報酬は貰って来たの?」
「あぁ、これがライカの取り分。そして、これが孤児院に送る分」
そう言って差し出されたのは小さな巾着袋。彼女はそれを受け取るが、いささか不満足な顔をする。
「ケチケチするなってか?悪いが、これはハンターたちの掟だ。ギルドに仕えし者、欲に走るべからずと」
「私ね、これから大仕事があるの。だから、お金が必要」
「ほぅ?これまたどういう風の吹き回しかな?」
「あの約束を果たすため、とだけ言っておくわ」
「…………そうか、なら俺も手伝おうか」
そう言った男は、懐から大きな巾着袋を取り出すと、ライカに渡した。
「大きな仕事だろ。今の装備じゃいささか不安だから、貯めてた金で整えよう」
「ありがとう」
二人は立ち上がると、お代を置いて酒屋を出る。