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第1章花鳥風月シリーズ 第2話

機械都市の夜はどこもかしこも明かりで照らされる。

影の差すところは少なく人通りも少なくなることはない。

それでも人の少ないところを選んで突き進む集団が一つ。

黒の外套に身を包み、人の目を掻い潜る。

「止まれ。」

蚊の鳴くような呟きだったが集団はその声の通りにその場に立ち止まる。

先頭の人物がハンドサインで集団を二手に分ける。

集団が目指す先にはギルド機械都市支部がある。



「97、98、99、100……ふう。」

凝り固まった間接を解してから朝の日課の続きを途中から開始していた。

一日のノルマをこなすにはもう少し時間がかかるが別段焦る必要はない。

むしろこういう時こそじっくりと身体を作るように心掛けている。

無駄な雑念が入らないように一つ一つ丁寧にノルマを消化していく。

「よお、シュウ。相変わらずいつもの日課か?」

「ギュンガーのおっさんか、まだもうちょい残ってるけどもうすぐ終わるとこだよ。」

「そうか、そういえばさっきギルマスが血相変えてお前を探してたみたいだぞ。」

「うげ、書類整理にどっか不備でもあったんかな?」

「こっちにとばっちりこないようにしてくれよな。つってもお前が仕事ミスするなんてここ最近なかったけど可能性として不備がないとは言えないかもな。」

フォローにもなっていないことをシュウにするが、確かにミスをすることがないシュウに限って不備があったとは思えない。

何か別のことかもなと二人で苦笑いする。

「それじゃちょっと顔出してくるよ。」

「そうか、俺は一足先に宿に戻ってるから夕食までには戻ってこいよ。」

「了解。もし遅れても唐揚げの一つ二つは残しといてくれよ?」

「そうだな、日頃の行いを改めるんなら考えてやらんでもない。」

「んな!そりゃ卑怯ってやつだろ。」

「フハハ、何とでも言うがいい!」

高笑いとともに宿に向かおうとしたところでギュンガーの顔に緊張が走る。

「おっさん!!」

いつにも増してシュウの大声が辺りに響く。

シュウとギュンガーは背中合わせになりそれぞれの得物を手にして周囲を警戒する。

「こりゃ、なんかの演習かなんかか?」

「いや、いくらギルマスがそういうの好きでもここまではっきりと殺気を放ってくるような演習があってたまるか。気を抜くなよ、なんだかわからんがギルドに喧嘩売ってきたどこかの阿呆にはきっちりと御灸を据えてやらんとな。」

演習や訓練とは違う殺気にシュウは背中に走るゾクゾク感が気持ち悪かった。

時が止まったかのような周囲の光景、音に細心の注意をはらう。

建物の陰、木の陰に何人かいるのがわかる。

そして正面からは数人の黒の外套が目に入ってくる。

「おっさんはギルドマスターに報告しに行ってもらえるか?ここは俺がなんとかしとくからさ。」

「そうか、じゃあゆっくり行ってくるから気長に待ってろ。」

「ちょ、日頃の行いが悪いからってそりゃないだろ。」

「ハハハ、………シュウ死ぬなよ。」



変わらない日常を送っていたのにそれが壊されようとしている。

なんとなくそう感じたエリーはクライスを不安そうに見上げる。

「そんなに心配することはないですよ。カリナさんがなんとかするって言っていたのでなんとかするはずです。だからエリーもそんな不安そうにしないでどっしり構えていてください。」

「うん。……もうシュウがどこか遠くに行ったりすることないよね?」

「はい。私たちがついているんです。絶対にそうなることはないと保障します。」

いくら大丈夫だと伝えたところでエリーの不安は消えることはなく、より強くなってしまう。

過去シュウが死にそうになったことが何度もある。

ある時シュウが幼い頃にとある理由で命を狙われることが多くなったという話をクライスとカリナ達から聞いたことがあった。

その時運が悪かったのか本当にシュウが死にそうになったことでシュウがいなくなってしまうことに不安を感じるようになり始めたエリー。

小さな手を胸の辺りで握りしめ祈るように天を仰ぐ。



「おい、お前ら。ギルドになんか用でもあんのか?俺も職員の一人だから話を聞くぐらいならするぞ。つってもそれ以外は業務外だからお断りだけどな。」

「お前がみずきシュウだな?」

「あん?あいにく俺にそんな大層な姓はねーよ。」

「ん?おい、情報が違うのか?」

「いえ、まさか、そんなことは、しかし外見の特徴は一致していますし……」

何やらこそこそし始めた黒集団に首を傾げる。

さっきまでの殺気はなんだったのだろうか。

とにかく話が通じない相手ではないようなので武器は腰に戻して対話を試みる。

「誰かと勘違いしたのか?あんたらの探してる、えーっとなんつったか。」

「うむ、探し人はみずきという姓の者だ。何か知っていることはないだろうか。」

「ここ等辺じゃ聞いたことないな。機械都市にそんな姓の奴いたかな…。そんで急ぎの用事なのかい?だったらギルドでそいつについて問い合わせしてみるが。」

「いや、少し訳ありな人物なのだがそこまで急いでいるわけではないから問い合わせはしなくていい、気長に探すことにする。失礼したな少年。」

どこか歯切れの悪い返答で、なにか犯罪チックな言い回しの仕方をされて警戒を強める。

ここでスルーして何か取り返しのつかないことにでもなったら大変だ。

主にシュウ自身が。

もしこのことがギルドマスターの耳に入ったら。

今呼びにギュンガーが行ったではないか。

ここは不本意だがギルド職員として仕事すると腹を括る。

いつもなら面倒くさいと投げ出してしまうが自分の将来と給金が大事だ。

それにこのやり取りの時間で確実にギルドマスターが飛んでくるだろう。

「まあ、そんなに急ぐんじゃないなら少しギルドで休んで行けよ。知らない奴相手でも茶ぐらいは出すからさ。」

「ふう、最近の子供は興味のあることに首を突っ込む習性でも持ち始めたのか?時間も押してるから早めに片付けろ。」

先ほどの殺気が四方から向かってくる。

「ふーん最近の大人は世の中のルールも知らないときてる。ここいらで礼儀ってものを知っておく必要あるんじゃない?つーかギルドに喧嘩売っておいてそりゃないだろうに。」

「言うようになったじゃないかい。でもそんな威勢が通じるのはそこら辺の三流の奴だけよ。」

音もなくシュウの後ろに現れたギルドマスターに黒い集団はどよめく。

一切気配は感じられなかったし魔術を使った様子もないため相当のやり手であることは間違いないとあたりをつける。

下手に抵抗したり誤魔化せば間違いなく戦闘に入ってしまうのは明らかだ。

慎重に言葉を選ばなければとこの場を切り抜ける覚悟をする。

「しかし、あんたたちどこのもんか知らないけどうちのもんにどういった要件だい?ギルドマスターとしてはそこんところはっきりさせてもらえないとそう簡単に返すわけにはいかないのよ。」

「これは大変失礼した。こちらにも少々事情というものがありましてね。まず私たちの素性を明らかにしましょう。できれば貴方に警戒されたままではこちらの印象は悪くなる一方みたいですしね。」

「わかったわ。それで、その仰々しい後ろの魔魂具使いは大人しくしてくれるのかしら?」

「重ねて失礼を。」

スッと手を挙げて武装解除して待機の合図をする。

「私たちは琥風院くふういん家の使いの者です。こちらに劉を姓に持つ者がいるという情報を掴んだもので参上した次第であります。そこでその人物の身元引受をさせていただきたいのですが。」

「劉……。聞いたことが無いわね。琥風院がここまでして探している人物。」

カリナを首を傾げて考え込む。伏せていた視線を集団に向ける。

「もし、この件に首を突っ込んだらギルドもただじゃすまないってところかしら。」

「そうなります。私たちは捨て石に等しい者達なので。」

その先は言わなくてもわかるでしょう?と言いたげな視線がカリナを捉える。

「わかったわ。今日のことは見なかったし、聞かなかったってことにしましょう。それがお互いのためになるのだからね。」

悔しそうな表情で告げるカリナを見て掴んだ情報がデマだったと判断してしまった。

この判断が数分後自分を苦しめることになるとは知らない。

「騒がせてしまったみたいで申し訳ない、それでは今度こそ失礼させてもらう。」

ギルドを後にする後ろ姿をシュウは黙って見ていることしかできなかったことに悔しくなる。

またギルドマスターに助けてもらった。

「また、助けてもらった?」

何か大事なことを忘れている。

霞がかった過去の記憶。

今みたいなことは前にも経験したことがある?

思い出せそうなのに、何かがそれを阻んでいる。

「シュウ、今日はもう休みなさい。」

そうギルドマスターから声をかけられたところでハッとなる。

どうもオリオンです。

話の展開をどうしていけばいいのか分からず勢いのまま書いてしまいました。

投稿する前に何度も見返して書き直しましたがこれが限界でした。

まあ自己満足で書いて載せさせていますが読んで頂いた皆様に楽しんで読んでもらえるようにしたいと思っています。

次話投稿は2月5日を予定しておりますが時間は未定です。


花鳥風月シリーズ

鳥 自由を謳歌することに至上の喜びを感じ、誰にも縛ることのできない‘天空の覇者’として君臨する鳥の乙女

翼を魔力で構成し、上空からの魔術攻撃を得意とする

全属性に対応する魔術を行使することができる魔術特化型で複合魔術も行使可能

武具形態は旋棍

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