第三話
お気に入りが2件、うれしすぎます。ありがとうございます。
次話から、話がやっと進みそうです。
主人公そっちのけの話を2話目から始めたので、どうなる事かと思いましたが、少し安心です。つたない文章ですが、今後もよろしくお願いします。
講義が終わって、もうすぐで練習が始まる時間が迫っている。アイは学との待ち合わせ場所で彼女が来るのを待っていた。
「はあ、学のほうが先に終わってるはずなのになぁ」
愚痴をこぼしながら、携帯片手に待っていると近づいてくる男の影があった。
「こんばんは、お嬢さん」
その声を聞き、ナンパか……と、ウンザリとした顔を向けながら、
「すみません。今から部活見学に……って、マジン先輩!?」
声を出した先にいるのは、今日の昼にあった先輩がいた。
「いやぁ、見かけた顔がいたからね。声をかけてみたんだけど、忙しそうだね。部活見学はどこに行くの?」
「その……躰道部に……」
にこやかに話しかけてくる甲児に、アイは恥ずかしそうに顔を俯かせながら答える。そんなアイの言葉に甲児はぱっと顔を輝かせる。
「ホント!?うちを見に来てくれるの?それはがんばらないとな~。でも体育会系だけどいいの?まあ、うちはそんなにガツガツしてないけど」
甲児が言うのもわかる。周りから、アイはお嬢様系だよね、とか、運動苦手そうなどとさんざん言われてきたからである。アイからしてみれば、お嬢様系は別として運動について苦手でも嫌いでもない、どちらかというと好きなほうなのである。
「いえ、運動は嫌いではないし、お昼のことで少し興味が湧いたので、先輩はなんでこんなところに?練習が始まる時間なのでは?」
その言葉に、甲児は頷きながら答える。
「講義がさっき終わってね。もう遅刻は確定だから、のんびり行こうかなっておもったところに村山さんがいたから、声をかけてみたってわけ」
「アイでいいですよ。こっちもマジン先輩って呼んじゃいましたし」
そんなアイの言葉に、甲児はじゃあ、アイちゃんで、と答えているところに、
「ごめん、遅くなった~って、マジン先輩!?」
自分と同じ反応の学に苦笑し、説明しながら躰道部の部室へ向かう三人であった。
結論から言うと、躰道は面白そうだった。空手と体操を合わせた感じの武道というのが一番妥当な見解だ。空手自体はしたことはないが、テレビや漫画でみたことはある。空手のような直線的な動きではなく、多角的な動きがよくみられる。ただ、その一番の特異なのはバック転やバック宙といった、体操の動きだろう。これを自分ができるかというと甚だ疑問なところだと、アイは思っていると、
「どう?見てるだけじゃ、面白くないでしょ?」
甲児が近づいてきて横に座る。
「いえ、アクロバティックな動きが多いんで、見てて楽しいですよ」
アイの本心だった。躰道自体、見てて面白いというのもあるが、やっている部員も楽しそうで、和気あいあいという表現があっているというのが第一印象だ。
「ここからは、法形、空手でいう型みたいなのやるから、ちょっと地味かもしれないけど、よかったら見ていって、面白くなかったら、帰っても大丈夫だからね」
そういうと、甲児は立ち上がり、周りに声をかけて法形練習に移った。
一言で言うと、綺麗だった。なんていうものかはわからないが、すばやく動いたり、ゆっくり動いたり、バック宙なりが織り交ざっている動きは見てて飽きなかった。それ以上に甲児が動いているところは、他の部員が動いているものより数段洗練されているように見えた。
この時から、アイは甲児と躰道に夢中になってしまった。
「ホント、なんでこんなに夢中になったかな~」
件の彼を見ながら、緊張してなかなか眠れないのに、すやすやと熟睡する甲児を恨めしそうに見つめる。ずっと見つめるのは恥ずかしいので、すぐに顔を背けてしまうのだが。
どれくらい、昔のことを考えていたのか、ふと窓から外を見ると空が白み始めている。
周りをみると、二人とも穏やかな寝息を立てている。さっきとは違い、温かい目で見てから、
「のど渇いたな。何か飲み物もらお」
勝手に悪いと思いながらも、欲求には勝てず、台所の冷蔵庫を開ける。
「うわぁ、ホントに自炊してるんだ」
中には、野菜やら肉やらの食材がたくさん入っていた。お茶も自分で作っているらしく、ポットに入れて冷やされていた。冷凍庫を覗くと、冷凍された米や冷凍食品が並んでいた。
「……もう、主夫レベルね」
すごいを通り越して、呆れ顔で冷蔵庫を閉めた。
その閉めた音が思いのほか大きく、二人が起きないかと心配して、そちらを見てみる。
女の子が体だけを起こしてこちらを見ていた。
「お姉ちゃんはだれ?」