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第二話

「寝れるか!」

 寝てる周りに気を使いながら叫ぶという器用なことをしながら、アイは布団からはい出した。横には、まだ名前も知らない不思議な少女が眠っている。服装は白のワンピース、黒色のショートヘアーだが、日本人か言えば、明らかに違い、その日本人離れした外見から、可愛らしいがどこか神秘的な雰囲気を醸し出している。小さな寝息を立てているところを見ると、自然と笑みをこぼしてしまう。

「本当に誰なんだろう?先輩の妹って訳でもないみたいだし」

 そういうと、自身の安眠を妨害する一番の存在を見た。

 あこがれの存在、それが一番当てはまる存在である相田甲児。



 大学に入り、新しいことしたいなって思っていた時、高校時代からの友達に誘われて入った躰道部。

初めは聞いたこともない、それも武道と聞いて、かなりの抵抗を感じた。友達からの誘いだからと、見るだけ見てみようと思い、部室棟までついていった。そこは体育会系の部活がそろっているだけあり、入ったそばから鼻につく、むせかえるような臭いが漂ってくる。それだけで帰りたくなってくるが、部室棟にいる男子部員たちが好奇の目でこっちを見てくるのがその一番の理由だ。

「学ぅ~、やっぱり、私には武道はちょっと……」

 前を歩く高校時代からの友達に声をかける。

「何言ってんの!あんた運動神経いいんだから、絶対大丈夫だって」

 学の声に否定を示すことはできない。自身がそこそこに動けることは自覚しているからである。

「でも、学に比べたら私なんか……」

 そんな、もう否定の言葉かもわからないことを言うと、学はこちらを振り向く。黒色のショートヘアーにボーイッシュな格好から、どこか猫を思わせる雰囲気がある彼女は信じられないという顔をしている。

「あんたねぇ、マジでいってんの?高校時代、どんだけ……ってまあいいわ。」

 そういうと学は足を止める。

「ここが言ってた躰道部よ」

 眼の前には躰道部と書かれた看板とドアがあった。そこをあけようとドアノブを回す学。

「あれ?」

 開けようとするが鍵がかかっているようで、回そうとしても回らない。

「誰もいないんじゃない?なら、今日はこれで、また今度ということで…」

 これは好機とここから離れようとするアイに、学は、

「そんなはずはないわ。今日、友達を連れてくるって言ってるし、その人が昼休みのこの時間にいないなんて見たことないし」

 学はそう言ったところで、何かおもいついたのか、眼を見開いて口を開く。

「もしかしたら、道場のほうにいるのかもしれないわ。そっちに行ってみましょう」

 そういって、学はアイの手をとり部室棟を後にする。

「私の気持ちは無視ですかぁ~……」

 アイの力無い言葉だけが木霊する。



「ここが道場よ」

 どうだ、というかのように胸を張りアイに言う。

 部室棟から出てすぐ隣にある道場、躰道部だけでなく他の部とも共同で使っているらしく、使用時間は決められているが昼休みは基本自由に使えるらしい。

 中からは誰かが練習しているのだろう。バシン、バシンと何かをたたきつけるような音が聞こえてくる。

「中にいる人は、学が言ってた人であってるの?」

 アイはちょっと怯えたような言葉で学に声をかける。

「そのはずよ、その先輩は部室にいなかったし、あの先輩が部室にいないところを見たことないもの」

 どんな先輩なんだ、とアイは思ったが逆に興味も湧いていた。

 そんなことを考えていると、学が道場の戸に手をかけ、おはようございまーす、と声をかけながら中に入って行くのが見えた。それに急ぎ足でついていって、道場の中に入る。

「おはよう。学ちゃん。どうしたのこんなところに?」

 一人の男性がこちらに近づきながら、そんな言葉をかけてきた。身長は170ぐらいと平均的、顔はイケメンとは言い難いがさわやかな印象を受ける。道着に袴と一見、合気道のような格好をしている。

「マジン先輩、それ本気でいってます?」

 学はあきれ顔で、マジン先輩――甲児と話す。

「昨日、友達を連れていきますんで、部室にいてくださいねって言ったじゃないですか~」

 甲児はしまった、という顔して謝罪の言葉を口にする。

「あ~ごめん。すっかり忘れてた。今日の朝までは覚えてたんだけどね」

 そんな甲児をみて、アイはいい加減な先輩だなと思う。

「まあ、そうなるような気はしてましたけど、しっかりしてくださいよ先輩。それで、この子が昨日言ってた友達の村山さんです」

「はじめまして、村山愛です」

 学に紹介されて軽く自己紹介をするアイに、甲児も笑顔で答える。

「はじめまして、三回生の相田甲児です。みんなからマジン先輩なんて呼ばれてるよ」

 自己紹介を聞き、さっきから疑問に思っていたことを口にする。

「なんで、マジン先輩なんですか?」

 ああ、それか、といいながら甲児は理由を説明する。いろいろ話をしていると、昼休みの時間も少なくなり、次の講義があるからと甲児と別れる。

「気が向いたら、見学に来てね。今日もやるから」

 別れ際、甲児の言葉に、どうしようかと思って、よく考えると話はしたが躰道自体どんなものかは聞いてないし、見てないことに気がついた。

「……行ってみようかな……」

 そんな言葉に学が強く反応する。

「ホント!?一緒にやろうよ。アイなら絶対気にいるから」

 普段、どちらかというと男らしい―彼女に言ったら確実に怒られるが―彼女が、女の子らしい歓喜の声を上げるのが珍しく、呆けた顔で彼女を見てしまった。



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