出会い
≪ピピピピ≫
目覚まし時計が鳴り響く。
もう朝か。もう少しぐらい寝かせてくれ。
そう思っても、目覚まし時計は容赦なく鳴り響く。
仕方がなく、重たい体を起こして鬱陶しい目覚まし時計を止めた。
「・・・ああ、そうか。僕、引っ越したんだ・・・。」
みんな心配しているだろうか。
・・・してねえだろうな。
いけね。なんで僕、こんな女々しくなってるんだよ。
そう思っていても、止まらない涙。
僕には信用できる親友がいなかった。
みんな、僕の方に集まってくるけど、
みんな気にいられるように必死だっただけ。
僕は、皆とは違って、裕福な家に生まれた。
だから、かな。皆、僕の周りに集まってくるけど、少しも嬉しくなかったのは。
誰も僕をみようとはしなかった。
それでもたった一人、僕を見てくれる人がいた。
僕は嬉しかった。同じ境遇の人で、それでもまだ彼の方が辛かったはずだ。
だってそれは僕の兄さんなんだから。
だけどその兄さんも亡き人。
兄さんが家を継ぐものだと思っていたから、僕は、兄さんの右腕としてサポートするものだと思っていた。
だから突然の兄さんの死に自分はどうすればいいのかわからなかった。
父さんは、僕に家を継げ、と言われた。
僕は急に怖くなって、思いがけず家を出た。
そして前々から憧れていた慶安村に引っ越してきたんだ。
「なあ、兄さん。僕、これからどうしようかなあ・・・。」
ずっとここにいるわけにはいかない。
かといって、今家に帰っても何も変わらない気がする。だったら、気持ちの整理がつくまでここにいさせてもらおう。
そう思い、軽い朝食をすませると、出かける用意をし、家を出た。
扉を開けるとそこには暖かい日差しと高原に広がった自然があった。
あまりにも美しすぎる景色に僕はつばをのみこんだ。
この美しい景色を一生胸に刻もう。
そう心に決めた。そしてゆっくりと前へ進んだ。
少し歩いて、そこには、ちょっと古びた家があった。
まあ別にみすぼらしくもなく、田舎によくある家だろうと思った。
どうやらインターホン式ではなく、扉にある把手みたいなものだった。
始めてなので、少し緊張した。まさか把手式のやつで呼ぶとは思わなかったからだ。
ドキドキ。鳴らすと、女性が出てきた。
ん?
よく見ると、そこには見覚えのある女性がいた。どうやら、彼女もおろどいているようだ。クリックリした目を大きく見開いていた。
“ー・・・可愛いー・・・"
本気でそう思った。
いかん、いかんよ自分。
平常心、平常心。
そう思って彼女を見上げた。
「えっと・・・、秋田さん?」
ドキン、心臓が高なる。
「そうだよ。春風さん。昨日ぶりだね?」
"秋田"ー・・・この名字は嘘だ。この名字はとっさに思いついたもの。"秋田"なんていう名字はどこにでもある名前だから、誰も僕の本当の正体なんて気がつかないだろう。
それに、僕の知り合いには見つかりたくないんだ。
僕が急に黙ると彼女は不思議そうにこちらをじっと見ていた。
「ああ、ごめん。ぼーっとしてた。
あまりにも君が可愛すぎて。」
そう言うと、彼女はカァっと赤くなった。
「そ、そういう冗談はやめてくださいっっ」
「