婚約破棄~真実の愛のカップルの方を全力で応援した裏組織の長の話
『これは、盗まれてはおりません。彼は友人です。あげたのです』
『はああ?では伯爵、彼の名は?いつごろからお付き合いをされていたのですか?』
『つい、今、衛兵隊長殿が引き合わせて頂きました。名は知りません』
『それは友人とは言えません!』
『友人は私が決めます』
・・・・俺はオスカー、伯爵邸に潜り込み宝石類を盗み市場で売ろうとしたら足がついた。
衛兵隊に捕まり。ボコボコにされ盗品と共に伯爵邸までつれて行かれたら、とんでもない事を言われた。
伯爵の後ろから幼女が顔を出して俺をのぞいていた。幼女が心配そうな瞳で俺を見つめている。
淡い金髪の優しそうな子だったよ。目から涙までこぼれていた。
周りを見渡すと使用人達も善良な人達だった。
ああ、よくいる偽善者だよ。
『おじ様、痛いの?』
『クラリス、治療をするから泣かないの』
『はい、お母様』
その後、治療をしてもらい。
『オスカー君と言ったかな。これで生活を建て直し誠実に生きて下さい』
俺は終始無言だった。
その後の俺は正義に目覚めるまでもなく。その金を元手にオスカー商会を立ち上げた。カジノ、娼館、男娼窟、用心棒、情報売買、金貸し・・・
800人の手下を持つ大商会にまでになった。実質、裏組織だ。
いや、準構成員を含めたらもっといるな。
財産は数え切れねえ。
全く、笑っちゃうだろ?善のつもりで助けたが悪党を育てちまった。
全く偽善者だよ。あの一家はよ。
・・・・・・・・・
駆け出しの頃の過去を思い出しのは部下からクラウゼ家の報告を受けたからだ。王都で噂らしい。
「商会長、ご報告。クラウゼ伯爵家令嬢クラリス様・・・婚約を破棄されたと街中で評判です」
「ほお」
「相手のヘンドリック殿下は新興の男爵家令嬢イメルダ様を真実の愛の相手とし婚約破棄を宣言しました」
「ほお」
「社交界ではまだ学生だから容認するべき・・・との声が大きいです」
「ほお、そうか?」
「もともと、クラウゼ伯爵家は善良の評判故に王妃殿下の熱望で第三王子殿下であるヘンドリック様と婚約をなさいました。殿下は粗暴なので穏やかなクラウゼ伯爵令嬢が良いとの思惑です」
「ほお」
「しかし、ヘンドリック殿下は善良なクラリス嬢を毛嫌いしていました」
「だろうな」
「婚約を一方的に破棄されてもクラリス嬢は自分に何か落ち度があったと反省しているそうです」
「ククククククッ!気に入った。ヘンドリック王子は素晴らしいな」
俺と同じだ。眩しい太陽が嫌いなのだ。
正論しか言わず。綺麗事しか言わない。故に人の本質をとらえられない。
「幹部会を招集だ!ヘンドリック王子を全力で支援する・・・決定事項だ!」
「「「えっ」」」
「それは・・・」
俺は決めたぜ。
まず。用心棒部門のゴロツキ達を集め。
ヘンドリック王子と男爵令嬢の城下でのデートを護衛させた。
・・・・・・・・・・・
これは誠心誠意護衛をさせた。
「グヘへへへへへへ!噂の真実の愛のおデートだ!」
「おう、こら、通行人ども、ヘンドリック殿下とイメルダ嬢の前を塞ぐんじゃねえー!」
「な、何だ。お前達は!」
「ヒィ、ヘンドリック様、怖いわ!追い払って!」
「お、お前達・・・・この方は・・・」
「ヒィ」
取り巻き達が5人ほどいたが。
こっちは50人だ。
粗暴と評判な殿下でも、口数は少なかったらしい。
「私を誰だと思っているのか?武芸をたしなんでいるぞ・・・」
「あっしらは善良な市民です」
「グへへへへへ、ヒヒヒヒヒヒ~」
「やだな。たまたま殿下の周りを歩いているだけですよ」
殿下たちが逃げるようにお洒落なカフェに入ったら入れるだけ護衛は入ったそうだ。
「おう、『有閑マダムの気まぐれお紅茶』だ!」
「これをくれ『森の愉快な仲間達のマフィン』を一個だ!森でとれた木イチゴ味だ!」
「俺は、『お星様の形のチョコとイチゴのデュエットパフェ』をお一つだ!」
「ヒィ、お客様!・・・ここは酒場ではございません!お間違えでは?」
「こっちは客だぜ!」
「お洒落なカフェを満喫しちゃいけないんかい!」
「ひ、ひどい、人を見かけで判断するなんて・・・差別だ!」
「ギャフン!」
と支配人は叫んだそうだ。
皆、人相が悪い。ヒゲ面のビア樽のようなむさ苦しい大男がカフェを占領する。
そして、護衛だからヘンドリック殿下とイメルダ嬢をジィと見つめる。
「・・・行こう」
「グスン、グスン」
もちろん、金は払ったぜ。
「領収書はオスカー商会だ。まとめで俺が払う。お会計を教えろや。ボケ」
「ヒィ、オスカー商会?!結構です」
「はああああ?会計させろや!」
「グスン・・・はい・・皆様は一体・・・」
「「「ヘンドリック殿下とイメルダ嬢の応援団だ!」」」
「名を覚えておけよ。真実の愛は無敵だぜ!」
それだけじゃーない。
警備は二十四時間だ。
学生寮の前で大人しく待機し。殿下の部屋を凝視。
殿下が登校で門を出たら、ワラワラとどこからともなくヘンドリック殿下の周りに集まるようにした。
教職員が注意するが。
「君たちは一体・・」
「「「ご苦労様です!」」」
「ヘンドリック殿下とイメルダ嬢の真実の愛を応援する者であります!」
「ご迷惑をおかけしません!」
丁寧に対応するように指示した。
ただ、寮の周りをゴロツキが五十名立っているだけだ。
学園の中でも警備は怠らない。俺の子供達に言い含めておいた。
フランツとマリーだ。学園で接触させた。
「で~んか、じゃん。俺っちとカジノ行こうじゃん?それとも娼館がいいじゃん?」
「イメルダぱーせん。お父さま、男娼窟経営しているんしょ!今夜一緒に行こうしょ?」
「「ヒィ」」
「オスカー兄妹!」
「と、学園の不良達?!」
「で~んか、取り巻きに入れて下さいよ~」
「いや、間に合っている・・」
「そうよ。身分差があるわよ!」
「真実の愛は身分を超えるしょ。取り巻きに身分差は必要ないっしょ!」
「・・取り巻きではない学友だ。学問に集中した・・・まえ」
俺の子供達は無駄に成績が良い。悪党は頭が良くなくてはいけない。幼少の頃から家庭教師をつけた。だから退学にはなっていない。
殿下は言葉に詰まったようだ。
「じゃあ、で~んか、今日からずっ友、ご学友じゃん?」
「ウケるしょ!」
殿下の肩に手を回しフランツが学友宣言をしたそうだ。
フランツはイケメン、胸毛が見える服でジャラジャラした金のネックレスを首にかけ。手にはメリケンサックの後が痛々しいぐらい残っている。
マリーはまるで悪役令嬢のような真っ赤なドレスだ。扇にはカミソリを潜ませている。切れる扇だ。
その他の子弟も、ナイフをペロペロなめる奴や、胸元パッチリ、背中見せ放題の不良令嬢たちだ。
一躍、ヘンドリック殿下とイメルダ嬢は学園の不良のトップになった。
宣伝もした。
街で真実の愛について噂をしている街雀たちを見かけたら、ゴロツキ達に声をかけるように指示を出した。
「グヘへへへ、ヒヒヒヒヒヒィ!そこのお姉ちゃんたち」
「ヘンドリック殿下とイメルダ様の真実の愛の物語聞きたい?」
「ヒーヒヒヒヒ、お洒落なカフェで真実の愛について語り合おうか?」
「「「キャアアーーーーーー!」」」
「ケダモノよ!」
「お母様、助けてぇ~」
これは失敗した。声をかけただけでナンパと間違えられて逃げ出しやがった。
そうそう、警備はどこでもだ。
他所のシマに行っても殿下を護衛する。
裏組織と抗争覚悟だ。
「おう、ここはフランキー商会のシマだぜ」
「何、ゾロゾロきてんじゃ!」
「人を集めろ!」
そして、ゴロ巻くときは必ずヘンドリック殿下の名を出す。もう、ゴロツキ達の長だ。
「おう、こちらは真実の愛のヘンドリック殿下の護衛じゃ!」
「ヘンドリック殿下の護衛じゃボケ、アホ、カス、間抜け!」
「あああ~ん。おう、こら、こちらにおわす方がヘンドリック殿下じゃ!ボケ!真実の愛を応援しないか!この〇×ついてんかい!」
「意味分からねえこと言ってんじゃねえ!」
「やっちまえ!オスカー商会上等じゃ!ボケ!」
ケンカが始まったそうだ。
しかし・・・割って入る者がいた。あの偽善者の娘、クラリス嬢だ。
【み、皆様、お、お止め下さい!王都の皆様が迷惑をしています・・・グスン】
クラリス嬢が数人のお付きの従者、メイドを連れて現われたそうだ・・・
「あれは、クラリス・クラウゼ?」
「ま、まさか、ヘンドリック殿下の真実の愛を邪魔したご令嬢・・・」
「これは・・・分が悪い・・・」
【逃げろ!】
蜘蛛の子を散らすように退散をさせた。偽善者に感化されたら元も子もない。
関わらないべきだ。
「えっ?・・・」
「お嬢様・・・一体」
全く、偽善者だ。自分を手ひどく辱めた相手にも情けをかけていたと言う・・・
「殿下とイメルダ様、お怪我はございませんか?」
しかし、我らがヘンドリック殿下は。
「ヒィ、君はオスカー商会と知り合いのか?」
「こわいわ・・・グスン、グスン」
「いいえ、存じませんわ」
「もう、嫌だ!父上に言って懲らしめてもらうぞ!」
「グスン、グスン・・・お父さまのドレス店の前で新店舗出店しているのオスカー商会だわ・・・もう、やめて下さい・・・申訳なかったわ・・・グスン、グスン」
罵倒したそうだ。これでこそ悪の華よ・・・・・
それから、学園でも・・・クラリス嬢が子供達に注意したそうだ。
「オスカー商会のフランツ様、マリー様とご学友の皆様、大勢で廊下を歩くと他の方々に迷惑がかかりますわ」
「クラリスぱーせん。手強いしょ!」
「クラ~リス様?これは相手が悪い・・・おい、皆、散らばって殿下を護衛じゃん」
「「「分かったぜ」」」
「「「分かったわ」」」
クラリス嬢を避けるように言い含めていた。何でも言うことを聞くようにとな・・・あの眩しい輝きで善人にされたらたまらねえな。
☆☆☆孤児院
「ワーイ、オスカーのおじちゃん。有難う」
「「「有難う」」」
「おう、良い子への女神様からのプレゼントだ。フランツ、マリー、配って良いぞ」
「男の子はこっちじゃん。中は開けてからのお楽しみじゃん」
「女の子~は、年少はヌイグルミしょ。お姉さんはアクセサリーしょ」
俺は孤児院に来ている。
これは偽善ではない。
俺ら裏社会は平民の上前をはねて生きている。
金を稼げる平民を育成しているのだ。部下が来た。
「商会長、・・・ご報告があります」
「ゲールか。裏に行こう。フランツ、マリー、後は頼むぞ」
「「はい」」
「ヘンドリック殿下は王宮に籠もり。男爵令嬢は家に戻りました。何か商会に詫び状が届いていますよ」
「何故だ?・・・応援したのに?」
「・・ご冗談を、商会長の指示の結果ですよ。陛下がお怒りで学園を卒業したら臣籍降下もあり得ると評判です」
「あら、悪の華に育たなかったか・・・残念だ」
「そして、クラリス嬢ですが、王都と学園で評判になり。王妃殿下がお詫びも込めて婚約者を選定しております」
「そうか・・・・変なマッチングをして悪の華を潰さないか心配だ」
「大丈夫です。陛下がお諫めになって、お相手は穏健な性格の第二王子、マッケイン殿下が有力候補です。慈善活動に興味があります。お見合いからです」
クラウゼ家は善良だけが取り柄の家門だ。
これは・・・
「ゲール、没落した子爵家の爵位あったな。お前が子爵になり接近をせよ」
「はあ?」
「お前は口が上手く一番紳士くさい。やせた体にカイゼル髭だ。騙されるだろうよ」
「私に何をさせたいのですか?」
「決まっている。クラウゼ家に孤児院の統括する役職についてもらうように王宮で工作だ。予算金貨1万枚使え」
ペーパー商会を作って寄付を行う。
謂わば、隠れ鎧だ。クラウゼ家にはオスカー商会の旗印になってもらう。
「そして、孤児を金稼げる平民に育てあげ。オスカー商会を支えてもらう。まさか、クラウゼ伯爵の裏にオスカー商会がいるとは誰も思わないだろう・・」
「はあ・・・孤児がどうやって支えるのですか?」
「遊園地を作る計画がある。孤児は結婚をして平日一生懸命に働いてクタクタになっても休日は遊園地で子供達と遊び金を落とす。正に悪魔の集金術よ」
「・・・商会長、素直ではないですね・・・恩返しだと言えば良いのに」
「アホ!!」
「い、痛い!」
ゲールをはたいた。
俺が表に出たら、眩しくて死んでしまう。
善人は大嫌いだ。利用されるだけの愚かな存在よ。
だから、骨の髄まで利用させてもらうぜ!
これが俺の生き方よ。
・・・オスカーの思惑はさておき。遊園地のテープカットは出資者からの希望でマッケイン殿下とクラリス嬢を行った。二人は遊園地設立の功労者が行うべきだと固辞したが。
出資者の希望だからと遊園地の責任者子爵ゲールは説得した。
尚、不思議な事に出資者は誰か定かではない。
最後までお読み頂き有難うございました。




