第1話 深夜のシフト、事故物件の入り口
山道を走るたび、車のヘッドライトに浮かぶコンビニの看板が、なんだか赤く滲んで見えた。
「本当にここでいいのか……」
俺は、九島龍堂。25歳。
今夜からこの山奥にある事故物件のコンビニで深夜バイトを始める。求人誌で見つけた小さな募集広告。条件は悪くないけど、住所が山の中腹で、正直少し不安だった。
店に近づくにつれ、夜の空気が冷たくて重い。駐車場には古い自動販売機がひとつ、赤いランプだけが点滅している。人影はゼロ。
ドアの前で深呼吸して、鍵を開けた。鈍い金属音が店内に響く。
「……うわ、すげえ古い」
店内は薄暗く、棚の端が曲がってる。床には埃が積もり、どこか湿ったにおい。事故物件として知られるだけある。
レジに近づくと、古いレジスターの上にメモが置いてある。
「深夜は、怪しい客に注意。特に奥の棚には近づかせないこと。」
手書きの文字。焦って走ったみたいで、なんだかぞっとする。
夜10時、初めての客が来た。白髪混じりの男で、店内をキョロキョロ見回す。
「こんばんは……」
声をかけると、男はにやりと笑い、レジに向かう。
支払いを終えると、急に振り向き、棚の奥の扉を指差した。
「そこ、入るなよ……」
言い残して、闇に溶けるように店を出て行った。
不気味な空気が店全体に漂う。心臓がざわついた。
棚の奥には確かに古い扉がある。普段は倉庫としてしか使われてないはずだ。でも、何か潜んでる気配がある。
その夜、コンビニは静まり返った。カップ麺の棚から、かすかに物音。
「……誰かいるのか?」
声をかけても返事はない。懐中電灯を手に、ゆっくり奥へ進むと、影がすっと動いた。
振り返ると、客の姿はない。空気の重さだけが俺を押さえつける。
そのとき、レジの奥に古い日誌が目に入った。表紙には「事故物件の記録」と書かれている。ページをめくると、ここで過去に起きた不可解な事件がびっしり。
「……何これ……」
恐る恐る読むうちに、深夜のコンビニに漂う得体の知れない空気が、ますます濃くなるのを感じた。
このバイト、最後まで続けられるだろうか。




