第4話 捧げる思い
礼拝堂にて。
修道女たちにより讃美歌が紡がれる。
礼拝堂中央には棺台が置かれて、ほど近い場所にはリディアの姿があった。
昨日は通夜が執り行われ、本日が葬儀となる。
僕――シュライン――の目から見ても、昨日のリディアの取り乱しかたは痛々しかった。
リディアとアレッタは、特例により日々の労働を免除され。リディアは亡くなった祖母の側に、アレッタもそれに付き添った。
普段は温かで落ち着きのあるリディア……それが棺にすがり号泣する姿には、僕も心を動かされる。
アレッタはリディアの傍ら、その背に手をやって。リディアの気持ちに寄り添っていた。
話に聞くと。
亡くなった祖母は、リディアのただひとりの肉親だったとのことだ。
それでも今日の葬儀では……リディアも幾分落ち着きを取り戻しているように見える。
葬儀は滞りなく進み。
修道女たちは、讃美歌の最終節を歌い終える。
その余韻が消えるか消えないかのタイミングで。
一団の端に控えていたアレッタは……両の手に携えたハンドベルを打ち鳴らした。
透徹な礼拝堂の空気に、同じく透き通ったベルの音が響き渡った。
その後、リディアの祖母の棺は、修道院内の墓地に埋葬される。
それを見送る僕たち――僕とリディアとアレッタ。
その間アレッタは、リディアの手をずっと握り締めていた――リディアを繋ぎ止めるためだろうか?
いたわり合うその姿は、まるで本当の姉妹のようだ。
そして儀式は終わり。参列者がめいめいに散っていくなか。
アレッタはリディアに……なにかお願いしたいことがあるようだった。
アレッタの目線に合わせるようリディアは屈むと。アレッタはリディアの手のひらに指を踊らせる。
それはリディアにとっても、意外なお願いだった。
僕はリディアに聞く。
「アレッタは、なんて?」
「アレッタは……『お父さまお母さまのお墓に参りたい』だそうです……」
アレッタの両親の墓もやはり、このカリエンテ修道院の敷地内にある。
それは、かつての葬儀に居合わせた僕も知るところだし、アレッタと付き合いの長いリディアも知っていただろう。
リディアは言う。
「アレッタからそんなこと言うの……今日が初めて……です。いつもは話題にするのも避けてるのに……」
アレッタは、僕やリディアの返事を待たず飛び出していた。
あたりが夕焼けに染まろうとするなか。振り向いたアレッタは僕たちを手招きする。
その手は、めいっぱい力強く振られていた。




