『緊張』から、冷静さを取り戻すには
試験や試合、面接、スピーチなどの場面で、『緊張』のあまり息が上がったり、冷や汗をかいたり、あるいは頭が真っ白になって、思うようにいかなかった。
そんな経験を持つ人は、多いのではないでしょうか。
創作においても、
人物が『緊張』している場面を描写することはよくあります。
しかし、本人に「緊張している」と自覚させ、
そこから冷静さを取り戻そうとさせる描写には、細心の注意が必要です。
なぜなら、強い緊張状態では、感情を増幅させる脳の働きが活性化する一方で、状況を冷静に分析する機能が抑えられてしまうからです。
言い換えれば、IQが下がっている状態に近い。
そのため、人物の内面で「緊張している」と語らせるのではなく、
視線の動き、耳に入る音、匂い、皮膚感覚といった五感を通して状況を描くほうが効果的です。
そして、それらを一歩引いた位置から捉える視点が入ったとき、人物が緊張を俯瞰できるようになり、冷静さを取り戻したことが自然に伝わります。
では、なぜ「自分は緊張している」「パニックになってはいけない」
といった自覚的な言葉を使ってはいけないのでしょうか。
多くの場合、そうした言葉を意識に上げた瞬間、
脳は「落ち着こうとしている自分」ではなく、パニックに陥っている自分の映像を先に思い浮かべてしまいます。
その結果『緊張』はかえって増幅され、先ほど述べたように冷静さは失われていきます。
人物に『緊張』という言葉を、言霊のようにつぶやかせ続けるとき、
読者に伝わるのは理性ではなく、《《混乱》》です。
だからこそ、
『緊張』は語らせるものではなく、行動と感覚で、滲ませるものなのです。
では、
状況を冷静に分析する機能が抑えられている『緊張』状態から、どのようにして冷静さを取り戻せばよいのでしょうか。
**一歩引いた位置から捉える視点が入ったとき、
人物は自らの緊張を俯瞰できるようになり、冷静さを取り戻す**
——言葉にすれば簡単ですが、
それが即座にできるのなら、『緊張』に悩む人は存在しません。
試験でも試合でも、人は常に自己ベストを更新し続けているはずだからです。
今回は、
「緊張から、冷静さを取り戻すには」というテーマのもと、
『緊張』を解剖していきます。
☑️アウェイで能力を発揮できなくなる理由
スポーツの世界ではよく、「ホーム」「アウェイ」といった言葉が使われます。野球でもサッカーでも、ホームとアウェイでは、試合結果に差が生じがちですが、そこにも『緊張』の度合いが大きく関係しています。
「ホーム」の場合、
居心地の良い空間。普段から練習しているグラウンド。
身体も感覚も、自然と動く状態。
選手たちは慣れている環境なので、『緊張』することなく、のびのびと試合をすることができる。
「アウェイ」の場合、
グラウンドまでの道のりには見慣れない建物が並び、到着しても芝生の状態はホームとは違う。応援席には敵側の観客が多く、音や視線も普段とは異なる。
選手たちにとって不慣れな環境なので、『緊張』でIQが下がり、身体もかたくなり、いつも通りのプレーができない。
★『緊張』の度合いを埋める方法
では、「アウェイ」でも「ホーム」と同じように、
リラックスして能力を発揮するにはどうすればよいのでしょうか。
答えはシンプルです。
「アウェイ」を、自分にとっての「ホーム」(居心地の良い場所)にしてしまうことです。環境そのものを変えることはできなくても、環境の捉え方は変えられます。
これはスポーツに限った話ではありません。
試験や面接、スピーチなど、人が『緊張』しやすいあらゆる場面に当てはまります。
そして、創作においても同様です。
登場人物に『緊張』する局面を、どのように乗り越えさせるのか。
「アウェイ」に置かれ、『緊張』と向き合う場面で力を発揮させるためには、
その空間を「ホーム」に変えてしまうだけの準備、
あるいは「自分は達成できる」という自己評価の高さを、
物語の中に組み込んでおく必要があります。
登場人物にとっての「ホーム」と「アウェイ」を、ぜひ考えてみてください。
重要なことなのでもう一度言います。
もしその人物に、熟練や老獪さ、強い自負といった資質を与えるのであれば、
それに見合うだけの準備や※経験、
そして「自分は達成できる」という高い自己能力の自己評価を備えた人格を、
作者はあらかじめ用意しておきましょう。
※ただし、経験に依存しすぎることには危うさも潜んでいます。
それでは次回、
・「アウェイ」を「ホーム」に変えるために必要な準備とは何か。
・目的達成における高い自己能力の自己評価とは何か。
・経験によって「アウェイ」を「ホーム」に変えることがなぜ危険なのか。
この三つについて、順に説明していきます。




