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創作力、磨いていこうの会  作者: 茎乃ハル
感情を解剖する
7/10

悲しくなるだけなのに、人はなぜ『後悔』するのか

——あのとき、あの子に告白しなければよかった。

惨めになることも、傷つくこともなかったのに。


——若い頃に、あの業界に飛び込んでおけばよかった。

歳を重ねた今となっては、夢のまた夢だ。


「あのとき、別の行動をとっていたら。

あるいは、あの選択さえしなければ——

今とは違う結果になっていたかもしれない」


『後悔』とは、

過去の選択によっては現実になっていたかもしれない可能世界を想定し、

それを現在の現実と比べることで生まれる感情です。


では、なぜ人は今になって、

自分の過去の「したこと」や「しなかったこと」をわざわざ掘り起こし、悔やむのでしょうか。


後に詳しく述べますが、

『後悔』を抱え続けても、判断やパフォーマンスに良い影響を与えることはほとんどありません。

むしろ、多くの場合は足枷になります。


それにもかかわらず、

創作において私たちは『後悔』を用い、

キャラクターにそれを語らせ、抱えさせる。


では私たちは、

『後悔』するキャラクターを描くことで、物語を足踏みさせたいのでしょうか。


——違うはずです。


そこで今回は、『後悔』をテーマに、

この問いに正面から向き合っていきます。



☑️『後悔』は百害あって一利なし


現実世界と同じくらいリアルに可能世界を想定するためには、時空を超えた推論ができなければなりません。

つまり『後悔』とは、人間の脳が高度に発達したがゆえに生まれた副次的な産物にすぎない、ということです。


本当は、

「害しか生まない不純物」といった、もっと強い表現を使おうと思ったのですが、

内省を深めていく手段にはなり得るのではないかと考え、訂正させていただきました。


現に、キャラクターに『後悔』を自覚させ、現状を見つめ直す材料として用いることもあります。

そう考えると、「毒にしかならない」と断じる表現は、やや正確さを欠くように感じたのです。


ですが、勘違いしないでください。

だからといって、『後悔』を持ち続けても意味がない、という言葉を訂正するつもりはありません。

過去の出来事についてくよくよ後悔し続けていると、その記憶がトラウマとなり、現実世界における判断や選択、パフォーマンスに悪い影響を与えてしまうからです。


——これらのことに身の覚えはありませんか?


「果汁の滴るレモンを想像しないでください」

そう言われると、レモンを想像して唾液が出る。


「鼻先を見ないでください」

そう言われると、普段は意識しない鼻先が、急に視界に入り込んでくる。


言葉によって意識化されることで、

対象の“重要度”が引き上げられてしまうのです。


もっといきましょう。


「失敗すんなよ!」

そう言われると、過去の失敗の映像が脳裏に浮かんではきませんか。


「それは君の身の丈にあってないから、やめた方がいいよ」

そう言われると、まったく別件だったはずの過去の失敗を《《わざわざ》》引きずり出し、《《わざわざ》》映像化して見せつけてきませんか。


『後悔』とは、まさにこの状態です。

マイナスの言葉を意識に上らせ、脳が過去の映像を再生し、自ら判断とパフォーマンスを下げていく。

だからこそ、

このような言葉を投げかけられたときには、意識的にセルフトークを行ってください。


「自分はできる」

「あなたに、俺の何がわかる」

「自分なら成功できる」


あなたのことを一番理解しているのは、

他でもないあなた自身です。


他人の言葉を無批判に受け入れることは、

他人の世界で生きることと、ほとんど変わりません。


たとえそれが、親の言葉であっても。

常に、入ってくる言葉を吟味してください。


では、創作の話に戻りましょう。

あなたのキャラクターは、他人の言葉にどう向き合うでしょうか?


・貴族社会の枠に嵌められたキャラクター

 親の言葉や、階級の上に立つ人間の言葉は必ず受け入れる。

 一方で、下の者の言葉には一切耳を貸さない。


・頑固なキャラクター

 たとえ的を射た言葉であっても、

 誰の言葉にも耳を貸そうとしない。


・賢者タイプのキャラクター

 誰に対しても謙虚で、

 すべての言葉に一度は耳を通しつつ、

 それを受け入れるかどうかを、常に吟味し続ける。


他人の言葉をどう受け取るかという一点だけでも、人物像は驚くほど立体的になります。


キャラクターに『後悔』をさせたいときは、

まずこの点をしっかり踏まえたうえで、その人物らしい「後悔のしかた」を意識してみてください。


ここまでを整理してみます。


『後悔』とは、

マイナスな言葉を自ら意識に引き上げ、過去の映像を再生し続ける行為そのものです。


たとえば――

「仕事が忙しく、大切な人の臨終に立ち会えなかった」

その後悔に囚われ続け、仕事に身が入らなくなる。


これもまた、

可能世界と現実を比較し、「自分はなんてひどい人間なのか」という

マイナスの物語を脳内で反復した結果です。


結論は変わりません。

『後悔』は、百害あって一利なしです。


ただし、物語においては違います。


『後悔』とは、

どの言葉に縛られ、どの言葉を拒み、どの言葉を受け入れ、

その人物がどんな世界で生きているのかを、

読者に示すための装置なのです。



☑️ 後悔せずに生きていく方法/後悔しない人物を描く


★現実世界に良い評価を下す★


考え方ひとつで、

現実世界と可能世界の評価はいくらでも入れ替わります。

それなら、存在しなかった可能世界よりも、

いま確かに存在している現実世界にこそ、

良い評価を下すほうが、はるかに前向きで健全ではないでしょうか。


仮に、現実世界と可能世界を比べるとしても、

「いつの時点で比べるか」によって、評価は大きく変わります。

今なのか、十年後なのか、二十年後なのか——

その切り取り方ひとつで、意味は簡単に反転するのです。


——あのとき、あの子に告白しなければよかった。

惨めになることも、傷つくこともなかったのに。


現時点では、傷ついた心がそう叫んでいるのかもしれません。

ですが、十年後、二十年後の自分は、こう振り返る可能性もあります。


あのとき告白してうまくいかなかった。

けれど、あの経験があったからこそ、

相手の立場で物事を考えられるようになった。


——若い頃に、あの業界に飛び込んでおけばよかった。

歳を重ねた今となっては、夢のまた夢だ。


しかし逆に、飛び込んだ結果、

十年後、二十年後には業界全体が傾き、

リストラされている未来もあり得たでしょう。


ここで重要なのは、

どちらの未来も、私たちには知り得ないという事実です。


知ることのできない可能世界と現実世界を並べて比較しても、

そこから得られるものは何もありません。


——正直に言ってしまえば、

その比較自体に、意味はないのです。


無意味です。


★やりたいことをやり続ける★


現実に対して、わざわざ悪い評価を下してしまう人物像とは、

突き詰めれば——

自己評価が低く、自分への信頼度が低い人物です。


先ほども触れましたが、

他人の言葉を吟味せず、そのまま受け入れてしまうという行為は、

「他人の世界に生きる」ことにほかなりません。自分の判断を放棄し、他人の基準で生きること以上の、自分への裏切りがあるでしょうか。


だからこそ、

後悔しないための方法は、とてもシンプルです。


「自分がやりたいことを、やり続けること」


たとえ期待していた結果が得られなかったとしても、

「それでも、やりたいことはできた」

「当時の自分は、こちらを選びたかったのだから、これでいい」

そう納得できる選択になります。


私自身、小説を書くことも、

こうして「創作力、磨いていこうの会」で、少しでも作家の皆さんの力になれたらと発信していることも、

すべて心から楽しくてやりたいからやっていることです。


結果がどう転ぼうと、そこに『後悔』が入り込む余地はありません。


★未来の選択に時間をかける★


後悔するときに想定するのは、過去の可能性ですが、当然ながら、人は”未来”の可能世界も想像することもできます。


過去の可能世界を想像し、『後悔』するぐらいなら、未来の可能世界をあれこれ想像し、その中からどれを選択するのか、じっくりと吟味する方がよほど建設的です。


そのうえで、本気でベストと思えるものを選んでいけば、どんな結果になろうと、『後悔』はしないはずです。


☑️終わりに


『後悔』という装置は、

キャラクターのバックボーンとしては有効に機能します。


ですが、現実の世界においては、

《《百害あって一利なし》》です。


だからこそ——

『後悔』に縛られる人生ではなく、


自分の選択を自分で引き受け、

やりたいことをやり続けられるように。


お互い、楽しんでやっていきましょう!!



今回は以上になります。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


もしよろしければ、気づいたことや感じたことなど、どんな些細なことでも構いませんので、コメント欄に残していただけたら嬉しいです。いただいたコメントにはすべて目を通し、お返事します。


あなたの作家人生を全力で応援します。

共に楽しんでいきましょう。


「感情」の解剖図鑑 苫米地英人

※本文を考える際に参照したものです。興味のある方は、ぜひあわせてご覧ください。


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