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創作力、磨いていこうの会  作者: 茎乃ハル
感情を解剖する
1/10

その『感情』は、どこから来たのか

喜び、怒り、悲しみ、愛しさ、楽しさ……。

——人が何の「感情」も抱かずに、一日を過ごすことはあるのでしょうか。


意中の相手に話しかけられて、嬉しい。

あるいは誇らしく感じる人もいるでしょう。

反対に、無視されて悲しみを覚えたり……腹立たしさが込み上げたりすることもある。


日常のほんの一コマを切り取っただけでも、私たちは実にさまざまな感情を抱きながら生きています。


……ということは。


読者に「この人物は、確かにここに存在している」と違和感なく感じてもらうためには、

作家である私たちが感情の発露や構造を理解していることが欠かせません。

それは物語をより深く楽しんでもらうための土台だと言っても、決して大げさではないでしょう。


そして、ここがとても重要な点です。

すべての感情には「文脈」があります。


たとえば、先ほど挙げた

「意中の相手に話しかけられる」という出来事ひとつ取っても——

嬉しさを覚える人もいれば、誇らしさを感じる人もいる。

あるいは、それが最後の会話だと知っているからこそ、悲しみが先に立つ人もいるかもしれません。


同じ出来事に遭遇しても、人によって感情が異なるのはなぜでしょうか。


——それまでに積み重ねてきた経験。

——相手との関係性。

——その出来事が起きたタイミング。


こうした文脈の違いによって、感情はまったく別の顔を見せます。

だからこそ、文脈を理解せずに感情を描くことはできない のです。


ところが、


「このキャラクターは、いつも冷静沈着で何事にも動じないクールな男だ」


——そうラベリングしたまま、どの場面でも同じ振る舞いを機械的に挿入してしまうと、読者は物語を“外側”から読んでしまう恐れがあります。


読者

「なるほど、このキャラは冷静沈着なクール枠なんだな。OK!」


この瞬間、没入は止まります。

読者は鳥瞰図を眺めるような位置に下がり、

作家が招き入れたい世界に、なかなか踏み込んでくれなくなるのです。


それはまるで、YouTubeの映画解説だけを観て満足してしまう感覚に近いかもしれません。

(もっともそれでも読まれているのなら、あなたにそれ以上の魅力があるということです。さすがです!)



……ですが、やはり、もったいなくありませんか?


なぜ、このキャラクターは「冷静沈着であること」を選んだのでしょう。


そもそも感情は、意思とは無関係に生じるものです。

怒りや恐怖、悲しみは、勝手に湧き上がってきます。


それでも彼は、怒りを覚える出来事に直面したときでさえ、

感情を押し殺し、あえて冷静沈着に振る舞おうとするでしょう。


ここが作家冥利に尽きる、とびきり美味しい瞬間ですよね!


そのとき、彼の声はどうなるでしょうか?


出来事から目を逸らし、誰にも聞こえないほど小さな声で、

自分に言い聞かせるように呟いているかもしれません。


あるいは、周囲に悟られまいと緊張するあまり、

思わず声が上擦ってしまう可能性もある。


ほんの些細な違いです。

けれど、そうした小さな積み重ねが、キャラクターの「今」を形作っています。

そして後に過去を掘り下げたとき、その説得力はまるで違ってくる。


「……そうか。非人道的だと分かっていながら、それでも理性を選び続けてきたのか。その矛盾と葛藤を抱えながら、茨の道だと知っていても、こいつは進み続けてきたんだな」

「こいつが言うと、言葉の重みが違うな」

「——カッコいいな」


そう思ってもらえたなら、これ以上の喜びはありません。



感情には、必ず文脈があります。

そして文脈があって初めて、感情は意味を持つ。


これから感情を解剖し、深掘りしていきますが、

どうかこの一点だけは忘れないでください。


長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。

もしよろしければ、コメント欄に

気づいたことや感じたことなど、なんでも書いていってください。


この場が、作家として歩む道のどこかに、

ほんの0.1%でも糧になれば、これ以上の喜びはありません。


あなたの作家人生を全力で応援します。

共に楽しんでいきましょう。


次回<悲しみを解剖していきます>












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